希望の淵からコンニチハ。零
グロ注意?
「随分と待たせてくれた物よね。こんなにも退屈過ぎて5〜6人も殺しちゃったじゃないの……ねえ、七ヶ崎クン?」
死体の海で振り返った少女、七ヶ崎乃々葉は狂気染みた笑みを浮かべて言った。いつもながらに、いやいつも以上に嫌悪感が身体中を駆け摺り廻った。
猶、無惨にも血を滴らせつつも起立している制服姿は計8つ。七ヶ崎乃々葉は黒髪ごと真っ赤に染まり、隣の白髪の少女も長髪の裾である腰辺りまでを鮮血の赤に染めていた。
他には依然校内で見かけた女子生徒達が居たのだが、死体も彼女等の友達だった筈だ。今は語るも無惨な姿、例えばぶつ切りだったり胴体ミンチだったり、中には顔面と下腹部を丸いケーキ型でぽっくりとくり貫かれたような姿を晒す物も存在した。込み上げる吐き気を僕達は堪え、どうにか目線を反らして対応したのだ。
虚ろな瞳で佇む姿、七ヶ崎乃々葉に光の刃を添えられたままの乙女は唯、まるで納入直後のマネキンみたいに立ち尽くすだけだった。そんな姿に久遠は叫んだ。
「くる姉っ……!!」
そして無謀にも駆け寄ろうとする久遠、息も絶え絶えな彼女はあっさりと四十九院乃々葉に袖を掴まれて止められた。久遠は四十九院乃々葉を怒鳴り付ける。
「離してよ!! お願い、離しなさいよっ!!」
「駄目ですっ……!!」
前のめりのまま亜麻色の長髪を垂らし、振り払おうとする久遠を四十九院は窘める。彼女の内心も穏やかでは無い筈なのに、その対応はツンと冷たくも冷静且つ適切だった。
「久遠さん……貴女が無闇に駆け寄ったら、それこそ未来さんが危ないじゃないですか!! 何しろ、久遠さんまで斬られてしまえば元も子も無いでしょうに!」
「私は、私はそれでも良いのっ!! 離して、離してよ!! 嫌あ――――っ!!」
そんな様子を見ながら、七ヶ崎乃々葉は下卑た笑みを浮かべて煽る様に言った。溢れ出る虫唾を、どうにか堪えて僕も対話に臨んだ。
「やっと感動の再会よね、ねえ一喜憂クン? 素敵だとは思わないかしら、ねえ……?」
袖も甲も手の平も構わずに濡らしていた七ヶ崎乃々葉は、中指と人差し指の間を妖艶に舐めながらも問い掛けてきたのだ。その問いに僕はあっさりと答える、
「残念ながらこんな形は望んでいないさ。趣味が悪いのは今更だが、こんなに鼻に付くのは初めてだよ……《ルナシェルコール》?」
そうだ、激情しても彼女を喜ばせるだけだからと、どうにか自分を落ち着かせた僕は続けた。握る手の平には痛みが滲んだ。
「きゃはは!! 傑作よね死体って、儚い物が敢え無く散るのよ素敵じゃないの?」
そう七ヶ崎が言い終えた瞬間だった、久遠と四十九院の声が響いた。未だに未来さんは棒立ちである。
「くる姉に何をしたの!!?」
「波多野を何処にやったのですか!?」
するとその声に七ヶ崎乃々葉は答える、にやりと醜い笑みを浮かべて彼女は言った。続く陰湿な笑い声に全身が竦み、鳥肌が表皮を覆った。
「けひっ……さあねえ? 始めようじゃあ無いですか、また宴をカーニバルを!! あはははは、きゃはははは!! うきゃきゃ、あひゃ、あひゃひゃひゃひゃっ!! あーはっはっは!!」
カニバリズムさながらに、落ちてた指を齧って七ヶ崎はそう高らかに笑った。
また――ゲームは幕を開くのか――僕達はひたすら立ち尽くした。
人で一番美味しいのは頭皮のお肉らしいです。なんでも柔らかくて一番クセが無いのだとか、実際は全体的に固くて筋っぽいらしいです。要は食用には向きませんね、食べたくもないですが。
はい、こんばんは作者です。いきなりのエグい回、久々に登場の七ヶ崎さんでした。今回未来さんが今ループ2度目ですが、何が有ったかは後述しましょう本編で。
七ヶ崎乃々葉さんは欲望の塊です。生への執着や殺しの快楽、他者を乏しめる事だけで満たされる余りにも歪且つ余りにも生々しい人間の負の権化な訳です。
なにかしら共感染みた感覚を読者様に与えられたら、少し位は上達できたのでしょうか。まだ無理ですね、死体なんかの芸術的な比喩は。まあ、やりすぎにならないようには気を付けましょう。
一線は知らない間に越えている物です、ではまた明日にでも。おやすみなさい。
P.S.受かりそう、IT。




