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第十三話 巨人現れる

 フェンリルとの激闘から二週間が過ぎていた。フェンリルに痛手を負わされた仄香の体も大分よくなってきていた。

沙耶華が

「仄香さん、大分よくなってきましたわね。でも、まだ完全じゃないのですからゆっくりしてくださいまし」

「ゆっくりしたいんだけど……いつまでも此処にいたら学校が……」

と、複雑な表情を浮かべた仄香に沙耶華が

「何言ってますの? 学校より仄香さんの体が大事なのですからゆっくりした方がいいですわ」

「いいのかなぁ~」

「勿論ですわ。私も此処にいますので学校行かなくても済みますし」

「やっぱ学校サボりたいだけじゃねぇかよ」

沙耶華に対して速攻でオルが突っ込んだ。

「何の事かしらぁ~」

沙耶華は、惚けたふりをした。

「まぁ、とにかくだ。仄香には、完全に回復してもらわねぇとな。この先もっと強敵が現れる可能性があるからな」

「そうだね。あのフェンリルよりもっと強敵が現れるかもしれないもんね。しっかり休養しなきゃだね」


 それから二週間が過ぎて仄香も完全に回復した。そろそろ別荘を後にしようとした時に、地震が起きた。

「何? 地震? 何か連続しておきてない。しかも段々と近づいてきているような気が……」

「仄香さん、大丈夫ですわよ。私の別荘は、耐震性はバッチリですから崩れる事はないはずですので」

と、沙耶華は胸を張って言った。

「そんな事はどうでもええ~。窓の外見てみろ」と、オルが沙耶華にツッコミを入れつつ皆に窓の外を見るように促した。 オルに促され仄香達が窓の外に目をやると信じられないような物が動いていた。

「何あれ? 間違いなく歩いてるよね? ね、オルちゃん?」

仄香は信じられないといった表情でオルトロスを見た。

「ああ。あれは間違いなく歩いてこっちに向かって来てるな……というか、あれは巨人だぞ……もしかして……」

「どうしたの? オルちゃん?」

「仄香、あれはトールという魔族かもしれん」

「えっ、魔族なの?」

「ああ、もし、トールだったら厄介だな……」

巨人はゆっくりと地響きを鳴らしながら仄香達のいる別荘のところで止まり、腰を下ろした。そして、大きな手で器用にドアをノックした。

仄香は、恐る恐るドアを開けると白く長い顎髭が目立ち、左手には大きなハンマーを持った巨人が「ちょっと尋ねたいんじゃが、此処にの仄香っちゅう娘がいると聞いて来たんじゃが知らんかのぅ~?」

「仄香なら私ですけど……何か?」

「ほう、お前さんが仄香っちゅう娘かね。やっとこさ会えて嬉しいぞい」と、言って立ち上がり

「これは、挨拶じゃ」

と言って、大きなハンマーで別荘ごと叩いた。ハンマーが地面に触れた瞬間、どっからともなく雷が落ちた。

沙耶華の別荘はあっという間に崩れ廃墟と化してしまった。仄香は、別荘が崩れ落ちる前にオルトロスが仄香の服を噛み空へと避難していた。「ありがと、オルちゃんトロちゃん」

「構しません、しかし、見事に別荘がペシャンコですなぁ~」

「本当だね……」

と、安堵の溜め息をついている頃、廃墟化した別荘を見つめる沙耶華達が 「わ……私の別荘が……耐震性に優れていたはずの別荘が……ペシャンコになってしまいましたわぁ~。どうしましょう」 廃墟化した別荘を見ながら肩を落としてる沙耶華にキマイラが

