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4-4.穢れ、襲来

 タビーは、その手に持った四四式騎銃のグリップ部分をしっかりと握りしめる。

技術書の入っていた木箱の中には弾薬も綺麗な状態で収まっていた。

手の中にあるこのギフトが、アーヴィン達の役に立つことを信じて、彼は準備を整え始めた。



―――



再び矢が放たれた。

村人達の放った矢は、一斉に黒風の穢れに向かって飛んでいく。

アーヴィンとリセルもそれぞれの方向から狙いを定める。

放たれた矢のほとんどは風の障壁を受け、地面へと落ちていってしまう。


リセルはアーヴィンに合わせる為、対角に移動しながら矢を準備する。

二人で黒風の穢れを挟む形だ。

そして、アーヴィンは木の上から渾身の一矢を放つ。


「師匠っ、今です!!!」


アーヴィンの放った矢は弧を描かず、一直線に黒風の穢れに突き進んだ。


リセルのいる位置から見て、黒風の穢れとアーヴィンとの間には大きな距離がある。

つまり、同時に矢を着弾させる為には、放たれた場所から届くまでの距離を把握し、

矢が的に届くまでの時間を計算し、合わせるように距離を詰めながら二矢目を放つ事になる。


並みの弓使いができるような芸当ではない。

そもそも一度射られた矢の速度を見ながら、走り込んでタイミングを調節する等、神業と言っていいだろう。


しかし、ダークエルフの弓術、リセルの身体能力は並みではなかった。

師匠は伊達では無かった。そう、リセルの『合わせ』は、まさに神業だった。


アーヴィンの放った矢をちらりと見るや否や、脱兎の如く走り込む。

同時に弓を引き絞り、弟子の掛け声に合わせ、リセルは目を見開いた。

弟子の放った矢を見ながら、自身の放つ矢の狙いを定め、同時に当たるようタイミングを計る。


―――ここっ…!


二人の連携は見事という他無かった。

放たれた二つの矢は黒風の穢れの左右を完璧なタイミングで同時に襲い掛かった。


だが、それまで風の盾で防御していた黒風の穢れは、接近したリセルに突如反応した。

纏っていた風を、手に集中させ片刃を振る。

先程までと違い壁で防御するのではなく、自身の武器で薙ぎ払おうとしていた。


アーヴィンの放った矢は、黒風の穢れの左側面へ、だがこの矢は素早く振り下ろされた片刃の阻まれ、折れた矢は無常にも地面へ落ちる。


しかし、リセルの放った矢は黒風の穢れの右側面、あの残酷な片刃の腕の肩部分に命中した。黒風の穢れの動きが一瞬止まる。


「当たった…!でも…」

風の片刃に切り替わり、アーヴィンの矢を落としたその手でそのまま攻撃に転じるのだと理解した瞬間、リセルは危険を察知。

流麗なる狩猟者は咄嗟にバックステップした。



「レオ!!!合わせろっ!!」アーヴィンは咄嗟に叫ぶ。


その瞬間を逃さず、待ってましたとレオが大きなハンマーを振り上げ、リセルとスイッチ。

バックステップするリセルと交代する形で突進した。


しかし、寸前のところで黒風の穢れは再び風を巻き起こし、その風を右手に集中させ、レオの攻撃をかわし、逆に彼を吹き飛ばした。レオは地面に叩きつけられたが、すぐに立ち上がって再び攻撃の構えを取る。


