次から次へと、馬鹿みたいに。
「次から、次へとッ!!!!」
黒い光、虚ろな闇を振動させ、それを纏わせ巨大化させたナイフをさらにもうひと回り、50メートルは超えるだろうそれを頭上に掲げていざ振り下ろそうとフードの少女が力を込める。
派手な彩色のチェーンソーが、その声をほぼ聞こえない程にかき消す。もう一段、もう一段とエンジンの紐を引く度にその音は高くなり、やがて耳鳴りだけが世界を埋め立てる。
振りかざした巨大な闇を、無慈悲にフードの少女が薙ぎ払おうとした時、その身体ががくりと崩れ、そして闇の刃ががらがらと音がしそうな崩れ方をする。チェーンソーがやみ、違う音が響き渡る。
「未来ガジェット参号機《ミラクル上等ミクルサイクルKOGANE10》+未来ガジェット没機体《未来ロケット》の合わせ技、どうだ懲りたかってんだぜ!! 俺参上!!」
次の瞬間には、その友人Aがどこか彼方へと吹き飛んだ。
超音速の弾丸が、少女の辺り一帯を抉り飛ばしたのだ。
「《バラウール・ヴィラヒア》、お姉様の力ね!!」
そこに飛び込む、鎌を構えた白天使。葉月の大鎌が、弾かれる。動いた彼女の知覚か勘が感じ取った様に、まだ少女は息があった。
「……!! っ……、っ!!」
最早少女とは形容できないそれは、闇そのもの。その足元は徐々に黒ずみ、まるで世界さえも呑み込もうとしてるかの様な印象を与えられる。それが、吠えた。
"それ"が僕に向かってくる。葉月も久遠も追い越して、僕の元へと走ってくる。




