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6-1.精霊の導き

 黒風の穢れを倒したアーヴィン達の前に姿を現したそれは、風の精霊と名乗った。


———私の名はニュン。この森を守護をしている風の精霊です。


そう名乗った精霊は、ゆらりと宙に浮いていた。

アーヴィン達は突然の出来事に一度は警戒態勢を取ったものの、

その姿や取り巻く空気が先程まで激闘を繰り広げた黒風の穢れのそれとはまったく違うものだと悟った。


———この森に溜まっていた多くの穢れのせいで、長らく私の力は封じられていました。

ですが、あなた達のお陰で、本来の力を取り戻す事ができました。


リセルが驚いた表情で精霊と名乗るものに向かい口を開く。

「精霊…精霊が顕現するなんて…よほどの事じゃない限りありえない事よ…」


突如現れた風の精霊と名乗る者は、四人を見据えながら続ける。


———あなた達が倒したのは、『穢れの集合体」…この地の穢れ全てが集まったものです。


「どうしてあんなのが急に出てきたんだよ…!」

レオは体をタビーに支えられながら言う。


———本来この森、この島は、豊かな緑で溢れる、美しい場所でした。

ですが数百年前からこの一帯で災厄が立て続けに起り、異常なほどの穢れが森を侵していきました。

そうして出来上がったのが、あなた達の呼び方でいう『ヤマタの森』なのです。

さらに、昨日の大きな災厄…あれによって生まれた凄まじい量の穢れが、

私の体を元にして集まり、出来上がった魔物…それが穢れの集合体なのです。


「だから風を纏っていたのか…」アーヴィンが驚きの声を上げる。


ニュンは悲しげに憂うように頷く。


———多くの穢れが一度に私の体に入った事であのような事態に。ですが、あなたたちのおかげで再び正気を取り戻し、精霊として蘇ることができました。


「じゃあ、この森は…?」

アーヴィンは未だ信じられない様子でニュンを見つめていた。


———はい、私がこうして蘇る事ができた事で、この森は元の、本来の姿を取り戻しつつあります。でもその前に…


ニュンは優しく答えた。そして掌を押し出すように風を送り出す。

先ほどまで見ていた赤黒いそれではなく、淡い緑色の穏やかな風が四人を包む。


すると四人から流れていた血が止まり、徐々にかさぶたになっていく。

満身創痍だった体力が活力と共に湧き上がってくる感覚が駆け巡る。


精霊の送った風が四人の傷を癒し、体力を戻す。


アーヴィンは自分の掌を見ながら呟く。

「凄い…体が元に、戻っていく。」


「うわ、あったけぇ…」

大きな怪我こそしていなかったが体力を使い切っていたタビーも同様に言う。


全身が切り刻まれていたリセルに至っては傷と呼べるものは全て治っていた。

「傷が塞がっていく…凄いわ…。」


「いてて…おい、腕は治んないのかよぉ…」

レオだけは腕の骨は治っていないものの、それでも自力で立ち上がれる程に回復していた。


———ある程度の回復と治癒力を高める風を送りました。

残念ながらレオ、あなたの腕は折れていますね…。一般的な治療よりは遥かに治りは速まると思いますが、今はこれが精一杯。ごめんなさい。


「…まぁ治りがはえーならそれに越したこたないよ。ありがとな。」


四人の警戒は徐々に解けていく。

優しく微笑んだニュンは、次に自身の体の周りに風を集め始める。


———では、先にすべき事を済ませましょう。


ニュンはさらに自身の体の周りに風を集め、深い呼吸を一つした。

踊り子の舞のように空中で手を仰ぐ。

優しくも力強い風がニュンを中心に森全体に広がり始めた。


風が木々を揺らし、葉をさわさわと鳴らし、地面に生えている苔の下から、この森では咲くことが許されなかった色とりどりの花たち。

それが新たな生命として息吹を吹き込こまれていく。

緑が一気に広がり、今まで芽を出していなかった植物たちが活力を取り戻す様子は、まさに奇跡と言える光景だった。動物たちもその変化に反応し、巣から顔を出し、森の中を元気に駆け回り始める。


森は、これまでの暗い雰囲気から一転して、生命力に満ちた場所へと変わっていった。

新鮮な空気が鼻孔をくすぐり、鳥たちのさえずりが聞こえ始めた。


その様子を見ていたアーヴィン、タビー、レオ、リセルの四人は、その驚きと感動を隠せずにいた。


「こんなことが…本当に起こるなんて…」

リセルが呟き、信じられないという表情を浮かべていた。

レオはただ呆然とその光景を見つめ、タビーは目を見開いて驚いていた。

アーヴィンもまた、森が蘇る様子を目の当たりにして言葉を失っていた。


———これが、この森の姿…アーヴィン、レオ、リセル、そしてオクイタビヒト、この森を救ってくれてありがとう。


ニュンの声が風に乗って四人の耳に届いた。彼女の感謝の言葉は、森全体に響き渡るようだった。ニュンは舞を終え、四人の前で浮かんでいた。

彼女の表情には感謝と喜びが溢れていた。


———あなた達のおかげで、私は再び、この森を守ることができます。長きに渡り、穢れの蓄積によって力を封じられていましたが、今こうして解放されたのは、皆さんのおかげです。これからは私の力を持って、この森が豊かであり続けるよう守護していきましょう。


精霊は語り掛け、その場にいる皆を慈しむように見ていた。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


ついに、黒風の穢れとの戦いが終わり、風の精霊ニュンが姿を現しました。

この戦いは、アーヴィンたちにとってただの勝利ではなく、世界の成り立ちや穢れの本質に触れる大きな転機となるものだったと思います。


ニュンの存在は、この世界のバランスを象徴するものの一つ。

災厄によって穢れが生まれ、精霊たちがその影響を受けていたという事実が明らかになり、これからの旅の目的も少しずつ見えてきました。


そして、ヤマタの森は本来の姿を取り戻し、新たな生命が芽吹く――

戦いの終わりが、ただの「勝利」ではなく、世界が癒されていく瞬間として描けたのなら嬉しいです。


次回からは、新たな旅立ちの準備が始まります!

穢れを呼び込む特異体質を持つアーヴィンは、この村に長く留まることができません。

それでも、村を離れることへの葛藤や、ユカレイの容態など、まだまだ課題は残っています。

それらを乗り越え、アーヴィンたちがどのように次の一歩を踏み出していくのか、

ぜひ見届けてください!


ここまで読んでくださった皆様、感想や評価をいただけるととても励みになります!

では、次回もよろしくお願いします!

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