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第6話 赤鬼の魂

透の召喚術について、説明がいまいちです。恐らく、これから追々わかってくると思いますが……不安です。

「うっ……。」

 透は内心、焦っていた。

 目の前で炎を乱射しているこの男が、予想以上に強かったからである。

 予定では、祐貴の時のように魂を目覚めさせ、その後話していくうちに隙を見つけて上手く言いくるめるつもりだった。だが、それは最早無理のようである。

 相手が狂乱し、自分の命の危険さえ感じる今、一時撤退が無難な選択だ。

「オラァァッ!!」

「うわっ!」

 ――ヒュオッ

 目の前まで迫った炎の塊を、思いきり退け反って避ける。

 そのまま、透は地面に手を着いて魔法陣を二つ描いた。

「LV1召喚、“ラター”ッ!!」

 透の言葉と共に魔法陣が光り、テニスボール程の大きさのネズミが召喚され、辺りを駆け回る。

「こしゃくなァッ!!」

 ――ゴオォッ

 当然、祥はラターを焼き払おうとするが、なかなか当たらない。小さい上に、すばしっこいのだ。

 そうして祥がたった二匹のネズミに苦戦している間に、透は背を向けてさっさと逃げていた。

「なっ……。待てコラァァァッ!!」

 それに気付いた祥が、ラターを気にせずに後を追う。

 ラターは祥に攻撃しない。と言うより、ラターは元々攪乱が目的なので、攻撃は出来ないのだ。歯もまだそこまで発達していないので、噛みついても大したダメージにならないだろう。

 祥が透の後を追う。

 すると、透が突然振り向き、手を挙げてこう言い放った。

「LV1召喚、“クラシス”ッ!!」

 地面が、光る。いや、正しくは透が通った跡の地面が光っていた。

 光る地面の部分には、透が着いた足の数の魔法陣が描かれている。

 そしてその光の中から現れたのは、視界を遮る程の身の丈がある植物たちだった。

 祥は既に透が通った跡の地面の真ん中に居たので、視界を思いきり遮られてしまった。

「っのおぉォォーーッ!!」

 ――ゴオォォォッ

 祥が身体中から炎を発する。

「燃・え・つ・き・ろッ!!」

 ――ボッ

 軽い、燃える音がした。赤い光が辺りを包む。

 ――瞬間。

 植物は全て消え去っていた。辺りには白い塵が舞っている。

 祥は即座に塵の中から飛び出したが、既に透の姿は無かった。

「チッ!逃がしたか……!……って、時間が!」

 いつの間にか口調が戻った祥が、大変な自体に気付く。

「アニメがあぁぁぁーーッ!!」

 そう叫びながら、祥は走り去って行った。

 自分がさっきまで人間では有り得ない行動をしていたという事実を、思い出す事無く。






 透は近くに控えさせていた、“バーディス”という鳥のような召喚獣に乗って飛んでいた。

 下に見える人混みは、街の上をこんなにも大きな鳥が飛んでいるというのに、誰一人として気付かない。恐らく、明る過ぎて上が見えないのだろう。

「熱つっ……。」

 透が小さく呻いた。透の背中は黒く焼け焦げ、丸見えになっている。


 あの時、クラシスを召喚した瞬間、祥はほんの一瞬だけ怯んだ。その一瞬を、透は逃さない。

 咄嗟に、透は電柱の陰に隠れようとした。

 ――だが、甘かった。やはり、杖を持ってくるべきだった。

 爆音の後、凄まじい熱が背中を這う。後ろを見る隙は無い。ただ、電柱の陰に転がり込む。

 勢い余って、透は壁に思いきり頭を打った。

 辺りに塵が舞う。

 その数秒後、祥は何かを叫びながら走っていった。


 あの時見付かっていたら、確実に焼き殺されていただろう。ただ、運が良かっただけだ。


 しばらく飛んでいると、校舎が見えてきた。その屋上に、人影が見える。

 裕貴が、透の方を見つめていた。

「……どうした、そんなにボロボロになって!?」

 空からゆっくりと降りてくる透に、裕貴が問掛ける。

「いやぁ、ちょっと予想外の展開でね〜。」

 軽い台詞。さっきまで生死を別ける闘いをしてきたというのに、それを微塵も感じさせない口ぶりだ。

「予想外って……。そんなになるほど予想外な事って何だよ!?」

 裕貴はかなり心配そうだ。

「……相手が強すぎたんだよ。炎を乱射して、滅茶苦茶な攻撃力だった。」

 透が、バーディスを帰しながら答える。

「炎を乱射……って、は?」

「あのねぇ……。」

 透がもううんざりだと言わんばかりに、深く溜め息を吐いた。

「僕が探してるのは、“魂持ち”の強〜い用心棒さんだって言ったよね?人間離れした力を持ってるのは当たり前でしょ。でないと、スカウトしようなんて思わないよ。」

「いや、でもだからって……。」

「裕貴く〜ん。」

 透が裕貴に顔をグイッと近付ける。

 裕貴は無意識に一歩退いた。

「君はまだ実感無いだろうけど、君もまた僕がスカウトした“魂持ち”なんだ。人間離れした力を持ってるのは、君からすれば決して珍しくない事だよ?まぁ、まだ君の力がどんなものなのか見せてもらってないから、強いかどうか何とも言えないけどね。」

 透はそう言い終えると、背を向けて屋上の階段へと歩いて行く。

「……ナイトの魂だって事は解るのに、能力は分からないのか?」

 ふと、疑問に思った事を裕貴が口に出した。

「……誰の魂かって事だけじゃない。見えた魂の色で、喜怒哀楽も判断できる。例えば裕貴君、君のナイトの魂の色は真っ青。だから喜怒哀楽の内、“哀”の感情が深いってことが分かる。いや、“哀”の感情で出来てるって言った方が良いかな。因みに、炎を乱射する人が赤い“怒”で、僕は緑の“楽”。」

 歩みを止めた透が、振り向かずに話した。

「喜怒哀楽……?それが分かるとどんなメリットが有るんだ?」

 振り向かないまま、透は少し考える。

同調(シンクロ)……し易くなるんだ。自分の感情を魂の感情に合わせて、通常時の倍の力を発揮する。まぁ、これが出来る人は中々いないけどね。」

 一通り話し終えると、透は再び歩き出した。

「……その、炎を乱射する人は何の魂だったんだ?」 裕貴がまた透を止める。

 透はそれに対して、今度は振り向いた。

 ――顔がにやけている……と言うより、引きつり、苦笑いになっている。

 そしてその引きつった口元から、言葉が漏れ出した。

「……鬼だよ。角の生えた、赤鬼だった。」

 辺りには気味の悪い沈黙がゆっくりと降り、その中を、透はゆっくりと去っていった。


更新がかなり遅れましたが、多分ずっとこの調子です。Σ(゜ロ゜)!?こんな駄目作者ですか、どうか永らくご愛読くださるよう、よろしくお願いいたします。

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