鏡合わせの天罰ゲーム;壱
「なあ妹、信じられるか? この回、下有りメタでメメタァ!! なんだぜ?」
「ににに……に、日本語で、お、おけ、おけけ……」
※続きはWebで。
向かい合う玄関前、ぐるりと蒼風渦巻く紺碧に舞い上がる白亜、秋空の様に濃密な青へと白黒紙片は消えていく。
「なんで……、なんで七ヶ崎くんがその言葉を……!」
驚いたような、それでいて心を打たれた様子で四十九院乃々葉は言った。それもそうだ、本当の意味での初めまして、最初の時に彼女が望んだモノだから。我ながらに臭いとか、どう考えてもキザだとか思いつつ、ちょっとばかりの勇気を振り絞ってみたらこうなった。
どうしてこうなったんだろう、僕は時遅れて気恥ずかしさに囚われる。だが、これはこれで後戻りは出来ない。僕には前に進むしかできないのだから。いやまあ、こんな『貴方何を言っちゃってくれるんですか?』な状況で考える台詞でも無いのだけど。
僕は言う。切り口とか口実とか、掴みが良ければなんとかなるだろうと、そんな素人ナンパ師みたいな根拠の無い自信を元に。口説くつもりは無い、(※主に久遠が怖いから)それでも味方側には彼女を引き入れたかった。この先どうなるかも分からない、味方は多い方が良いと思ったからだ。彼女でさえも保険扱いしている自分、他人の気持ちや命を軽視し始めた自分を、僕は本気で殴りたかった。
「僕も君と同じだよ、僕も今日をループしている」
「や、やっぱり、そうだったのですか……」
「貴女は依然、僕にこうやって訊ねました。『ねえ、七ヶ崎くんは……バタフライエフェクトって信じますか?』と、だから僕も訊ねます。四十九院さんは、バタフライエフェクトを信じますか? と……」
次々に言葉を連鎖させる、彼女が語り掛けて来た様に、同じ様に訴えかけていく。揺らぐここのシンドローム、鳴り止まない鼓動が緊迫を彩る。
「貴女は、今は6週目なんですよね? それを僕は最初のループで知りました、矛盾の理由は次に出逢い、貴女と話して紐解きましたよ。“ループは繰り返している、僕達は最後まで生き残らなければ記憶を次周に引き継げないで今朝に戻る”と、僕と四十九院さんとで導いた結論でした。お願いします、力を貸してくれませんか?」
「何を、すれば良いのですか? どうすれば、どうすれば助かるのですか!!?」
僕の腕を振り払った彼女は、僕の両肩を鷲掴みにして問い詰めて来る。そりゃあ、5回も死を味わえば恐怖に狂いたくもなるのだろうか。僕だって、このまま殺され続けるのは嫌だし、あんな悲しく虚しい瞬間を2度とは味わいたく無いと思った。
だから僕は答える、
「僕と一緒に来て欲しい、1人よりはさ……仲間が多い方が良いだろう?」
「それで助かると言えるのですか? それを誰が保障すると言うのですか?」
「俺達がだよ」
と、友人Aが乃々葉の背後から躍り出る。何故こうも、コイツは美味しい所を持っていくのか。俺が眉に皺を寄せると、そちらに振り向いていた四十九院乃々葉は言った。
「貴方は……!!」
「そうだ。そいつの後部座席の有名人、友人Aって呼ばれているぜ。俺からすれば初めまして、よろしくな四十九院!」
「本当に初めまして、四十九院乃々葉と言います。よろしくお願いしますね……?」
胸を張って自己紹介する友人A。後部座席とか誤解招く表現は自重して欲しい、心の底から殴りたくなる。もう既に、握り拳は震えている訳で。
「おう! 惚れても構わないんだぜ、あっはっはっは!」
