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第二話 不審な死

 深夜、病院内で一人の男性患者が亡くなった。 その男性は、深刻な病気もなく退院間近だったのだが、ベットの上で亡くなっているのを夜勤中の看護師が見つけた。

亡くなった原因を調べる為、先生達が集まり調べたが、原因が分からない。結論として、原因不明の謎の死だった。

ただ、亡くなった男性は、亡くなる前に何があったのか、男性の死に顔は恐怖に歪んだ顔をしていた。

男性の不審な死から次の日の深夜、今度は女性が 亡くなった。男性と同じように原因不明な最期だった。やはり、女性の死に顔も恐怖に歪んでいた。それから、連続で何人もの患者が不審な死をとげていった。

こんな事が続く為、病院長が警察に連絡し、警察が病院を調べる事になった。

警察が調べたが謎は謎のままだった。しかし、一つだけ分かった事がある。それは、不審な死を遂げた深夜に、いつも一人の看護師が勤務していた。その看護師は梶山真理子。二十歳の新人の看護師だ。真面目な性格だが、時々失敗してよく先輩の看護師に注意されることがあった。

 次の日、本庁から若手の刑事が指揮をとり聞き込みが開始された。

若手の刑事の名前は進藤 祐輔。二十一歳。

将来を約束されたエリートだ。祐輔は、これまでの状況などをくまなく看護師や入院患者から聞いて回った。そして不審な死をとげた人を確認して

「顔がみんな歪んでる? これは、もしかしたら人の仕業じゃないかもしれないな」

と呟いた。


 仄香も連続して不審な死が続く事に疑問を感じていた。いつも、深夜真理子が巡回していて第一発見者が真理子なのだ。 そして、今夜は真理子の夜勤の日だった。

その日の深夜、仄香は眠らず真理子が巡回に来るのを待っていた。

そして、深夜二時を過ぎた頃、仄香の病室のドアが開けられ真理子が入ってきた。

仄香は、気付かれないように寝た振りをして真理子が近づいてくるのを静かに待った。

真理子が近づき、仄香が寝ているのを確認してから、小声で

「今日は、あなたの番ですよ! さぁ、苦痛、恐怖に満ちた顔を私に見せてくださいね」

と、言った瞬間に薬剤の入っていない注射器を取り出して、仄香の腕を掴もうとした。

仄香は、それをかわして逆に真理子の腕を掴んだ。そして

「やっぱり、あなたが犯人なのね! どうして、何人も殺したの?」

と、真理子を睨み付けて言った。真理子は、驚いたが、すぐに冷静に戻り、仄香の手を振り払うと 「何だ、あなた起きてたのね。それなら、それでいいわ。あなたの恐怖に歪む顔を見せてちょうだい」

と、再び仄香に飛びかかり仄香は、左腕を掴まれた。薬剤の入っていない注射器の針が鈍く光る。仄香は、必死に抵抗を試みたが、女の人の力ではないすごく強い力で掴まれていて振り払う事が出来ない。

「さぁ、もっと恐怖を感じてください。私は、恐怖に歪む顔が大好きなの。早く見せてちょうだい。あはははは」

真理子は、気が狂ったかのように、高笑いをしながら注射器の針を一舐めして、仄香の腕に近づけた。仄香の腕に針の先端が当たった瞬間、仄香は 「私、このまま殺されちゃうの。夢で見たあの神様は何だったんだろう」 と、目をつむり思っていると、仄香の上の方から 炎が二つ真理子めがけて飛んできた。真理子は、炎を素早く飛んで交わした。すると、仄香の後ろで声がした。

「ちっ、外れやがったか。全くすばしっこい奴じゃなぁ」

「まぁ、ええやないですかぁ。ワテらのご主人は無事なんやさかい」

仄香は、何が起こったのか分からずにいたが、後ろを振り向いてみると、 犬の顔が二つあった。ただ、胴体は一つ。そして、背中には蝙蝠のような羽根がついてる生き物がいた。

