寄り添うモノ。
「疲れてるんだね、一喜憂……。倒れないでよ?」
がっくんと頭を揺らして、疲れた僕は頷く。久遠が、上半身を寄せて気遣ってくれた。僕らの手足には、ガラス片によるらしい切り傷やその細かい破片の幾つかが突き刺さっていた。急いで、幾つかを引き抜き手当てを始める。
「駄目だよ!」
意識が飛びそうな、激しい頭痛と目眩とが僕を襲い、気怠さが全身を包み込んでいた。鈍痛。節々が硬く強張り、無茶無謀を繰り返した身体は目に見えて疲弊していた。
「……包帯も無いのに、下手に抜いたら、血が出ちゃうじゃない」
その通りだ。僕は、どうやら頭が回らなくなってきている。疲れか眠気か、或いはある種の退行なのかは良く分からない。ただ、悪い状態なのは確かだった。
「……ごめん」
僕が言うと、比較的怪我の少ない久遠は、自身のガラス片を引き抜いて《姫九里滸黄泉》を呼び出していた。傷口が、見る見る内に縮小していた。
「便利なもんだな……、お前の力は」
「そうでもないよっ」
久遠は、手のひらを左右に振ってそう答えた。人の方の耳が少しだけ赤らむ、そして頬やその周りも。そんな久遠は、僕へと歩み寄って質問してきた。
「ワイシャツ、脱いで千切れる? まずは縛って止血するから。はい、後は缶コーヒーをひとつ」
彼女の手から、赤い朝専用珈琲の缶を受け取って俺は頷く。中身はある、空でもない本物だった。
「ああ。ってか、まだ有るのか!? 久遠、今こんな一大事でも持ち歩いてるのかよお前!!」
「うん、まあ2〜3本?」
「は!!?」
「えー、あーうん。まあ生命線だよ、仕方がないでしょ?」
どんな命綱だ。突っ込む気力も失せた僕は、床に珈琲の缶を置いてから上着を脱いだ。切り裂かれた、穴やほつれは数多いが包帯には使える。それを僕から受け取った久遠は、切り込み通りにあっさりと引き裂いて包帯と止血用ロープを作り出した。
力の強さと潔さ、そして手際の良さに僕は驚く。次の瞬間には、足を縛り、制服の背でできた包帯を巻き始めていた。僕の上着はシャツ1枚になる。
「良いかな、寒くないよね?」
「ああ、何せ夏だからな」
「良かったよ……」
近くにあった備品のモップで床を掃いてから、久遠は僕に寄り添って笑った。優しい、そして涼しげな笑顔だった。
おはようございます、作者です!! 更新遅れてごめんなさいです、試験は受かりそうにないです
ああっと、今日も残念ながらお時間なのでこれまでです。また、またまた次回にでもまた逢いましょうねっ!! ねっ♪
P.S.働く魔王様やばい面白い、ありふれた魔王物とは一味違うリアルさ!! あと、外国人ってたまに日本人も知らない日本語を話し出すよね。