「流石に俺のハンマーは切れねーだろっ…!」

レオは体制を整え、息を切らしながら言った。


アーヴィンは観察を怠らない。

風の壁はあらゆる攻撃を弾くが、その風が腕に集中している時、それが攻撃のタイミングなのだと。

「これでわかった。こいつ、防御と攻撃を同時に行えないみたいだぞ…!」



「皆、体制を整える!攻撃の手を休めるなっ!!」

ユカレイの声が後方から聞こえてくる。


現場に到着した彼は、状況を素早く把握すると、アーヴィンに指示を出す。


「アーヴィン、お前たちはもう一度同時攻撃の準備を。接近できる準備ができるまで風の障壁を出させて時間を稼ごう。私は村人たちの指示に回る!」


「わかった、じっちゃん!師匠、じっちゃんを頼みます!」

アーヴィンは頷き、別のポイントへ素早く移動した。


リセルはユカレイの護衛のために合流し、そのまま行動を共にする。

レオはその間、前線で黒風の穢れを引きつけていた。


黒風の穢れは村の入口近くまで接近していた。村人達の攻撃は跳ね返され、次々と返り討ちに遭っていた。それでも彼らは諦めず、再び立ち上がって挑みかかり、時間を稼ぐ。


「レオ!カリム!もう一度いけるかっ!」

アーヴィンの声に応じて、レオとカリムは構えを取る。

弓兵たちが援護の矢を放ち、黒風の穢れに対抗した。



アーヴィンの声が聞こえた。

レオはカリムと前線に立ち、黒風の穢れが纏う風の障壁を外すために攻撃を試みた。

レオが攻撃を担当、カリムは防御担当として連携する。


「カリム、俺が打ち下ろしたらすぐに盾を出してくれ!」


「わかりました!!」


レオがハンマーを振りかぶり、全力で振り下ろすと同時に、カリムが片手剣と盾で防御の構えを取る。

ハンマーの重たい一撃に、風の障壁は反応し、障壁から小さな風の刃が発生した。

その刃は彼のハンマーに当たりはしたが、レオ自身にまでは届かない。


彼を庇うようにカリムが前に出る。盾を構え、障壁からの反撃を受けとめる。

片方の手に持っている剣で刺突するが、こちらもハンマー同様に弾かれてしまう。

どちらの攻撃も弾かれてしまったが、風の障壁が薄くなったように二人は感じた。


「くそっ、力技では難しいか…!」


黒風の穢れは一瞬動きが止めたが、すぐに再び防御の風を纏い始めた。

一度距離を取る二人。


レオが叫ぶ。

「アーヴィン!ダメだ!風が邪魔過ぎる!今の俺達の力だけで壁を打ち消すのは無理だ!!…俺とカリムで囮になる!!風が手に集まったら矢を撃ってくれ!!」


アーヴィンは彼の発案に、乗り気にはなれなかった。

サージが惨殺する所を見ていた彼からすれば、味方を囮に使う等考えてもいなかったのだ。

だが、それでも黒風の穢れの肩に刺さったリセルの放った矢を見て、レオの発案を飲む他ない事も認めなくない事実であった。


「…わかった!!レオ、カリム、頼む!ヤツが攻撃に転じたらすぐに引けよ!!」

ミスは許されない、一歩間違ったら二人は死んでしまうだろう。

アーヴィンは二人を信じて次の矢を番えた。


レオとカリムは互いに目配せをしてから、黒風の穢れに向かって接近した。

レオが大きなハンマーを振りかぶり、カリムが盾を前面に構えて前進する。

その姿はあえて隙を見せることで黒風の穢れを誘い出そうとしていた。



「…アーヴィン、外すなよ…!」

今回も読んで頂きありがとうございます!

いよいよ黒風の穢れとの戦いが激化する展開となって参りました。

リセルとアーヴィンの連携射撃、レオとカリムの囮戦術と、

各キャラクターの持ち味を活かした戦闘シーンを意識しました。


そして、ついにタビーも行動を起こす準備を始めました。

彼が手にした四四式騎銃が、この戦いにどのような影響を与えるのか…⁉


次回、ついに決着編へ!

ぜひ続きをお楽しみに!


ブックマークや評価、感想をいただけるととっても励みになります!

皆さんの応援がこの物語をさらに前へ進める力になります!

また次回もよろしくお願いします!

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