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裸天使にバスタオル、僕には生きる意味を下さい。  作者: にゃんと鳴く狐っ娘
Loop.2【永久に続けとキミは】
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三角形で奏でる音律:破

「い、一喜憂……やっぱり、はっ……あんた、此処に居たのねっ!」


 息を切らしながら背後より駆けてきたのは久遠だった、ふさふさの尾っぽをところ構わずにフリフリしながらやって来たのだ。


「どうしたんだ……!?」


「お姉ちゃんがね、くる姉が人質に取られちゃったの! 一喜憂を呼べって……旧校舎理科室で待ってるって!!」


 その久遠の口から放たれた事実に、僕は驚きと戦慄きを隠せなかった。側に居た四十九院も顔を伏せて俯く、肩を震わせながら目に溜めていた涙を床に溢していた。それを他所に久遠は腕を掴んだ、そして急かす様に言って駆け出そうとする。


「用務員さんも人質に取られた、馬鹿と葉月はお出掛け中だし……話の最中に悪いけど、とにかく来て!!」


「波多野が……久遠さん、本当ですか!!?」


 久遠の口から用務員さんの名前が出た瞬間、瞬きする間すら無く四十九院は顔を上げた。


 そして唐突にも、四十九院乃々葉は久遠へと関が切れた様に問い詰め始めた。肩を掴み揺すられて、戸惑いながらも久遠は言った。


「あ、貴女は……?」


「私は四十九院乃々葉と申します、本来ならば転校生であり貴女も御存知でしょう波多野を従者として雇用している者です!」


 尋常じゃなく焦っているらしい事は目に見えて明らかだった、何しろ普段の冷静さが微塵と無かったからだ。用務員さんの雇用主、それ以上に深い関係が有るように思えた。


「四十九院……貴女、《セヴンスクロス》ん所のお嬢様じゃ無いの!? 何でこんな片田舎の学校に!?」


 聞き覚えが有った。株式会社セヴンスクロスは昔に紡績分野から発展して今や衣料品部門でのブランド展開は勿論の事、日本規模での飲食チェーン店経営や紡績機器や化学繊維の分野から様々な重工業や化学工業に手を出している企業だった筈。そこのお嬢様だという事はかなり良い所のお嬢様だ、気付いた僕も久遠よろしく仰天としてしまった。


 なるほど、7と7を掛けて四十九だから7×7=49で《セヴンスクロス》なのか。布地の英語訳とも掛かっていたりして、紡績企業らしいなとも僕は思った。確か制服のメーカーもそこだった気がする。


「走りながらでも、良いですか……!?」


「別に構わないわ。勿論、付いてこれるのならだけど。ねえ一喜憂、左手貸して?」


「あ、ああ……ってオイ久遠!?」


 グッと手のひらを握られる、しかし力加減は強すぎない程度だ。暖かい手のひら、優しい温度が僕の左手を掴んで離さなくなった。緊張する僕を他所に、久遠は四十九院乃々葉に言った。


「さて……どうして名前を知っているのかは気になるけれど、私の名前は天津風久遠よ、よろしく四十九院さん。早速だけど右手を貸して頂けませんか?」


「ええ、構いませんよ。むしろ先導をよろしくお願いします、久遠さん!」


「いいですとも!」


狐モードの久遠は、左右それぞれの手で四十九院と僕を掴んだ。本気で走る気らしい、足が多少遅くとも足早な人に手を引かれていればマシになる物だ。


 恐らくは久遠の事だ、最悪僕達を引き擦ってでも減速しないであろう。その眼を見れば一目瞭然だ、疾うに僕達を見ていない。


「2人とも、離さないでね?」


「ああ、オーケーだ」


「行くよ!!」


◆◇◆◇◆


「残念でしたね、こんな形で出逢うだなんて」


「まあ、貴女1人を足止めするのが任務だから。些細な事なんてこの際良いのよ」


 青色の空の下、葉月の目の前には青い髪の女子が立ち塞がっていた。海沿いの帰り道、入り組んだ海岸線で彼女を見付けたよ途端に葉月は自転車に跨がる友人Aを先に行かせた。今頃予定を繰り上げてカルデラではなく学校へと向かっているのだろう。


