歪んだアイの選択肢;壱
「あはっ、あははっ」
渇いた笑いが木霊する、誰の声でも無く僕の声で。ただ立ち尽くし、差し伸べようとした手を震わせていた僕。そんな僕に七ヶ崎乃々葉は言った。
「おめでとう」
「何の事がだ……」
良く分からない祝辞。僕が可笑しいのか奴が可笑しいのか、恐らくはどちらもなんだろう。
唯、僕に向けられた銃口だけは顕著に語る。最早待つのは死だけであると、あの久遠の様に消え去るのみだと機械仕掛けの死神は嗤った。僕には奴を殺せない、何故だかそれが痛い程に理解できた。
「告白されておめでとう」
「馬鹿言うな!! お前が、お前が殺したんじゃないか! お前さえ居なければ僕達は、僕達はずっと……」
「黙れゴミムシ。悔しいのなら来なさいよ、苦しいのなら死になさいよ。楽に死なせてなんか、あげないんだから……あはっ、あははっ!!」
挑発、こいつは引き金次第で僕を殺せると言うのに敢えてそれを実行しなかった。七ヶ崎乃々葉、悉く狂った奴だと僕は思う。僕は怒りに声を大にして叫んだ。
「お前っ、お前! お前ええ!!」
「あははっ、何度見ても良い顔だね。素敵だよその憎しみ全開で張り裂けそうな顔はさ、醜いまでにエグい眼差しなんかは特に素敵だよあははははっ、あは、あはは、あははははっ!!」
怒りに任せて僕は地を蹴る、触れれば壊せるのだろうかと飛びかかる様に飛翔した。しかし、無論そんな攻撃は通らずに一蹴された。
「触らないで下さいよ触れないで下さいよ汚ならしいじゃないですか汚いじゃないですか穢らわしいじゃないですか!!」
七ヶ崎乃々葉は吐き捨てる様に言った、同時に彼女は銃を刃に持ち変えた。羽の下の辺りにレールガンをマウントして彼女は言った。
「分かりますか馬鹿? 彼女は貴方の性で死んだじゃありませんか、貴方が巻き込みさえしなければ大人しく傀儡に果てれたと言うのに、馬鹿ですよねえ?」
七ヶ崎乃々葉は煽っているのか、僕の前で刃を用いて輪を描く。蜻蛉を捕まえる時みたいな動作で彼女は僕をおちょくる。
「お前……」
「さて、また次回逢いましょうか? 次はどんな死に方が良いかしらね?」
「お前は分かるのか? 繰り返している事、死んでいない事を……知っているのか?」
「何、冥土の土産? これは《トライアングルループ》と名付けた状況。何度繰り返したってクリア条件は分からない、揃わない、だからループは終わらないし出られもしない。あははっ、もう8度目の8月8日なのにね?」
そう言いながら、眉間にブレードを突き立てる七ヶ崎乃々葉は首を傾げて問い掛けた。眩しい白光が目に痛い、近付いたら斬られる距離だ。
「あははっ、馬鹿みたいよね?」
《トライアングルループ》と七ヶ崎乃々葉は言った。8回も今日、8月8日を繰り返していると彼女は言ったのだ。
「それって……」
『前世です。正確には前のループ、私にとっての5週めの話です』
ふと、ボクの頭を過ったのは四十九院乃々葉の発言だった。初めてのループである今回では出逢っていないが、彼女は6回繰り返しを体験している。確かに、仄めかす程度だが明らかにそういう意味だったと僕は思った。
僕と四十九院乃々葉が出逢った時点で6週で今回で7週、最後に繰り返し前を入れて8周目なら辻褄が逢うのではないだろうか? だが、言葉を選ぶのに僕は躊躇う。
「なあ、ひとつ訊ねて良いか?」
「何か聞いたって所詮は抜け出せない輪っかなんだから、楽しむ以外に道はないじゃないと忠告するけど?」
「構わない、それでも良いんだ」
「貸し1つ、地獄の淵までよろしくだよ? あははっ、死ぬ奴相手に変な会話だ。馬鹿みたい」
