僕の生きる意味
時は流れ、それは僕らを大人にした。
子供のつもりの筈だった、気づけば、そう戻りたいと願っていた。
でも、今の僕は幸せだった。
「おめでとうございます、元気な三つ子の女の子ですよ!」
天使が居た。鳴き声は、まるで天使の吹くラッパ、福音の様にも思えた。
真っ白い病室の中、赤子のうちの一人を抱く。命の重さは、軽かった。生まれたての命は、それでもえんえんと泣いて自己主張をしている。
ふと、正面の病室――さっきまで"彼女"が陣痛に呻いていた部屋――を見ると、そこには微笑む彼女が居たような気がした。でも、そこには青空が在るだけ。大きな窓から覗く空は、どこまでも透き通っていた。彼女は今、分娩台の上でぐったりとしているのだろうか。そう身を案じていると、看護師さんが勘付いたのかにっこりと微笑む。
「お母さんも元気ですよ! 少ししたら、一緒にご飯も食べれるでしょう!」
「良かった……!」
僕は安堵する。
タイムマシンが壊れ、不時着した場所はよく分からない世界だった。
ただ、そこはとても温かい場所だった。
ちょうど、この胸に抱く天使と、それを包む白いタオルケットの様な。
そんな、温かい世界だった。
いつか、此処であの子達と会いたい。
どうやら此処は、あの子達が産まれたその時、そんな未来の世界なんだそうだ。しかも、始まる丁度最中、あの子達の時代が訪れるその数年前。これから起こるのは、戦争なのか、それとも平和な国家や世界なのかは分からない。でも、少なくとも、僕達は彼女達にとっての、帰れる場所でありたい。
腕の中の未来の子や、過去に翻弄された悲しい子供達の。
そんな事を考える。
そんな僕の頬に、冷たい感覚がすっと差したのは、その2、3秒だけ後の事だった。
くすくすくす、と。彼女が笑う声が響いた。
『裸天使にバスタオル、僕には生きる意味を下さい。』
―― 完 ――
お久しぶりです、作者です。
大風呂敷を広げたまま、流石に畳めないんじゃないかと思いつつもやっとどうにか最後まで来ることが出来ました。ここまで長い話で、完結まで持ってこれたのはこれが初めてです。
センス・オブ・ワンダー、これがSFと呼べる範疇にある作品とは、今はあんまり思えません。途方も無い空想科学、とてつもない強引な展開。
ただ、どうにか筋は通せたと感じています。もちろん、取りこぼしたものも幾つかあると思います。こぼれ落ちた、というべきかもしれません。しかしまあ、それもある程度辻褄が合う様にはなっています、最後の赤子とか、時間を取り残すまでに肥大化した能力とか。
この作品、なんだかんだで主人公が割とハーレムしてるんですよね。友人Aにも彼女が見つかって本当に良かったです。
さて皆様、混沌としたこの物語、主人公が極めて難解な渦の中、諦めない事で一縷の望みを現実に――したのかなあ、なこのお話。最後までお付き合いいただきまして誠に有難うございました。
遅筆ながら、ここまでかき上げれて本当に良かったです。
いつかまた、逢いましょう……?
『この世に満ちる不思議と魔法に取り憑かれて』




