肩を並べて歩き出そうか。
「貴女達、朝から一体……何をしてるの?」
屈託の無い青空の下、私の目前には額を寄せ合う2人の男女が居た。まるで夢をそのまま形にした光景、それに私は再び訊ねた。
「あはは……」
これは朝から珈琲が不味い。夢の中でとはいえ私は事情を分かっているのだから、ここまで怒る必要も無いのだろうに。でも私は、指先から力を抜けなかった。
「「あ……」」
2人が気まずそうに此方を見詰める。一喜憂は呆然としながらも少女から距離を取るが、対して少女は追い縋る様にバランスを崩した。抜け目無い子だ、油断は出来ないと私はふと思考した。
「お……おはよう久遠、いつからそこに居たんだ?」
そう、震えた声で一喜憂は訊ねてくるのだ。夢と同じ、ぎこちない笑顔に私は冷笑を返上する。
「……はんっ」
「!?」
すると、どうした事かこれまた夢通りに畏縮する一喜憂。後の展開はともかく、今が楽しく思えてきたので悪戯をしようか。
この時、私の頭には2つの選択肢が存在していた。夢が後に事実になるのなら、私は前者を断りたく思うんだけどね。
1つめ、このまま夢通りに会話を進めてみる事。唯、既に朝の会話が違うのよね。だから不確定要素はまだ有る筈、これはこれで興味をそそる。
2つめ、風の吹くまま気の向くままに行動する。最早言うまでも無く、こちらが私の選ぶ結論。私が夢通りに唇を奪われてしまうだなんて、それこそ気が狂ってしまいそうだからだ。
だから私は、一喜憂へとわざとらしい微笑みを浮かべつつ答えた。それはもう、待ち合わせに遅れた彼女の様に。
「ごめんね、今来たトコ。遅れちゃった」
「いや、別に待ち合わせしてないんだけどね!?」
私の反応に目を丸くして一喜憂は言った、彼には絶対ツッコミの素質があると思うの。
そんな、少女を前に体裁を保とうとする一喜憂に、私はさらに追撃をかける。慌てふためく彼は可愛いのだ。
「いーのいーの、私と一喜憂の仲じゃない?」
「幼馴染みに、何か誤解を抱いていないか久遠?」
「お二人共、名前で呼び合うとはどんな関係なのですか……?」
遂には少女も会話に加わる。夢では妻だとか言っていたけどそう易々と一喜憂を譲りたくは無い、元より譲る気も無いのだけれど。
「私は天津風久遠、一喜憂の幼馴染みであり“婚約者”よ!」
「お前、今あっさりと聞き捨てなら無い事を言ってくれたよな!!?」
「良いじゃない、昔に皆でごっこ遊びしたでしょ? 貴方が最後まで照れっぱなしだから、私が逆エスコートしてあげたじゃない」
「嘘だッ!!」
途端に激昂する一喜憂、余程恥ずかしかったのか顔は火が出そうな赤達磨みたいに赤みが差していた。
その時、私の背後から聞き慣れた姉の声が響いた。いや、訂正しよう。聞き慣れた姉の“声真似”が響いた。
「『あはははははははははははははは』、『笑って?』」
「いや姉ちゃんのそれ怖いからマジ止めて」
まあこうなるとは思ったが、取り敢えず私の恋愛事情を把握していたくる姉は隠れてくれていた筈だった。だがやはり、餌ならぬネタには食いついてしまうらしい。
「あれ……未来さん?」
一喜憂がキョトンとした表情を浮かべた、対してくる姉は笑みを浮かべた。こんなに姉ちゃん、人懐っこい笑い方が出来たんだっけ。私はふと、首を傾げてしまった。
「おや、少年とは面識が有ったか? まあいい。初めまして、久遠の姉の未来だ。妹共々よろしく頼む」
「七ヶ崎一喜憂です、改めましてよろしくお願いします」
「あ、申し遅れましたが如月葉月と申します。久遠さん、私は負けませんからね?」
「ええ、望むところね」
「「「お前ら……」」」
私達に対して3人の呆れる声が響いた。あれ、3人? 振り返ると、そこにはやはり奴、友人Aが起立していたのだった。
「「「「え、居たの?」」」」
「……ああ」
「「「「いつから?」」」」
「『どうですか、似合いますか一喜憂さん?』の辺りからだっつーの!!」
「「「「嘘だッ!!」」」」
「もう俺、泣いて良いかな……?」
さてこんばんは、最早遅刻投稿が板についた作者です。お気に入りが減って寂しかったです凄く、軽く泣きました、はい。
今回はやたらとひぐしパロちゃってますが、まあ別にパロディが容赦無いのはいつもの事です。お許しください、お気に入りが減った事への作者の叫びだとでも思ってください。
いやはや、なんだかんだで35部近くまで来ちゃいましたね。このままだと50や70行っても可笑しくないです、むしろ終わらない気がしますね。
なので、是非とも末永くお付き合いください! ではまた明日にでも逢いましょう、作者は読者様が大好きです!!
お休みなさい、いい夢を!!
P.S.そんな事よりおうどんげ食べたい。