答えて高笑いする友人A、そんな彼を他所に四十九院乃々葉は振り向いて僕へと耳打ちをする。
『すみません七ヶ崎くん、彼につきましての補足をお願いします』
『覚えていないんですか、5回もループをしているのに……』
まさかのまさかだ、『貴方は……!!』だなんてベタな台詞を言うからてっきり面識が有るのかとばかり考えてしまった。
『私、アイスクリームに載ってる葉がパセリでも、例えセロリだとしても寄せますからね!』
『ちょ……、あれはパセリでもセロリでもなくミントだからね!? パセリはまだともかくセロリとか、最早殆どが葉っぱだからな!?』
色々と可笑しいがつまり、最初から気にしないで放り捨てる訳か。何気に酷いなあ、四十九院乃々葉さん。
取り敢えず僕は、そんな彼女に耳打ちで解説をする。さっきまでの空気は何処に行ったのやら、本当に不思議である。
『空気を読まない腐れ縁のド変態馬お鹿野郎』
うむ、バッチリだ。四十九院乃々葉は頷く。
『分かりました、警戒します』
そして友人Aを四十九院乃々葉のブラックリストに貶めた後、僕は玄関前から少し身体をずらした。丁度そこに天津風姉妹が居る筈なのだが、四十九院乃々葉にも彼女達にもアクションは無い。
居ないのだろうか、そう思いながら振り向いた時、真上の方から高らかな笑い声が響いた。
「はーはっはっは!! 天津風未来、此処に参上!!」
「ね、ねえお姉ちゃん? わわ私が、たたた高いの苦手だって知ってるよよね? ねえ、ね?」
真っ赤なマフラーを巻いた姉、天津風未来と、そう言えば高所恐怖症だった久遠とか屋上に出現する。本当に派手好きだな未来さん、僕は内心に嘆息する。
「行くぞ妹!!」
「ちちょちょちょ、ちょっと!? ななな何このロープうえ? あ、あうああああああああ――っ!!」
「ソロモンよ、私は帰って来たあああああああ――っ!!」
案の定飛び降りる、すると天高く舞い上がった2人、その内の未来さんの影から大量の水飛沫が飛び散り落ちる。
「いいいやあああああああ!!」
久遠の断末魔が唐突に止み、次第に影が大きくなり、1つに纏まって着地する。どんな運動神経か、それは考えた所で無駄だろう。何せ彼女は真に常識はずれだから、そう僕は疑問を納めた。
久遠をどうにか両手で抱き上げ、所謂お姫様抱っこの状態で未来さんは会釈した。白い髪が微かに揺れ、気絶している久遠の頬を擽る。お気の毒に、そうとしか言えなかった。
「どうも、天津風未来こと『歩く残念』です」
「はぁ、四十九院乃々葉です、此方こそ丁寧にと言いますかド派手にどうも」
「姉さん、名前と通称逆ですよ逆!!」
「だまらっしゃい!!」
いつでも、この2人は変わらない気がする。すぐ脇に着地した未来さんは、僕に久遠を預けて言った。
「娘をよろしくお願いします」
「……もういいや」
お前が姉だろとか、娘を送り出す父親かとか、キリがないので僕は言葉を飲み下す。そして、未来さんは背後の地面に突き刺さる巨大な物を親指で指差して言った。
「未来ガジェット拾壱号機《俺のチョコ製バットがホールインワン君11号》だ」
「まんま下ネタじゃ無いですか!!」
流石にこればっかりは反応してしまった、ネーミングにあからさまな悪意を感じる。野球かゴルフかハッキリしろとか、太陽神ちっくなアレじゃないのかとか、ネーミングがまさしく男のアレだとか、11号が2回入っているだとか、最早下ネタじゃないかとか、結局下ネタじゃないかとか、やっぱり下ネタじゃないかとか!!
