表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/13

第5話 三人目は二重人格

三人目の仲間が登場します。短いですがどうぞ。

 秋葉原の路地裏の前で、ウロウロしている人がいる。

 その人は、オタクだった。

「どうするかなぁ……。」

 彼が何を迷ってるのかと言えば、それは中々シンプルな問題である。

 彼の名は金沢 祥、22歳。ついでに独身。仕事はちゃんとしているが、小心者であまり上手くはいっていない。

 その小心者さは今のこの状況にも深く関わっている。

「うー……。」

 しびれを切らしたかのようにうめき出した祥。オレンジに染めた髪を掻く。

 路地裏には嫌な空気が漂い、得体の知れない変な臭いもする。

 だが、時間が無い。今日の午後四時半から始まるアニメに間に合うかどうか、今は四時十五分である。録画予約をしていない訳ではないが、やはり生で見たい。

 この路地を通れば駅まで約八分。家までの時間と合わせてギリギリ間に合う。

 だが、この路地裏は明らかにこっちと世界が違う。

 急がば回れ?いや、回っている時間は無い。この路地裏を突っ切らない限り、明日は無いのだ。

 祥は意を決した。

 ――ダッ

 持っている大量の荷物を抱え、走り出す。途中で振り向きはしない。ただ、どこにいるかもわからない危ない人にだけ注意をする。

「あーあ、そんなに買って……。ムダじゃない?」

 いきなり、酌に触る声が浴びせられた。その言葉に、祥は思わず振り向く。

 立っていたのは、黒い猫を肩に乗せた少年だった。

 祥がその少年を睨む。

「なんだい?君は。」

 少年はニヤッと笑いながら、さも楽しそうに言葉を返した。

「只の通りすがりさ♪今のは思ったことを口に出しただけだよ。」

 口調が更に酌に触るが、今はそんなことを気にしている場合ではない。

 時間が無さすぎる。

「……そう。」

 祥はそれだけ言うと、素早く走り出した。

 だが、次の少年の言葉ですぐに止まる。

「それにしても、こんなイヤラシイ物を買うなんてねぇ。趣味悪〜い。」

 祥が振り返ると、少年は手に何かの冊子を持っていた。

 途端に祥は荷物をあさり、一つのソフトケースを取り出す。

 “きゅんきゅん☆プリンセス”……。今日買った様々な物の中でも特にメインとなる、限定版の代物だ。 しかし中を開け、唖然とする。

 限定版のソフト、“きゅんきゅん☆プリンセス”の……説明書が無い。

 今は少年の手に渡っている。

「一体どうやって……!?」

 祥はそう言いながら、少年に向かって走り出した。 ――ガシッ

 祥の手が何かを掴む。それは、祥の狙っていた説明書(もの)ではなかった。

「ニ゛ャアァッ!!」

 ――ガブッ

 黒い猫が祥の手に噛みつく。

 思わず、痛みに手を離した。

「あれっ……!?」

 祥はここでやっと気付く。

 少年が目の前から姿を消した。この猫を掴んだ途端、いきなり消えたのだ。

 だが、後ろから笑い声が聞こえてきた。

「どうしたの、こんな説明書くらい。どうなってもいいでしょ?」

 祥が後ろを振り向くと、説明書を破ろうとする少年が視界に入る。

 祥の中で、何かがうごめいた……。

「……あああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……ッ!!」

 体が震え、腹が煮えたぎる感じがする。

「おっ?」

 少年は面白がるように構えるが、既に祥はそれすらも認識できなくなっていた。

「……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!うっっっぜえぇぇぇぇーーッ!!」

 ――ゴォッ

「うっ……!?」

 熱気が辺りを包み込む。

 これにはさすがに少年も苦しい様だ。

「それを返せぇッ!!」

 ――ゴオォォッ

 口調の変わった祥の手から、炎が放たれる。

「ぅ熱ちっ!」

 少年の肩を炎が掠めた。

 その顔が苦痛に歪む。

「くっ……!そんなに言うなら、返すよ!」

 ――ヒュンッ

 祥の方に説明書が飛んでいく。

 祥はそれを取った。

 だが……。

「返しただけで、済まされると思うなよ!!」

 祥は許さず、再び炎を乱射し始める。

「そりゃあ無いっしょ!」

 少年は祥の放つ炎を必死に避け続けた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