「一応初めましてかしら、この身体では西園寺百合香と名乗っているわ。貴女と同じく《アバターエヴァン》、まあ寄生型なんだけどもね?」


「私は如月葉月、多分今は貴女の敵よね? 詳細機種名パラシェルマキナトゥードさん、因みに私は《パオウリアスマテラス》だなんてネーミングだったりしますよ?」


「ごめん、覚える自信が無いわ私。長ったらしいのは嫌いだし、何しろ貴女は敵だしね……『殺す虫ケラをサナダ虫は数えるの?』だなんて言われた日には解体されちゃうのよね、だから私は負けられないのよ」


 折角の自己紹介、お互い呑気なのかおしとやかなのかそれとも唯単に負けず嫌いなだけなのか平静を装って会話する。私達は面識も無いまま各所へと飛ばされた為に、お互いに知らない事も多かったりするのだ。


「ユーカリさんはサナダ虫なのですか?」


「百合香だからな! コアラの餌じゃないだから、馬鹿にしないで貰えないかしら!! ルナといい貴女といい、どうしてボクを馬鹿にするのよ!! まあ、そうよねだって青髪だものね!!」


「んー……いや、馬鹿だからじゃないんですか? 常識的に考えて」


「しれっと髪搔き揚げながら言ってくれちゃって生意気ね。殺す、後で殺すわ……! とにかくボクは私は七ヶ崎を殺さなきゃ殺されちゃうんだから、少なくとも手っ取り早く終わらせるべきよね? 何があったかは知らないけれども、一喜憂側に寝返った貴女も結局は敵なのよね!! ああもう潮風がまどろっこしい、なんでこんなに風が強いのよ!!」


 なんか、この子が居るとわざわざ解説をする必要が無い気がする。


「なにか言いなさいよ! 考え込んでいる間なんて有ると思っているのかしら!? なんというかね、貴方と話していると調子が狂うわ……次から次へと揚げ足ばっかり取ってやかましいわね……」


「どの口が言うのですかね? と、言いますか随分とおしゃべりですね?」


「何、そんなドス黒い剣なんか出しちゃってやる気満々な訳? そのしたり顔、もう既に勝った気満々よね? まあ確かに私は寄生型、防御力自体は宿主依存で皆無な訳だけど……? 案外ね、この子の事気に入ってるのよね。幸い此処は海辺だし、いっその事ここで貴女を片付けてしまいたいのが本心なんだけどね……貴女は寝返る気は無いの?」


「微塵もありません、露ほども」


「うわぁー、はっきり言ってくれちゃってるよこの人、何それ挑発? まあ良いんだけどね、良いんだけどね!? 貴女くらい一捻りにも二捻りにもしてあげるんだから!! 首洗って待ってなさいよ!! 私が貴女をうーうー言わせてあげるんだから!!」


「……ボクか私かはっきりしたら如何です?」


「五月蝿い!! 行くよ、集え水流、我が御許にて虚龍を成さん……聖凱亜邪神龍レヴィノトグラマタ!!」


 海の水が柱となって巻き上がった、空気中の水蒸気が集結して行き乾く感触。潮気だけを残した潮騒の風だけが頬を撫でた。にやりとそれこそしたり顔を浮かべる百合香、私はそんな彼女へとナノ成型物質で構築されたエヴィエニスを向けた。形に意味はさほど無く、今回は気分で剣にしてみた。相手はデータ通りに水流使いで、水の龍を呼び出したので絵面的にも様になるかなという粋な計らいだったりもする。


「聖か邪悪かはっきりしたらどうでしょう? 矛盾してますよ、その痛々しい名前」


「ほっときなさいよ!!」


 そんなこんなで、私は何故か青髪に襲われる羽目になってしまった。



「今更ながらに、一捻りはともかく二捻りって言葉、逆に手数と手間かけちゃってますよね……?」


 こんばんは、後半はなんか勢いです作者です。


 百合香さんことユーカリさんの久々な登場ですね、前以上にお喋りなのは相性なんでしょう多分。喋らない人相手にはやたら喋る人っていますよね、不思議。


 今日は眠いのでまた次回に。


P.S.部活中にアイデア忘れてもうた……;;

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