第七話 アイドル
ゾンビを倒してから二ヶ月が過ぎていた。仄香は、あの日以来オルトロスとの特訓に明け暮れていた。
「今日も疲れたよ。オルちゃんトロちゃん手加減してくれないもんね」
「当たり前だろうが、手加減してたら強くなれねぇぞ」
「それは、そうなんだけどね……」
「でも仄香はん、だいぶ上達してますわ。ワテは、関心してますよぅ~」 「本当? ありがとう。オルちゃんトロちゃん」 仄香は、オルトロスの頭を撫でた。
「だから、あんまり撫でんじゃねぇよ」
「ええやんかぁ~、ワテは毎日でも撫でて欲しいでぇ~」
「お前なぁ~、ちっ、しゃぁねぇなぁ~、今日は許してやるよ」
少しの間、仄香はオルトロスの頭を撫でて、オルトロスの背中に乗り家路に着いた。
仄香達が帰っている途中、オルトロスが、店先に貼ってあったポスターを見て「仄香、この三人娘達は何者なんだ。けったいな格好してやがるじゃねぇか」
「そうですかぁ~、ワテは可愛いと思いますけど~」
「この娘達はね、今、大人気の歌って踊れるアイドルなの。私は、あんまり興味ないけど、男性にはかなりの人気みたいだよ。可愛いから。確か、プリティエンジェルって名前だったと思う」
「けったいな格好の上にけったいな名前ときたか、しょうもない」
「まぁまぁ、ええやないですかぁ~、ワテはこの娘等可愛いと思いますよぅ~」
「お前は、何を見ても可愛いって言うよなぁ」
「可愛いと思うんやけどなぁ~。オルはんも、見方を変えて見たら可愛いと思うようになるんやないですか?」
「見方を変えるか。まぁ、どうでもええわ」
そんな話をしながら仄香達は家に帰った。
家に帰って仄香は、ご飯を食べ、特訓で汗ばんだ体をお風呂で流した後、自分の部屋へ行き何の気なしにテレビを付けた。
テレビを見ていたら、さっきまで話てたアイドルグループが番組に出ていた。
「みなさぁ~ん、こんばんはぁ~。私達プリティエンジェルの新曲が出たので聴いてください『ガムシャララ』でぇ~す」軽快な音楽が流れ始め三人はリズムに合わせ踊りながら唄った。
最後に決めポーズを決めた時、番組を見に来ていた観客から大歓声が起こった。
「みんなぁ~、ありがとう。私達の新曲絶対に買ってね」
と、投げキッスをしてステージをはけた。
仄香達は、テレビを見て
「やっぱりけったいな奴等が唄う歌はしょうもない歌じゃったなぁ」
「そう? でも、人気グループだから流行るんだよね」
「あれがか? 何が、愛の鼓動がふるえる、私の拳が燃えるだよ。ワシにとっては耳ざわりじゃ」 「そっかぁ~、でも、トロちゃんは気に入ってるみたいだよ」
「またかよ。こいつは何にでも興味を示すからなぁ~、困った奴だ」
「ええやん。ワテは気に入りましたよぅ~。オルはんいけずやなぁ~」
「あはは、本当正反対だね。オルちゃんトロちゃん」
「こんにゃろー、仄香笑ってんじゃねえよ。もうええ、早く寝やがれ」
「はぁ~い、じゃ、寝ようかな。おやすみ。オルちゃんトロちゃん」
仄香は眠りにつき夢の世界に入った。
翌朝、仄香が目を醒ますと、オルトロスがテレビを見ていた。
「おはよう、オルちゃんトロちゃん、朝からテレビ見てどうしたの?」
「いやぁ~、ふとテレビを付けたら、昨日話とったアイドルさん等が所属する芸能界で行方不明事件が起こったらしいんですよ」
「行方不明事件? 誰がいなくなったの?」
「あのプリティエンジェルって言う奴等のライバルのアイドルだそうだ」「そうなの? 行方不明事件かぁ、調べてみる必要があるね」
「そうやなぁ、どうやって調べましょうかぁ~」 「それは任せて! 私は、行きたくなかったけどあのプリティエンジェルのライブチケットもらってたの。だから、そのライブ会場に行ってみようよ」
「分かった。若干、行きたくないが……しゃあねぇな」
仄香達は、放課後すぐにプリティエンジェルが出演するライブ会場に行った。
ライブ会場には、すでにたくさんのファンが列をなしていた。ファンの人はほとんどが男性だった。仄香は、場違いなところへ来てしまったと少し後悔したが調べる為仕方なく列に並ぼうと歩を進めた。
最後尾に並んだ仄香が、後ろから肩を叩かれた。 仄香が後ろを振り向くと 進藤がいた。
「こんばんは、相澤さん。こんなところで会うなんて奇遇ですね。相澤さんもプリティエンジェルのファンなんですか?」 「け……刑事さん、こんばんは。別にファンじゃないんですけど……チケットもらったんで来てたんですよ……刑事さんもどうしてここに」
「私はですね、もうニュースで知っているとは思いますが、アイドル行方不明事件の調査で来たんですよ。何か、相澤さんとは、事件が起こった時によく会いますね」
「そうですかぁ、たまたまでしょう」
「本当ですか~? 何か私に隠し事とかしてません?」
「え……何もないですよ隠し事なんて」
「それならいいのですが、そうだ折角だからライブ一緒に見ましょうか」 「はぁ、別にいいですけど……刑事さん事件の調査で来てたんじゃなかったんですか?」
「まぁ、ライブが終わってからの方がいいでしょう。余計な心配をさせてライブが失敗したら可哀想ですからね」
「そうですかぁ、刑事さんも大変ですねぇ」
そうして二人は、ライブ会場の中に入りプリティエンジェルの歌を聞いた。ライブ終了後、進藤はすぐに聞き込み調査を開始しに向かった。
仄香は、偵察に行っていたオルトロスと合流して 「オルちゃんトロちゃん何か分かった?」
「いやぁ~、手がかりなしですわぁ~」
「そっか、魔族の気配もなかったの?」
「何も感じなかったぞ、怪しいのは怪しいんだがな」
「収穫なしか、仕方ないよ。出直そうか」
仄香達は、ライブ会場の外に出ると、さっきまでライブを聞いていたファンの男性達がプリティエンジェルの出待ちをしていた。
そんな男性達を横目に仄香達は家路に着いた。