顎に手を当て考える、最早白の刃はデスクライトにさえ思えた。敵意や殺意より、抜け出せない事への苛立ちと諦めを感じてしまう。彼女も一応は人なのだろう、狂ってさえ居なければ。
唯でさえ彼女は敵なのだから、握る情報でさえも大事な鍵となり武器ともなるのだ。故に僕は簡潔に訊ねた、相手の回答1つで全てを丸ごと裏付けられる質問を。
「七ヶ崎乃々葉――“1周目の僕は感電死で死んだ”――当たっているか?」
「正解、最初の貴方は私が殺しました」
ビンゴだ。やはり僕のループは四十九院乃々葉の物と繋がっている様だ、つまり《トライアングルループ》には彼女の関連は不可欠となる。
「お前、全部のループを見てきたのか?」
「さあ、どうなんだか。トライアングルが実はスクエアかも知れないしペンタゴンかも知れない、ましてやフラクタルかも知れない訳だしね。取り敢えずはカオスよ」
そう言ってから、けったいそうな欠伸を吐いて七ヶ崎乃々葉は言った。同時に『もう良いでしょ?』とでも言いたげな目線が投げ掛けられる、そして彼女は銃も構えた。
「七ヶ崎一喜憂くん、私は君に期待している。四十九院と君、そのどちらかが記憶を引き継ぐこのループを終わらせてくれると。最後のトリガーは君である事を願うよ、何しろ君には殺し甲斐が有るから」
「馬鹿言うなよ」
「馬鹿が馬鹿に何言ってるのよ? 因みに私、叶わぬ恋にはチャンスをあげたくなるタイプよ。頑張りなさい、モテ男」
『『さよなら、そしてまた何処かで……』』
どうも、忙しさと赤点発覚に膝から崩れ落ちる脱力系にゃんこぎつね作者です。SF好きでも電気系科目は大嫌いです、全部が語句問題だったら良いのに。
さて、馬鹿な作者は良いとして今回はやたら『馬鹿みたい』が多い回です。あははっ、馬鹿みたい馬っ鹿みたい私29点だなんて馬鹿みたい。ああもう大真面目にディラックの海に沈みたい、興味的な意味でも。
さて、作者は弓道人だったり袴姿だったりするのですが……凄いドジです。
あ、いやキャラ付けじゃないんですよ? 矢を4本射つ形式の試合に2本だけしか持たずに参加してたり、矢を前後逆につがえてたり……相当な末期です。
※つがえる……砕いて言うと矢を弓にセットして発射できるようにする動作。矢には弦に填める窪みがある方(筈)と刺さる方(矢尻)があるが、作者は週一回は間違えている。
そんな私、実は皆様に謝らなければなりません。そう、このライトノベルでも小説無いような作品にてドシをやらかし剰えそれを過去改編で片付けてしまったのです。重罪です、エクレア2ヶ月間御預け刑に値します。
※作者は甘味が大好きです。
さて、内容なのですが……実は一喜憂の両親の命日をずらしました、7年ほど。馬鹿にならない長さです、小学校が1回とNEETが1年も行えます。(中学受験って浪人あるの?)
1話は修正前は一喜憂が赤子の頃でしたが、後からは小学1年の夢希望溢れる御年頃です。その幻想を(以下略
これは久遠とのロマンチックなカルデラ湖イベントを描く為で、葉月さんと四十九院さんと青髪さん(知ってるか、こいつ西園寺百合香って言うんだぜ?)を置いてきぼりにしつつも改編しました。
いや、ピュアでロリショタで純真無垢な頃にこんな想い出があったらなという幻想です。そのげ(以下略
このままだと『どっちが本文?』になりそうなので今日はここまでにします。恐らくは無言系あたふたキャラであります私ですが、文の中では饒舌なのです。若干某ネクロマンサーと被りますがご愛敬、明日の友人が怖いのでいざ知らず。
では、また次回にお逢いしましょう。
PS.作者の追試結果にご期待ください、(合格:60点以上)無理。




