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裸天使にバスタオル、僕には生きる意味を下さい。  作者: にゃんと鳴く狐っ娘
Loop.2【永久に続けとキミは】
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鎖された未来と天罰ゲーム;餐

「くっ……、離せ、離しなさいよ!!」


 大きくクレーターの様に窪んだ地面、その直径5メートルにも及ぶ大口の中、翼を生やした少女2人が縺れ合う様に取っ組みあいをしていた。2種の奇っ怪な羽がバサバサと、音こそ無いが激しく揺れ動き止まらない。


「やめろ、やめっ……!!」


 藻掻く七ヶ崎乃々葉の指先が葉月の腕へと食い込み、赤い血が音も無く噴き出した。それでも葉月はマウントポジションを取り続け、左手で七ヶ崎乃々葉の首を鷲掴みにした。ミシリと軋む音、苦悶の声が血溜まりつつある穴底に響いた。


 葉月が、赤く血走り紫を帯びた瞳で語り出す。それは殺意の爆発、熱く復讐に滾る血潮、全身充たす情念が右手へと、総ての憤怒が黒刃の短剣へと集束していく。


「さあ、最後です。終わりにしましょう……?」


 振り被る葉月、キラリと暗く光る刃は漆黒。艶やかな夜色の髪は血濡れ、その白い肌は鮮やかな紅を纏い紅白のコントラストが鮮やかに映える。


 膝元を濡らす血がピチャリと跳ね、その熱帯し頬に赤牡丹を花開かせた。ボタンは首が落ちる音、七ヶ崎乃々葉の頭には警鐘が鳴り響いて止まない。自分も命を散らされる、そんな恐怖から反射的に叫んだ。


「バッ……《バラクタス》!!」


 針鼠の小さな抵抗、窮鼠が猫を噛んだそれは、少女の胸へと突き刺さる。深く、パックリ縦に突き刺さる楔、少女の咽ぶ声が響いた。



◆◇◆◇◆



 男は言う、あたかもそれが心理である様に。嘯く様に絵空事を呟く様、その何処か遠くを見詰めた瞳に、久遠はカルデラで泣いていた彼の姿を見た気がした。何故だろう、目尻が彼に似ているのだ。その、何処か卑屈な眼差しも。


「無いとは言えないんだよ、過去に戻れる以上はね? ラプラスは原子総ての動きを完全に把握すれば未来を予知できるとさえ言ったが、原子自体だって不確定性原理――まあ隠れた変数理論を僕は否定こそしないが――それによる不規則性、いわゆる数多の発展性や可能性を保持しているんだよ。それにリープは君も同じだ、天津風久遠、君だって破綻している」


 そう言いながらも彼は横目で久遠を一瞥する、その強か且つ矛盾した憂いを帯びた瞳。久遠は寒気を覚えると同時に、逃げる様に振り向いて背後に倒れた少年を確認する。まるで、そこにいる一喜憂が遠くに行ってしまいそうな予感がしてきて。だが、久遠は男に腕を掴まれてしまった。そう、袖ではなく腕自体を。


「天津風久遠、君は改造人種の未来人アバターエヴァンの末裔、此処に居てはいけない可能性具有者だった。好きだよ、好きだと言ってくれて嬉しかったよ……? だから、だから僕は逢いに来たんだ……君にありがとうと言いたくて、君ともう一度やり直したくて」


「そ、そんな……意味分からないよ、訳分からないわよ!? ねぇ……離して」


 久遠は訳が分からないままに答えた。男の瞳に恐怖を感じた、自分が何処か遠くに攫われてしまいそうな感覚、このままその闇に呑まれそうな感覚に全身が包まれてしまったのだ。動けなかった、動こうにも身体は震えるだけ、恐怖に打ち据えられた様に恐れ戦くだけだった。


 男は続ける、まるでロミオに縋るジュリエットの様だと久遠は思った。女々しいと、執着どころじゃない執念深さには最早狂気さえ感じる。悪魔の様な少女とは全く別、あれが奪う狂気ならこちらは求め過ぎる狂気だと思った。男は久遠を無理矢理に引寄せて言った、引寄せて、というよりは抱き寄せての方が正しいが。


「嫌だ……もう、失いたくは無い、君を」


 目深に被った薄い黄緑の帽子の奥、其処にチラつく泪粒。振り解こうともがく久遠の耳元に囁く、蕩ける様な響きはしかし冷たく、まるで冷めた紅茶の様に味気ない物だった。


「久遠、僕は君を……っ!」


「嫌っ!! 来ないで、あんたなんて……無理矢理な男なんて大ッ嫌い!! やめてよ、やめなさいよ、離しなさいよ……離せ、このド変態っ!!」


 その絞り出した声、薄ら寒いその空虚な本質がひしひしと久遠には感じられた。久遠は必死にもがいて足掻くが、流石に大の大人に捕縛され、二の腕から腕を囲い込む様に抑えられてはどうにも力が入らないのだ。怖い、恐怖に瞳を涙が伝った。


 男は言った、そして久遠に唇を重ねて。


「僕は、ずっと気付けなかったんだよ久遠。俺も、大好きだよ……久遠っ!!」


「っ……、つぅ……い、いや……嫌ああああああああああああああ――っ!!」


 立ちくらみ、急に揺らいだ意識と頭痛の中で久遠は聞いた。真っ黒く反転する、端から端へと裏返されてゆくカード群の様に塗り替えられて行く。初めてのキスを奪われ、無理矢理に好きだと言われて、嫌いな男に抱き締められて、好きな人への贈り物全部を奪われた無念に心が狂いそうになる。