「沙耶華、気を落とすニャ。また、建てればいいんニャ」

「フッ、そうだよ。沙耶華。君はお金をたくさん持ってるじゃないのかい。別荘を建て直すお金ぐらいは余裕であるだろうに」

と、キマイラに言われ肩を落としてた沙耶華が

「そ……そうですわよね。私はお金ならたくさんありますし、もっと大きくて頑丈な別荘を建ててもらいますわ。お~ほっほっ!」

「さっすが、沙耶華立ち直るの早いニャ」

「フッ、沙耶華はそうでなくちゃね」

と、談笑していると、オルが

「テ、テメェ等~、こっち手伝えや。今、そんなくだらねぇ話してんじゃねぇ~」

と、沙耶華達に言った。

「まぁ~、私にとっては一大事ですのに。仕方ないですわね、キマちゃん、イラちゃん行きますわよ」

と、沙耶華はキマイラに乗り仄香達の元へ向かった。

仄香は、巨人と向かい合い様子を見ていた。

「オルちゃん、この人やっぱり魔族なんだよね?」「間違いねぇ~、こいつはトールだ。仄香、あいつのハンマーだけには気をつけろよ」

「うん、分かった」

と、仄香はトールのハンマーをチラッと見た。

トールは大きい体をゆっくり起こしながら

「よっこらせぇ~、さすが若いだけあって動きが早いのう。じゃが」

と、言いながらハンマーを再び仄香に向けて振り下ろす。仄香達は、ハンマーを避けると、オルが 「コイツ、巨体のくせに中身はジジイじゃし、動きが遅ぇ、体制を立て直してる時が反撃のチャンスだな。いいか、仄香! アイツが体制立て直してる時に突っ込むぞ」

「うん、分かったよ。タイミングはオルちゃんトロちゃんに任せるから」トールは、振り下ろしたハンマーを持ち上げ体制を直そうとした時に、オルが

「今じゃ、行くぞ」

と、言うと直ぐ様トールが体を起こしている最中に突っ込んだ。

仄香も、突っ込んでいる最中に

「神より与えられし魔狩りの力よ我が右手に宿りたまえ」

と、呪文を唱えグングニルを右手に持ち構えた。 しかし、トールは慌てた仕草もなく、悠々と

「がははは、まだまだ若いのぅ~! 儂はお主等より長く生きておるのでな、そんな作戦はお見通しじゃて、年の功より亀の功じゃ」

と、突っ込んで来ている仄香達に再びハンマーを振る。仄香達は、間一髪避けたが、作戦も破られ打つ手なしだった。

「おや、もう終いかいの? 仄香とやら、もう少し儂にお前さんの実力を見せてくれんかのぅ」

と、挑発した。

仄香達は、挑発されて

「くそったれがぁ~、あのジジイなめやがって! ただじゃおかねぇ~」「ホンマやで、ワテ等を本気で怒らすと痛い目にあわすで」

と、オルトロスは頭に四つ角を作り怒っていた。 オルトロスは、トールに向かって炎を吐いた。

しかし、トールに届く前に炎は消えた。トールが息を炎に吹き掛け消してのだ。

「にゃろ~、とことんバカにしやがって。トロ、久々にあれやるか?」

「そやね。やるしかないやろ」

オルトロスは仄香を降ろし、その後上空高く舞い上がりオルとトロは同時に大きく息を吸い込み、一斉に炎を吐いた。先程の炎とは桁違いに大きい二つの炎が重なり空中に大きな火柱が出来ていた。それが、トールに向かって一直線に向かって行く。トールは、これはと言わんばかりに身構え、ハンマーを構えた。

火柱は、トールに命中した。

爆発し煙が舞う中、オルトロスが

「ワシらのフレアランスを受けて助かった奴はおらん。これで終わったじゃろう」

と、言った。

しかし、煙の中

「がはは、なかなかやりおるのぅ~、今のはちとヤバかったわ」

と、トールが煙の中から言った。トールは、オルトロスが放ったフレアランスが命中する前ハンマーで防いでいたのだ。

「嘘やろ……ワテ等のフレアランスが効かんやなんて……」

やがて煙が消え、トールの姿が見えた。トールは体に傷一つなくピンピンしていた。トールは、自慢の顎髭をさすりながら 「がはは、さて今度はこっちの番かの。では、行くぞい」

と、言ったがトールは髭に違和感を感じていた。 「ん、儂の髭……なんと~、こ……焦げてる……儂の自慢のキューティクルがぁ~」

と、トールは膝を落とし落胆していた。

「仄香とやら、すまんが一旦休戦じゃ。また、一週間後にの」

と、言って地響きをあげながらトールは帰っていった。

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