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第9話 精神さえも容易く崩壊する

 今回、友人に言われ書き方を変えてみました。しかも一年くらい掛かってやっと10話を突破しました……。遅いです。

 大男は、思わず飛び退いた。

 何故なら、目の前にいる謎の男が、凄まじい熱気を発していたからである。


 大男の頭の中では、もう祥は既に“キモオタク”ではなく“謎の男”になっていた。

 それはそうだろう。

 今まで只のオタクだと思っていた奴が、いきなり熱気を発し、更には口調まで変わっている。


 ――状況が飲み込めないのだ。

 熱気がジリジリと焼き付けて来る中、大男は予測出来ない祥の次の行動に備え、身構えるしかない。













 ――熱い。



 ――熱い!


 ――熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱いぃッ!!


 ――心が熱い!怒り、憎しみ、否定ッ!!


 ――俺が弱いだと!?


 ――弱いだと!?弱いだと!?弱いだと!?弱いだと!?弱いだと!?弱いだとおぉぉ!?




「ふざけんな……ッ!」

 祥が口を開く。

 その口から出た言葉には、体に響くだけで気を失ってしまいそうな程の、憎悪が滲み出ていた。

「弱ぇのは……!!」

 そして、腕を振り上げる祥。

 ただそれだけの行動だが、それには妙な迫力があり、不良達は一歩も動けなかった。

「てめぇらだろうがああぁぁぁッ!!」

 祥が大男に向けて手を突き出す。

 それと同時に、炎が大男に向かって放たれた。

「う、うおっ!?」

 大男にとって予想外の攻撃。

 側にいた不良も体をビクッとさせ、立ち上がる。

 しかし、既に遅い。

 その巨大な炎は何の躊躇いも無く、何かが蒸発する様な音と共に、不良達を飲み込んだ。

「あ゛!?」

 しかし、その音に祥は違和感を持つ。

 それほど高温の炎を放った訳ではない。それなのに、何かが蒸発するような音が聞こえたのは明らかに不自然だ。

 炎が、消える。

 見ると、不良達がいる場所の前の地面に杖が刺さり、刺さった部分から青い魔法陣が描き出されていた。

 そして、祥に違和感を持たせた張本人は、その魔法陣の上にいた。

 それは、青い亀。

 子供の大きさではない。大型の、大人の亀だ。

 その亀は、大きく分厚い透明な壁を目の前に作り出し、祥の炎を遮ったのだった。

「何だこいつは。」

 祥が疑問を口に出す。

 しかしその疑問は、あの魔法陣を思い出した瞬間に消し飛んだ。




 ――ある、声が聞こえた。



「いやー、危なかったねぇ。」



 祥は、鳥肌が立った。

 祥が通ってきた路地の先、暗がりに隠れた道の中心に、そいつはいた。

「数時間ぶりの再会……かな?」

 憎たらしい、満面の笑み。

 祥の中に、憎悪が広がる。

「てめぇはああぁぁぁーーッ!!」

 走り出す祥。

 その手には、小さな光の玉が浮かんでいた。









「フッ……。」

 透は笑みを漏らした。

 しかし、透はこれからの戦いに喜びを感じるような性格ではない。


 ――じゃあ、苦笑い?

 ……多分、そういう類だろうね。


 思わず自問自答してしまう。


 裕貴は、透のすぐ右後ろの電柱の影に上手く隠れている。

 なので、祥が走って来ている事を考えると、この状態のまま攻撃を避けるのは非常にマズイ。

 何故なら、祥がどんな攻撃をして来ようと、かなり高い確率で裕貴に被害が出てしまうからだ。

 況して、“炎をどばーっ”などとされれば、一溜まりもない。

(ここじゃ駄目なら……。)

 透は走り出した。

 祥に向かって、熱さを感じるまで。


 そして熱いと感じた瞬間、横に跳び、祥の攻撃を避けようとする。

「避けさせねぇよッ!!」

 しかし、祥も体を捻って透の動きに合わせてきた。


 そして……。







 ――透は消えた。



 あまりにも予想外の出来事に祥の手が反応し、光の玉が吹っ飛んでいく。


 そして光の玉が、地面に当たる。


 ――爆音。


 透のいた場所に当たった光の玉は、喉を焦がすような熱気を放出しながら、爆発した。

 透が前に移動していたお陰で、裕貴は無事である。


 祥は、透を探して後ろを振り向いた。

 見ると、さっきの大きな亀の上に透が乗っている。

 そして更に透は亀の甲羅を杖で二回突き、言葉を発した。

「強化陣、繰り上げ二段階!」

 赤く光る強化陣が二つ、重なるように亀を囲む。

「LV3より繰り上げ、LV5召喚、“タート”!!」


 ――地面が一瞬、揺れた。


「さー、ここからは僕と一緒に遊ぼうか?」

 巨大な亀の甲羅に乗る、透。

 どの位巨大なのかと言うと、既に路地の壁を両側共破壊してしまっている程だ。

 更に、透の肩には頭に毛を生やした白い蛙の姿も確認できた。

「……おっと、忘れてた。」

 そう呟いて、後ろを振り向く透。

 そこには、この戦いを恐怖と興奮と好奇心の目で見ている不良達の姿があった。


 透は、先程とは表情を変えて言い放つ。

「君達、そこにいると僕に殺されるよ?」


 ――恐怖。


 言葉から来る恐怖だけではない。今まで脳天気な表情をしていた奴が、いきなり無表情になった事も恐いのだ。

 そして一人残らず冷や汗が背中を伝った不良達は、やがて時が動き出す様に、ゆっくりと後退りする。


 しかし、祥が黙っていない。

「待てよ!まだ制裁してねぇだろうがあァッ!!」

 祥がそう言いながら手を突き出すと、凄まじい勢いで炎が放たれる。

「うわあぁぁっ!!」

 それを合図に、不良達は叫び声を上げながら一気に走り出した。


 ――炎が、襲う。



「……チッ……!」

 しかし、再び違和感のある音が聞こえ、祥は舌打ちする。

 その目には、透の姿が映っていた。

「もう一度言うよ。」

 透が、不良達が逃げていった道の方向に杖を向けている。

 そしてその先の場所には、先程と同じ様に、透明で大きな分厚い壁が作り出されていた。


「僕と一緒に、遊ぼうか?」


 台詞を言い終えるや否や、再び消える透。

 そしてその数秒後、祥は透の行方に気付き、上を向く。


 ――祥が見たのは、黒い塊だった。

 しかもその塊は、祥の瞳の中で急速に大きくなっていく。


 危険を感じた祥は、咄嗟にその場から飛び退いた。



 ――そして、轟音。



 その衝撃は地震の如く。

 一体あの亀の体重は、何キロあったのだろう。恐らく、トンは超えると思う。

 その化け物亀が、有ろう事か天より降ってきたのだ。

 しかも落下地点は、間一髪で衝撃から逃れた祥がいた場所だった。




 その光景を電柱の影から見ていて、裕貴は思う。




 ――アイツは果たして、あの人を生かしておく気があるのか、と。




 壮絶過ぎる戦いの火蓋が、切って落とされた。

 かなり更新が遅れてしまいました。あと、書き方を変え、擬音語を一切使わないようにしたのですが、如何でしたでしょうか?付け焼き刃なので、お見苦しい所もあったと思います。毎度更新ペースの遅いクラッシュですが、どうかよろしくお願いします。

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