「うあ……うあ、うあああああああああああっ!!」


 逆巻く業火、それですらもこの汚穢は拭えないと知っている、それでも久遠は慟哭して咽び、泣き叫びながら瞳孔を見開く。殺す、と。久遠の中に男への殺意、どうしようもなく沸々と煮えたぎる怒りが込み上げてきたのだ。そうだ、殺してしまおう。久遠はそう決めた、そして無意識の内に辺りを巻き込んでいた。少年が、愛しき一喜憂が横たわるとも知らずに、少女久遠は穢れ無き唇を奪われて復讐に燃えてしまった。


「殺す……私は、貴方を……貴方をっ……焼き殺す!!」



◆◇◆◇◆



「さようなら、もう1人の七ヶ崎……!!」


 2度刺した、総て彼女は指を捨てて防いだ。更に5度刺したら、やっと生体装甲の修復が止んだ。これで七ヶ崎乃々葉の首筋は真に顕になった。返り血が怖かった、葉月は自分の過去を思い出してしまった、自分の返り血で真っ赤に染まった醜い影を。だから葉月は首筋を狙った、懇親の一撃を打つべく仰け反りつつ、耳を澄まして気を清めた。葉月はビロードの音色で告げる、最後に見送る少しの言葉。


「死して猶、その罪に溺れてください。さようなら……、《ルナシェルコール》!!」


 そして、少女――未来の乙女が涙を零す――葉月は言った。


『『『さよなら、そしてまた何処かで……!!』』』

 そして……唐突にも、物語は再生をする。


 どうも、作者です。連続で遅れて申し訳ないです、体調不良です、風邪気味でした、眠すぎでした。とまあ言い訳はともかく……


「マジ、すいませんでしたあぁああああああああああ!!」


 と、まあどこぞの作者張りに下座って見ます。あの作者、私は好きです。基本的には久遠と細音、澪辺りが……というか全員好きです、あの作品の世界になら飛び込んでも良いです。土下座マスター緋……げふんげふん様を作者は、心のそこより尊敬しています! だから猫と天使と(略)でもいいから続刊を……げふん。


 作者は猫が好きです。しかし懐かれません、にゃ。


 作者は天使が好きです、最初に生まれた非公開作品はアパート経営の主人公の元に天使が来ると言う物でした。と、言うわけでオマケ掲載。コピペなので拙い文章許してね?



◆◇◆◇◆



「はじめまして、泊めてくれ!!」

「全っ力で断るっ!!」


「え……いや、ちょっと待って」

「待ってやらない事もない……だが断るっ!!」


 俺の言葉にしどろもどろする背高の少女。そのキョロキョロする瞳は瑠璃色で、深いマリンブルーはまるで宝石のように美しい。くねくねさせている肢体は何気に色っぽい。顔の作りも整っているし、黄金に煌く髪も艶やか、どうやら外国人らしいが随分と日本語が上手い。

 そんな少女と玄関先で向かい合って居る訳だが、第一声が『泊めてくれ!!』だなんて聞いた事が無い。色々と厚かましいと言うか大胆と言うか、ぶっ飛んだ奴だな……と、俺は一瞥と一喝をくれてやる。


「お前、初対面で何言ってるんだ!?」

「大丈夫、ヨ●スケさんと同種だからっ!」

「お前、一体どこに喧嘩売り込むつもりだよ……いいから帰れ、とっとと帰れ」


 えらく饒舌だ。そしてネタが古い。そして色々危ない。


「こんな可憐な少女を夜の街に放り出すのっ!?」

「あー、カワイソウダネ、カワイソウ」

「同情するなら泊めてくれっ!!」


 どんなにきつく言っても怯まない。むしろ勢いづいているように見える。やはりネタが古い。

 だが、俺は屈しない。俺の家はアパートだ、ボロボロだが賃貸住宅だ。断じてホテルでもモーテルでもないし、人を泊める余裕なんて家賃収入皆無なアパート管理人にある訳がない。


「旅館ならお隣です」

「私の名前はサクアエル、無一文の天使ですっ☆」

「あっそ。満足したか? よし帰れ」


 俺が拳を握り締めつつ答えると、少女は頭を掻いて無邪気に笑う。正直もうぶん殴りたい、親父の鉄則が無ければ殴っていたとは思う。むしろ殴らせろ、殴らせてくださいお願いします。

 目を細くして、ケタケタと笑う少女がまた口を開き、続けざまに喋りだす。見た目は可愛いのに中身が残念な子のようだ。


「そうだよね~、可笑しいよね~……だが断る!!」

「貴様天丼は自重しろ!!」 ※天丼……同じネタは三度まで。


「どぅーえ~っ」

「なんだその気の抜けたリアクション」


 なんかダラーンと少女は萎れ、気だるそうな声を上げる。



 そして、一身上の都合によりここで終わる……



◆◇◆◇◆


 さて、いずれこれもリメイクでしょうか。


 さて次回、激動の3周目突入!! そしてループはクアドラへ……? 咽ぶ鳴き声、握り締める虚空の残り香、消えない罪と巻き戻る時間と、少女は取り残されて悲しみに暮れる。めくるめく廻る輪廻、その抜けられないループの中で、金狐の少女は噎び泣くのか……次回『穢れた身体と私の天使』、乞うご期待!


P.S.そろそろ寝させて……くれる、かな?

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