光となって舞い上がる夢。
そして決戦は、呆気無く終わった。
人間だったのか機械だったのか、あるいはもっと恐ろしい、例えば世界のプログラムを執行する為の存在とか――そんな気さえする途方も無い存在だったアニュスデイは崩れ落ち、光に分裂して弾け飛んでしまったその身体からは、折れ曲がった機械だけがこつんと落ちた。
それもすぐ、光に消えてしまう。
彼女が大事そうに抱えてしたそれは、ひょっとすると彼女を構成する核だったのかも知れない。
砂のように砕け、散っていく光を救い上げる。
辺りは、光に変わったアニュスデイの欠片に覆われている。その光景は、元死体の海とは思えない程神々しかった。アニュスデイとの激戦の末、死体は闇か光に分解され、どっと吹いた風に舞って空に吸い込まれていった。もう、何もかもが嘘みたいだった。
でも、確かに僕は生きている。
そして突然、ふらつく僕は抱きかかえられていた。
「お疲れ様。」
そういう久遠の顔、僕を抱える友人A、そして未来さんに支えられる過去さん。
かつて敵だった2人も、歩み寄ってきていた。
「馬鹿みたいだけど、信じてよかった。ありがとう、お父様」
「具体的に何が変わるでも無いけど、きっと明日は来る筈だよ。こんなクソみたいな世界なんだけどね!! ふふん!」
得意気に胸を揺らす百合香を、久遠がぺしぺしと挑発する。
「はいはい、なら明日から学校ですよー!!」
「あっ、私も学校行きたいです!!」
「奇遇だな、私もたまには学生になりたい」
実は最年長の疑いがある、過去さんと葉月が乗っかる。
「ちょっと待って姐さん仕事はどうするんですか!!」
「戻るにも進むにも、タイムマシンが必要だろう?」
その言葉に、僕は苦笑いをする。
「またこんなのは懲り懲りですよ? 僕は……」
「へー、『愛してる』とか言ってたのに? あの子助けに行かなくていいんだ?」
「うっ!!」
たじろぐ僕の頬に、突然冷たいものが当たる。
「うひゃ!!!?」
「あははっ、馬鹿みたいにびびっちゃって面白いわね貴方!」
七ヶ崎乃々葉がお腹を抱えて笑っている。無性に腹が立つ、犯人を探しに辺りを見回すと、驚きの人物が居た。
「久遠の言う通りで面白い反応ですねーかわいいですねー!! はーかわいいかわいい!!」
久遠そっくりの、女の子。
「申し遅れました、久しい音、ひさしいねって書いて久音っていいます、久遠ちゃんの従姉です!」
可愛らしい水色のリボンを揺らして、その女の子は笑った。




