表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/22

5-2.勇気の引き金

決意を新たにしたアーヴィンとタビー。


黒風の穢れはタビーを追従しているかのようにゆっくりと、だが確実に迫ってくる。

その異形の姿は最初に見た時よりも、さらに赤く染まっており、

それが不気味さをさらに引き立てていた。

依然、風の障壁がその周りを取り囲んでいる。


「アーヴィン、あいつ…俺を狙ってるやんな!?…なんで…なんでやろう…!」

タビーは不安を隠せずに言った。


「落ち着けタビー。確かに、見ている限り村じゃなく、タビーの方に向かってるな。レオと師匠が足止めをしている間に、何か手を考えよう。」

アーヴィンは周囲の状況を見渡しながら言った。


アーヴィンは一度、冷静に昨夜の事を思い返した。

あの時の鮮烈な記憶が蘇る。

「タビー、昨夜のことを思い出したんだ。気を失っているタビーがあいつに攻撃されそうになった時、小さい本が落ちて、あいつ、それを見て一瞬動きを止めたんだ。」


「小さい本って…ん…学生手帳か?」


アーヴィンは深く頷いた。

「うん、ガクセイテチョウ?それかな。昨日逃げる時に流れで拾ってはいるんだ、ほら、今もここにある。」アーヴィンは学生手帳を取り出した。


「俺も驚いたぞ、こんな綺麗な絵を描ける人は見た事ない。この絵に描かれてるのタビーだろ?」


「絵…?いやちゃうねん。これは何て言うたら…そう!これもギフトの力って言えばわかるかな…その場の物とか人とかを鮮明に残す技術みたいな?」


「ギフトの技術なのかこれ…。凄いな…。とにかく、その絵があいつの足を止めたのは間違いないと思う。」


「絵やないんやけど…。まぁええか。これ俺と俺の友達が写ってるだけなんやけどな…」


「じゃあ、どうすればいい?」タビーは不安そうに尋ねる。


「まずは、レオと師匠が時間を稼いでくれている間に、このシャシン?で黒風の穢れがもう一度反応する方法を考える。近寄る為になにか工夫も必要かもしれない。」

アーヴィンは冷静に考えながら言った。


「そうやな。それが何かの鍵になるなら、うまく使ってみてや。」

タビーはアーヴィンに学生手帳を託し、強く頷いた。


レオとリセルが必死に黒風の穢れを引きつける中、

アーヴィンとタビーは作戦を二人にも伝える。黒風の穢れが再び動き始め、

タビーの方に向かって歩み始める。


「師匠!レオ!!もう少しだけ時間を稼いでくれ!」

アーヴィンが叫び、彼らに合図を送った。


「わかった、でも出来るだけ早く頼むぞ!こいつ徐々に一撃の威力が上がってる!」

レオが力強く答え、リセルも頷いて再び攻撃を繰り出した。


アーヴィンは学生手帳の写真が何かの手がかりになると信じ、懐に手帳を収めた。

二人は黒風の穢れに立ち向かう準備を整える。


レオとリセルは全力で黒風の穢れに攻撃を仕掛ける。

レオのハンマーが重く振り下ろされ、岩を砕き石つぶてのように飛ばす。

リセルも渾身の矢を放ち、二人の連撃で、黒風の穢れは一瞬後退する。


「リセルさん!」レオが叫び、リセルは素早く次の矢を番える。


「任せて!」リセルは狙いを定め、矢を放った。


矢は空気を切り裂き、一直線に黒風の穢れに向かって飛んでいった。

レオのハンマーが叩きつけた衝撃で生まれた石つぶてが、矢と共に黒風の穢れに襲いかかる。


だがその刹那、黒風の穢れが身を翻し、赤黒い風の衝撃波をカウンターのように放つ。

その動きはタイミングを合わせたかのように一瞬で、レオとリセルの攻撃を迎撃するために予測され、完璧に計算されていた。


「レオ、師匠!!!」アーヴィンは叫びながら二人の元へ向かう。

衝撃波に倒れた二人は、リセルは全身に裂傷を負い、直撃を受けたレオは吹き飛ばされた拍子に岩に激突、腕があらぬ方向に曲がっている。


タビーは一部始終を見ていた。レオとリセルが再起不能である事を悟る。

アーヴィンと話していた時の昂った気持ちが一気に冷め、足元から恐怖の蔦が絡まってくる。


―――やばい、やば過ぎる…。


汗が吹き出し、額をつたう。

タビーは銃を構え直し、その異形に向かって再び引き金を引こうとする。

だが、その瞬間、黒風の穢れから再び悍ましい声が聞こえてくる。


「憎イ…オクイクン…憎イ憎イ…タ…ケウチク…ン…ゲン…キ…?憎イ…憎イ…」

タビーの全身に戦慄が走った。何故知っている。自分の名前が呼ばれ、その声には明らかな敵意、

憎しみが込められていた。彼は動揺し、銃を構えたまま立ち尽くす。


「ど、どういうことや…なんで名前…」


その時、アーヴィンが叫ぶ。

「タビー、しっかりしろ!今しかないんだ!」


レオとリセルの二人がまだ生きている事を確認できたアーヴィンは、

黒風の穢れに向かって駆け出す。


「いいかげんに…止まれよぉぉ!!!」


彼は全力で黒風の穢れの背後に飛びつき、手に持った矢で首に何度も刺す。

黒風の穢れは呻き声を上げながら体を捻りアーヴィンを振り落とそうとする。


必死にしがみつくアーヴィン。懐から取り出した学生手帳を手にする。

「これで…止まってくれぇえ!!」


矢を刺して開けた小さな傷口に、アーヴィンは学生手帳を黒風の穢れに捻じ込んだ。

アーヴィンは背後を離れなんとか態勢を整え着地する。


途端、黒風の穢れは突如として動きを止め、膝をつく。

異形の顔が苦しそうに歪み、赤い涙が流れ出す。

風の障壁が消え去り、力なく片刃の腕も地面に落ちる。

その異様な力が失われたように見えた。


「アーヴィン、や、やったのか…?」


今回も読んでいただき、ありがとうございます!


今回はレオとリセルの共闘が大きな見どころとなる回でした。二人の連携と、

仲間を守るために全力で戦う姿は、アーヴィンやタビーにとっても大きな支えになったはずです。

しかし、黒風の穢れは簡単には倒れてくれません。

彼らの力をもってしても、圧倒的な強さに苦戦を強いられました。


そして、タビーも再び銃を手に取り、恐怖を乗り越えようと奮闘しています。

アーヴィンとタビーの連携が、果たしてこの状況をどう打開していくのか――。


次回、いよいよ黒風の穢れとの戦いはクライマックスを迎えます。お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