その生き物が仄香の横にきた。仄香は、自分が危険だと言う事を忘れてその生き物を見ると

「か……可愛い」

と、顔が緩んだ。そんな仄香を見た生き物の一つの犬が

「何言っとんじゃ、ワレ。今は、そんな事どうでもええんじゃ。早くあの野郎を倒す方が先じゃ」と、仄香を睨み付けた。 もう一つの犬が

「まぁまぁ、ええやないのぅ~、可愛いって言ってくれはりましたやん。ワテは嬉しいわぁ」

と、仄香に顔を近づけて言った。仄香は

「あなた達喋れるだ。すごいね。で、あなた達は何物なの?」

「それは、後で説明しますさかいに今は、あいつを倒しましょうかぁ」

「とりあえず倒せってどうやって」

「ワレの右手に魔狩りの力が宿ってるはずじゃぁ、それを呼び起こしやがれ」

と、怖い口調の方にいわれた。

「呼び起こせって言われても……」

と、真理子の方を向くと 真理子の周りに黒い邪気のようなオーラが出ていた。そして

「貴様等、私を無視しやがって、許さない。ましてや、魔狩りの守護獣が来るとはな」

真理子は、さっきまで可愛らしい女性の声色だったのだが、だんだんとしゃがれきたない声色に変わっていた。そして

「そうか、わかったぞ。お前が魔狩りか」

と言った瞬間、真理子の顔にひびがはいり真理子の顔が崩れていった。そして、人間ではない緑色の顔が出てきた。目はギョロ目でこん棒をもった生き物に姿を変えた。

「ケッケッケ、我ら魔族に逆らうものは殺すまで。死んでもらうぞ」

と、こん棒を振り上げ仄香へと飛びかかった。

仄香はくるりと身を翻しかわした。そして、犬の頭の片方が口から炎を吐き、

「おめぇは、ゴブリンかぁ、低級魔族じゃねえかよ。さっさとくたばりやがれ」

と、もう一発ゴブリン目掛け炎を吐いた。

ゴブリンは、炎を何とか避けると、仄香目掛けこん棒を投げつけると、直ぐ様仄香に飛びかかった。仄香は飛んできたこん棒を交わすも、ゴブリンに掴まれてしまった。仄香は、どうすればいいか分からなかったが、殺されると思った瞬間、右手が光った。仄香は、無我夢中で光った右手でベット柵を持ちゴブリンに向かって振り下ろす。振り下ろしたベット柵が見事にゴブリンの頭に当たりゴブリンがよろけた。

そして、もう一回ゴブリンに向けてベット柵を振り下ろす。再び、ゴブリンの頭に炸裂して

「おのれぇ~、お前達、我ら魔族にはむかった事を後悔するがいい……また、我らの仲間がお前達を殺しにくるだろう」

と、言うとゴブリンの身体が黒い灰になり消えた。ゴブリンが消えて、仄香は力が抜けたのか、床へ座りこんだ。そんな仄香の横に来た、生き物が 「やっと倒しやがったか。全くなってねぇなぁ」 「まぁまぁ、ええやないですかぁ~、倒しはったんやから。お疲れでしたぁ」

と仄香に言った。仄香は 「あれが、魔族なんだ。訳が変わらないまま倒したの? ところであなた達は何物なのよ?」

「わてらですか? わてらは、魔狩りの守護獣ですわ。オルトロスって言いますぅ」

「オルトロス……どっちがオルちゃんで、どっちがトロちゃんなの?」

「はぁ、名前なんてどうでもいいんだよ。そんな事より、ワシらは魔狩り、つまりお前の守護獣って訳だ。これからは、お前とともに魔族どもを倒していくけぇ、ヨロシク頼むぞ」

「そうなんだ。よろしくね。私は、仄香。でも、名前は大切だよね。じゃ、怖い口調の方がオロちゃん、可愛い口調の方がトロちゃんって呼ぶね」 「オロちゃんって呼ぶんじゃねえ」

「ええやんかぁ~、わては気に入りましたえ。では、仄香はんよろしくなぁ」

「うん。よろしくね。トロちゃん」


 仄香が、真理子に化けていたゴブリンを倒してからは、病院で不審な出来事は無くなり、仄香も無事に退院することが出来た。


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