第2話 滑稽な奴
大変長い間、御待たせして申し訳ありませんでした。まだまだ未熟ですが、長い目で見て下されば幸いです。
祐貴は家に帰り、ベッドに寝転がった。
フカフカのベッドが気持ち良い。
今日は、やけに疲れる一日だった。クラスに認められたせいで、寄ってくる奴が増えたからだ。
俺の趣味を根堀り葉堀り探る奴もいれば、昼休みに飯に誘う奴もいた。今更、部活勧誘する奴もいたな。
だが不思議な事に、透に
「消えろッ!!」と言ったとき、どんな気持ちだったか、聞く奴はいなかった。 やはり、あいつが傷付いた事に気付いた奴はいないようだ。
自分の事しか頭に無い。
自分の利益を考えて、俺を仲間にしようとする。
――そういう奴は、ウザイと思う。
「……俺がウザイと思うのは、気持ち悪い奴だけじゃないんだな。」
この時、初めて思った。
十日後、透が戻ってきた。
いつもと変わらず明るいのが、逆に薄気味悪い。
だが、透がいきなり
「そろそろ目覚めた?」
と小声で聞いてきた時の気味悪さに比べれば、大した事は無かった。
この前の“ナイト”に続いて、あいつは謎が多すぎる。
今日こそ捕まえてやる。
放課後、透はあっさり見付かった。
これまで苦労したのが馬鹿馬鹿しくなってくる。
何故かは知らないが、今日は消えなかったのだ。いつもは廊下を曲がれば姿を消すのに、今日だけは。
跡を着けていくと、透は屋上に上がっていった。 透が屋上の扉を開け、直ぐに閉める音がする。
その後、十秒程待ってから祐貴はゆっくりと扉の取っ手に手を掛け、音も無く扉を開けた。そして、扉の隙間から透の姿を確認する。
透は屋上のフェンスに手を掛け、一人で空を眺めていた。
ふと、透が口を開く。
「……いつも着けていたよね、僕の跡。」
祐貴は驚いた。今まで、絶対にバレてないという自信があったからだ。気配を消す事はもちろん、距離はいつも50メートル以上離していた。
しかし、現に後ろを見ずに祐貴がいる事を悟っている。扉の音も起てず、気配を消して入ってきた祐貴との距離は約30メートル。常人が相手ならば絶対に気付かれない自信があった。
それとも、こいつは常人ではないのか?
驚いた顔の祐貴を振り返り、透は笑った。
「どんなに隠れてもね、ちゃんとわかるトリックがあるんだよ。」
「トリック……?」
透の言葉を繰り返す。
「お前は一体……。」
「あっ、初めて話し返してくれたぁ☆」
風が止み、背筋がゾクゾクする。
――忘れていた。確にこいつは常人ではない、変人だ。
だが例え変人でも、やはり例の言葉の意味は気になる。
今は耐えよう。
折角捕まえられたんだ。今日こそ全部吐かせてやる。
祐貴はゆっくりと透に近付きながら、さっき聞きかけた事を言った。
「お前は、一体何者だ?」
真っ直ぐな声が、屋上に響く。
祐貴は、真剣だった。
「んー……。」
透は、しばらく考え込む。
何者なのかを聞いただけなのに何故そんなに悩むのか、祐貴には見当がつかなかった。
しばらくした後、何かを決心した様に、透は笑顔で顔を上げる。
「そうだね、もうそろそろ話しても良い頃かな?」
そう言うと、透はパチンと指を鳴らした。
「おいで。」
祐貴の横を、何かが通り過ぎる。その何かは、一瞬で何なのかを判断するのは難しい程の、素早さがあった。
透の横で、それが止まる。
その姿を確認すると、祐貴は目を見開いた。
「えっ……待て……。」
不気味さに、鳥肌が立つ。
「何……でお前が……二人?」
透の横に立った者。祐貴の背後に潜んでいた者。
――それは紛れもなく、透だった。
これからも度々連載が遅れると思いますが、なにとぞ宜しくお願い致します。