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4-3.穢れ、襲来

 彼らの前方には黒風の穢れが不気味に漂っていた。

その周囲には赤黒い霧が渦を巻き、まるで生き物のように動いている。

アーヴィンはその姿を見つめながら、心の中で決意を新たにした。

ここで止めなければならない。村と仲間たちを守るためには、どんな犠牲も厭わない。


「全員、矢を放て!」リセルの声が響き渡り、弓兵たちは一斉に矢を放った。

矢は一直線に黒風の穢れに向かって飛んでいったが、黒風の穢れの目前で、風の障壁に阻まれ、軌道を逸らされてしまう。


「くそ、風が邪魔をしている!」アーヴィンが叫ぶ。


黒風の穢れは風の障壁をまとい、五月雨に放たれた矢は次々と跳ね返されていった。

リセルはその様子を冷静に観察し、次の手を考える。

彼女は再び矢を番え、狙いを定めた。


「アーヴィン、次は皆の一斉攻撃に合わせて、私達で同時に別方向から撃つ。できるわね。私に合わせて。」

リセルは決意を込めて言った。


アーヴィンは頷き、弓を引き絞った。「わかった!全員、次の合図で一斉に攻撃を仕掛けるぞ!」


村の防衛ラインに立つ者たちは、それぞれが己の力を振り絞っている。

風が強まり、黒風の穢れの姿が一層不気味に浮かび上がる。


歩みの止まらない黒風の穢れ。緊張の糸が張り詰める中、アーヴィンの声が響いた。


「…次の矢を放つ!…今だ!」



―――



タビーの頭の中ではユカレイの言葉を反芻していた。

このままじっとしていても、当然ながら元の世界に帰る事はできない。

それはタビーも理解していた。


あの化け物に対して自分が何かできるとは到底思えない。

でも逃げる場所も、行く当てもない。

俺はこの世界に来たばっかで、何もわからんくて、何もできなくて当然で。


―――当然、か?


ユカレイとリセルの言葉が、昨夜のアーヴィン達の優しさが、この世界に来てからの彼の唯一の拠り所になっている事も事実だった。

初めて会った知らない人達。

それは向こうも同じ。なのに介抱してくれて、食事を作ってくれて、今も守られている。


『俺もこの森で本当にピンチだった時、アーヴィンに助けられた。今はお前がピンチなんだろ?何かの縁だ。次は俺がお前を助けてやるよ!』そう言っていたレオの言葉を思い出す。



―――昨日助けてもらった分は、せめて何か返さな…。


人として、生きている者として、自分ができる事を考えなければならない。

タビーはそう思い立つ事が今やっとできた。


そうして一度、ゆっくりと家の中を見回した。

彼は部屋の隅にある古びた木箱に目を止め、その中に何が入っているのか興味を引かれた。箱を開けると、中には様々な武器や防具が雑然と詰め込まれていた。


彼は一つ一つのアイテムを手に取り、確認していった。

古びた剣、磨かれた盾、使い込まれた鎧。これらの道具は、どれも見たことのない異世界のものだった。

タビーはそれらを手に取るたびに、その重さや質感を感じ、ここでの生活や戦いの現実感が増していくのを感じた。


「剣と盾…俺に使えるか…?」自問自答、彼は呟きながら、古びた剣を手に取ってみた。

使い込まれたその剣は重く、タビーはその重みを感じながら再び木箱に戻した。

次に取り出したのは磨かれた盾。これもまた異世界のものに違いなかった。


ふと、彼の手がこの世界では見慣れない形の物体に触れた。

興味を引かれ、それを慎重に取り出してみると、それは二丁の銃だった。

一方は銃身が曲がり、ストック部分が破損していて見た限り使えないことがわかる。


しかし、もう一方のそれは似たような形でありながら、ライフルの銃身に刺突用の剣先が付いている、所謂銃剣と呼ばれるものだった。

それは素人目に見ても保存状態がいいものだった。

現代的なデザインの銃ではないが、ライフルと呼ばれる種類の銃で、明らかにこの世界のものではないことがわかった。


「…銃…剣…?これ、使えんのか?」

まじまじと見ながら、驚きの声が漏れる。


彼はその銃の一つを手に取り、じっくりと観察した。銃身に家紋のような刻印があり、彼はそれをじっと見つめた。


「これ、ギフトって事なんよな…」

タビーはその銃が、自分のいた現実世界からもたらされたギフトであることを確信した。


手の中で感じるその重みと、精巧に作られたデザインが不思議な安堵感をもたらしてくれた。


「これでなら…何かできるかも…」タビーは自分にそう言い聞かせた。


銃を手にしつつ、そのまま木箱の中をさらに探っていると、一冊の本が目に入った。それを取り出し、表紙を確認すると、それは武器の技術仕様書だった。

ページをめくると、そこには発見した銃の詳細な図解が記されていた。


「日本陸軍…四四式騎銃ってのか…」タビーはその名前を口にしながら、技術書の内容を確認した。

彼の趣味はバイクの整備だったため、技術書を読むことに抵抗はなく、むしろ興味深く感じた。実際の銃を手に取り、技術書と照らし合わせながらその構造を確認していった。


―――ボルトアクションライフルってやつやな…ここを、こう…。


銃のボルトハンドルと呼ばれる部分と握り、銃身の上部分まで押し上げる。

そのままボルトハンドルを手前に引く動作を続けざまに行った。

銃は二度、無機質にカチャッ、カチャと音が鳴り、排莢する操作の完了を告げた。


そして、そのままハンドルを奥に押し込み、下げる。先ほどの逆手順を踏む。

同じ様に金属音が鳴り、それは装填の合図を知らせた。


弾薬を入れていない状態で、一度引き金を引いてみる。

カチッという軽い金属音が鳴り、その動作に安心感を覚えた。


「ちゃ、ちゃんと使えそう?やな……。」

不安に覆われた心の奥深くに、ほんの少し込み上げるなにかを感じたタビーだった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

ついに 黒風の穢れとの戦闘 が始まりました。


アーヴィンたちは村を守るために必死に戦い、

そしてタビーは「自分にできること」を模索し始めます。

現実離れしたタビーにとって大きな一歩になりそうな予感。


次回、戦いはさらに激しさを増していきます。

ぜひ、引き続き応援よろしくお願いします。


では、また。

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