そんな僕に、何食わぬ顔、ケロッとした表情で未来さんは言った。つい口から出たツッコミに続いて友人Aらが盛り上がり、挙げ句の果てには四十九院乃々葉が耳打ちをして来た。
「唯の魔改造ペットボトルロケットじゃないか、由来はチョコットだろうし、アロとかアコとかに準えて何がいけないんだ?」
「言いおった、言いおったよこの人!!」
「さすが姉さん! おれたちにできない事を平然とやってのけるッ」
「そこにシビれる! あこがれるゥ!」
『それで、七ヶ崎くん、どういう意味が有るのです? 私、気になります!!』
本日2回目、未来さんが久遠みたいに跳ねた気がするがスルーする。別に駄洒落ではないし、狙ってもいない。
どう考えても狙っているのは商標ギリギリのそそり立つオンバシラのネーミングだ、確信犯である。幸い形状だけは問題ないがピンク塗装は止めてくれ、それも曖昧なベージュっぽいピンクなんか特に。しかも、燃料の水が次第に白くなるというオマケつき。
というか、四十九院さんは四十九院さんで何故僕に訊ねた? ドッキリのつもりがまさか自分がドッキリされるだなんて、僕は露ほども考えていなかったよホント。
「石灰水使っちゃった、てへ♪」
「どんな演出ですか、馬鹿ですか貴方は!!」
「お馬ぁー鹿ぁーと天才は、紙一重……って、言うじゃなーい?」
「ネタが古いです。後彼はダッキング何てしませんから!! エアギターで跳ねないで下さい、騒がしいですから!!」
「残ッ念!! 個人的に神野球漫画はドラース、ジャン! 満月大根切りぃっ!!」
「やーめーてー、声ならともかく文字媒体で波陽区ネタは止めてくださいねー?」
後書きを記す前に言っておくッ!
おれは今こやつの話をほんのちょぴりだが執筆した、い……いや……執筆したというよりは平謝りをしに来たのだが……。
あ……ありのまま今起こった事を話すぜ!
『僕が奴の手前でシリアスしてたと思ったらいつの間にか漫才をしていた』
な……何を言ってるのかわからねーと思うが、おれも何をしでかしたのかわからなかった……。
話がどうにかなりそうだった……パロディだとか超リスペクトだとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……。
◆◇◆◇◆
……なんすか、コレ。
下ネタどころかメタ発言満載じゃないですか、のうち未来さんなんかが、
「やたら繰り返しが大好物な作者とか、学園恋愛物にSFとかバトル展開を持ち込む作者とか、挙げ句の果てにはメタ発言や下ネタに頼る作者って……私はどうかと思うのよ、科学者や哲学者以前に作家として」
「作家? 話書いた事有るの?」
「まあ、そのディスクに黒歴史が……恥ずかしいから見るなよ?」
「へえ、くる姉が恥ずかしがる内容ねえ?」
※ディスクはQドライブに挿入されました。ずらりと並ぶ大体がergで、赤面した久遠は咳払いでディスクQ、ファイル名『禁即事項』を開いちゃいました。
「あ……」
「なになに……『境界線上のホリゾン』、『食玩のSANA』とか全部元ネタまんまパクっちゃった口なの?」
「いや、違っ! タイトルやら内容が被っただけで、発表が先を越され……!! 特に食玩なんかは自信作、だった! ととと、当時は!!」
「ふぅん……ねえ何この食シナに武装姫とかふぃぎゅメイトとか合わせた奴」
「よ、読むなああああああ!!?」
「ええと、『フィギュア、人を型どりしそれには時を経て魂が宿った。後に人はそれを輩と呼び、友人として、或いはパートナーとし「あああああああああああああああああああああああああああ!! 昔の私を殺したいいいいいっ、死ね!! 昔の私氏ねじゃなくて死ねええええええ!! あああああ、はああああああ、うなああああああッ!!」
なんて話が生まれそうですね
遅れたせいか、後書き(?)も長くなりそうです。ですがネタ切れが怖いので今宵はここまで、次回にまたお逢いしましょう。
おやすみなさい、いい夢を。貴方に優しき光、暖かな朝が訪れます事を祈ります……なんて。
P.S.投稿遅れてスイマセンッシタアアアアアアアアアアアア!! 睡魔ってさ、ラスボスだと思うの私。いつも後ろの大魔王、それが睡魔。




