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2-3.略奪者とレオ

レオはアーヴィンの後を追いながら、息を整えた。

「助かったぜ…恩に着る。追ってきてるのは二人組の冒険者、お前の言う略奪者だよ」


「一応聞く。何しにここへ来た」

視線を向ける事なく放つアーヴィン。


二人の身長程の木の根。その隙間をくぐりながらレオは言う。

「ん?あぁ、ギフトを探しにだよ。俺を含めた5人のパーティだった。この土地には以前から災厄が起こってただろ?そこらの冒険者は危険過ぎて寄り付かないってんで腕に覚えのあるやつが集まって出稼ぎって訳。けど…」


アーヴィンは黙って耳を向けていた。


「ギフトが見つかった途端、リーダー格のヴァルガスって奴と、サージって野郎が

仲間2人を殺しちまって…。」


少し歩みを早める。

悔しそうに顔を下向けるレオをほんの一瞬だけ見て口を開く。

「次はお前って訳か。下らない争いだな。」


「お前から見ればそうかもな…、ただ他の奴らは知らんが俺も好きでこんな危険地帯に来た訳じゃない。…俺にはどうしてもギフトが必要なんだ。」

そう話すレオの顔つきから、アーヴィンは彼から何か、信念のようなものを感じた。


察しの良いアーヴィンは言う。

「で、追われてるって事は、そのギフト、お前が持ってるんだな。」


「そういう事。今も持ってるぜ。俺達の見つけたギフトはこれだった。大陸じゃほとんど見かけない宝石の類だ、金になりそうだろ?」レオは懐から小さなボックスを取り出し、中を見せた。そこには美しい宝石が散りばめられたアクセサリーが詰まっていた。


こちらが聞く前にギフトを見せるあたり、俺に対しての警戒心はまるでない事がわかる。


「…なるほどな、そりゃ追われる訳だ。お前、それが必要なんだよな?俺に簡単に見せていいのか?」


「あん?弓構えて俺に問いかけた時点でお前は悪いやつじゃないよ。さっきのあの瞬間、命を狙うのが目的なら俺はもう死んでるし、ギフトが狙いなら殺して身ぐるみ剥がせばよっかったんだからな。」


内心、面食らってしまったのはアーヴィンだった。

先ほどまで焦っていたレオという男は意外にも勘が鋭く、頭の回る男なのだった。


彼らが進む先には、レオ達が先ほどまでいた場所とはまた別の災厄跡地が広がっていた。

そこは一見、静かで安全そうに見えた。


地面から大きな岩がいくつもでている場所を屋根に、二人は息を整える程度の休憩を取る。

「レオって言ったな。これからどうする。」


「そりゃ、このままあいつらを引き離せるなら、さっさと森を出たいぜ。」

こいつからすれば、それはそうだろう。アーヴィンの顔が曇りそうになった。


「と、言いたいところだけど、あいつ等はこのまま放っておけない。向こうもジリ貧のはずだ、体制を整えたらこっちから出迎えてやる。」

レオは掌と拳を合わせる。


「それにお前、その身のこなしでわかる。この森の人間なんだろ?

そんなヤツに命助けてもらっておいて、人殺しの二人組をここに置いていくなんてしたら、例え助かったって寝ざめが悪くなるぜ。…ここまでありがとな。」

体にできた傷を確認しながら、肩を一回、大きく回す。


驚いた。どうやらこの男、一人で略奪者相手に立ち向かう気概らしい。

しかし諦めている節はまったく無く、怯えや恐怖といったものも感じない。

戦って、勝つつもりなのだ。この男は本当に戦士なのだ。と、アーヴィンは思った。


「おい。」

アーヴィンはレオに向かって布袋を投げる。

「食え。少しだが痛みがマシになる。」


「お、おう、すまん、助かる。」

布袋を開いたその中には、乾燥させた丸い木の実が入っていた。

見た事もないその実をレオは口にいれ奥歯で噛んだ。


噛んだ瞬間を見計らったかのようにアーヴィンが言う。

「うまくはないぞ。」


時すでに遅し。レオの口内は電撃が走ったように渋みと苦味が広がった。

「お前これ…毒だろ…こんなまずいもん初めて食ったぞ…」


「目も覚めて、いい気付けになったろ?」と少しだけ微笑み、そして彼は決めた。


「俺はアーヴィン。その略奪者、捕まえて大陸に送り返すとこまで手伝ってやるよ。」

彼は弓に掛かる弦を調整しながらレオに向き直った。


その言葉を聞き、レオは口内の強烈な苦味も忘れてキョトンとしてしまう。

「なっ…い、いいのか?」


アーヴィンは弦の調整を終え、次に矢じりの本数を数えながら言う。

「お前の言う通り、略奪者をこの森にそのままにしておく事はできない。

放っておいてこの森で死ぬのは勝手だが、手練れなんだろ?下手に生き延びられちゃ困るからな。

お前が前衛、俺が視界の外から弓で援護するって事でいいか?」


そうして、ちらりと覗いたレオは納得の顔で頷いた。


アーヴィンとレオは休憩を終え、次の行動を考えていると、遠くから複数の足音が聞こえてきた。アーヴィンは瞬時に反応し、レオに静かにするようジェスチャーを送る。


「来るぞ。あいつらだ。」アーヴィンは低く囁いた。


耳がいいなんてものではない、レオにはまったく聞こえなかった。

「どこから?」レオも身を伏せながら、すぐに反応する。


「あっちの方角だ。足音が二つ聞こえた。」

ハンドシグナルでその方向を指す。


二人は一瞬のアイコンタクトを取り散開した。

岩を盾に各々で身を隠し、息を潜め、相手の動きを伺う。


迫る脅威は目の前まできているのを二人は肌で感じるのであった―――


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