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4-1.穢れ、襲来

―――朝日が昇り始めた頃、アーヴィンは微かに聞こえる外の喧騒で目を覚ました。

短時間ではあるが睡眠を取り、傷はまだ痛むものの、体力は回復している事を実感する。

隣を見ると、レオはすでに目を覚ましていた。


アーヴィンの目覚めに気付いた彼は、すでに怪訝な顔をしていた。

「アーヴィン、起きたか。どうやら何か起きているみてーだ。」


こちらまで一目散に走ってくる足音が聞こえる。

見張りの一人、カリムが息を切らしながら駆け込んできた。

彼の顔には明らかな緊張と疲労の色が見えた。


「村長!!アーヴィン!大変です!」カリムは声を張り上げ、急いで駆け寄った。


アーヴィンは体を起こし、靴紐を結び直しながら言う。

「どうした?」


「く、黒風!黒風の穢れが村に向かってきています!今すぐ準備しないと!」


昨夜、アーヴィン達はよほど疲れていたのだろう。

あの話の後、各自すぐに眠ったようだった。

ユカレイ夫妻がその後、村の皆に黒風の穢れについて説明してくれていた。


アーヴィンとレオは互いに顔を見合わせ、事態の深刻さを理解した。

アレが迫ってくる。昨夜と違い少なからず休息を取り二人の気力も戻っている。

それでも、あの悍ましさと絶望感が背後に忍び寄るのを二人は感じた。

しかし、あの時のように二人だけではない、皆がいると思うと戦える気がした。


タビーだけは違った。

現実世界で一般的な生活を送っている人間が、戦いや、脅威に晒される事は稀だ。

加えて今までテレビやパソコンのモニター越しでしか見た事のない魔物と呼ばれるものの存在を間近で目にした経験は、タビーに取って一種のトラウマとなっていた。


タビーも二人同様に起きていた。

いや、タビーだけは眠れていなかったのだ。


アーヴィン達が戦っている間に気を失っていた事も影響があるだろう。

だがそれとは別に、目の前で見知らぬ人とはいえ人間が、魔物に殺される瞬間を見てしまった事実。

そして自身が異世界に迷い込み、帰れる見込みが見当たらないという現実は、本人にとって大きなプレッシャーとなっていた。


アーヴィンとレオ、そしてユカレイ夫妻がカリムと話している事は全て聞こえていた。

本当なら起き上がり自分も話を聞くべきだろう。

でもそれはできなかった。

タビーは掛けられていた布団の中で、動けず、じっとしていた。



カリムから話を聞いた皆に緊張が走り、アーヴィンとレオの二人もすぐに行動を開始する。

ユカレイとリセルも準備を行い、村人達に緊急事態を知らせた。


アーヴィンはいつも通りの装備を手際よく済ませる。

狩猟時に使う罠や道具一式も持てるだけの装備を準備した。

レオも同様に、ハンマーを担ぎ、ユカレイから借りたナイフを腰に収めた。


レオがタビーを起こそうとしたが、

ユカレイの計らいで眠っているタビーはそっとしておくよう言われ、そのままリセルと共に広場へ向かった。


「………。」

アーヴィンは一度タビーの方を見たが、何も語らず外へ出た。


「皆、急いで集まってくれ!」

リセルが大声で呼びかけると、眠そうな顔をした村人たちが次々と広場に集まってきた。


ユカレイは村の小さな広場に立ち、大声で村人たちに呼びかけた。


「みんな、聞いてくれ!昨夜、皆に話した黒風の穢れがこちらに向かっているそうじゃ。

報告によればまだ時間は幾分あるとの事じゃが…戦える者は迎撃の準備に、そうでない者達は出来る限りの物資を持ち、いつでも逃げれるよう支度をするのじゃ!」


その言葉に皆々、驚きと不安の表情を浮かべながらも、村人たちはそれぞれの役割を果たすために動き出した。戦士たちは武器を手に取り、弓兵たちは矢を揃え、防衛ラインへと向かった。他の村人達も、食料や水を運び、戦士たちの支援に回るのであった。


ユカレイの妻、リセルもまた、村人たちに指示を出し、素早く動くように促した。

「皆、無理はしないで、でも急いでな。村を守るためには、皆の協力が必要じゃ。」


アーヴィンとレオは、村の戦士たちを集め、戦闘準備を進めていた。弓矢の数を確認し、防具の状態を確かめる。人数は少ないが戦える者達は皆、元冒険者だ。

魔物との対峙にはある程度慣れている。

それでも村の緊急事態に全員が緊張し、黙々と作業を続けた。


―――


村の周囲には依然として緊張感が漂っている。

アーヴィン達は準備を整え、村から少し離れた場所に急いだ。

朝の冷たい風が木々を揺らし、森の中に緊迫した空気が流れていた。

森の中を進む彼らの足元は、湿った土と苔で覆われており、時折、小さな枝が折れる音が聞こえ、大がかりな人数の一斉に歩いていく音が静寂を破った。


今もなお昨夜の事を思い出しアーヴィンの心臓は緊張で早鐘を打ち、耳の奥でその音が響いていた。彼は仲間たちの顔を見回しながら、彼らの覚悟と決意を感じ自身を鼓舞した。


リセルは冷静な表情を保ちつつも、その瞳には鋭い光が宿っていた。

アーヴィンに狩猟術を教え、長らくヤマタの村を守ってきた彼女もまた、冒険者の過去があった。これから起こる戦いに全神経を集中させていることがわかる。

レオは何かを考え込むように唇を引き結び、ハンマーの持ち手を握りしめていた。


彼らは不安と緊張が入り混じる中、そいつを待った――――――


今回もお読みいただき、ありがとうございます!


ついに、黒風の穢れが村へと迫ります。

戦える者は武器を取り、そうでない者は物資を準備し、避難の支度をする。

アーヴィンたちの心にも、あの“異形”と再び対峙する緊張が張り詰めています。


そしてタビー(奥井)は、異世界の現実を前にして、まだ立ち上がれずにいる。

彼にとっては、戦いなど縁のない生活を送っていたはず。

目の前で人が死に、帰る道も見えない絶望――この状況で、彼はどう動くのか?


そして、村の人々が一致団結して防衛に向かう中、

アーヴィンたちは 「あの黒風の穢れを、どう倒せばいいのか?」 という疑問に直面します。

果たして、彼らの迎撃作戦はうまくいくのか?


次回、ついに“黒風の穢れ”との本格的な戦闘へ――!

ぜひ、お楽しみに!


もしこの展開が気になったら、感想や評価をいただけると、とても励みになります!

引き続き、風のアーヴィンの物語を見守っていただければ嬉しいです!


では、また。

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