扉の向こう側
自分の実家にある、2階の一番奥の部屋。
開かずの間ではないが、開かずの扉がある。
一番不思議なのは、この扉の向こう側は、壁ということだ。
外から見ても、この扉は見えないように壁は塗りこまれており、開く事は決してない。
だが、自分は一度、開いたところを見たことがある。
今から10年も昔だから、記憶もあやふやだ。
小学生の2年か3年か、そのあたりだったず。
その時も、その扉は一番奥の部屋にあった。
その日は、姉が友人を連れて家に来たからという理由で、その部屋で妹と一緒にいた。
暇にしていると、その時はしめ縄が扉の上にかかっており、なにかしら嫌な感じがしていた。
妹も、そのことを分かっていたらしく、その扉には近づかないようにしていた。
二人で遊んでいると、そんなことも気にならなくなり、ふとしたはずみで扉にぶつかってしまった。
すると、音もなくしめ縄が切れ、落ちてきた。
びっくりして、反対側へあわててすり寄り、二人で震えていると、中から指が出てきた。
続いて手、腕、体、それから足。
最後に顔をのぞかせた。
普通の白髪の老人だが、人ではないとすぐに分かった。
ここはどこかと聞かれたから、素直に自分の家だと答える。
何か考えているようだったが、彼は何も言わずにこちらに来て、名前を聞いた。
それは、自分の祖父の名前だった。
今はこの家にいないというと、悲しそうな顔をして、扉の向こうへ戻った。
自分たちは、それを追いかけようとしたが、その前に扉が閉まってしまった。
それきり、その扉が開いたことは見たことが無い。
次はいつ開くのか、自分はそれを楽しみにして、今ではその部屋で布団を敷いて眠っている。




