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3-4. ギフター:奥井 旅人

リセルの淹れた甘い果実、暖かいピーフィの飲み物。

それを一口飲み、その甘さが脳に直接喜びを告げた。

そして二人の渇き切っていた喉に水分が駆け巡り、熱が胃の中まで通る事を感じた。


「今はしっかり休んで。明日には回復していることを祈るわ。」

リセルが微笑みながら応じた。


二人は少しの時間、お互い言葉を交わす事なく休息を取った。

身体的な事もそうだが精神的な緊張は簡単には解けなかった。

ユカレイ夫妻が村人とのやりとりをしているのを、ただ何も考えず二人は見つめ、

カップに注がれたピーフィの紅茶を時折口に含むのであった。


――――


いくらばかりか落ち着いたのだろう、レオから魔物のことについて話し始める。

「アーヴィン、あの魔物は一体何だったんだ?」深刻な表情で尋ねる。


「わからない。けど、ただの魔物じゃなかったな。

人に擬態する魔物はいても、あれは動きまで人そのものだった。…あんなもの初めて見た。」

アーヴィンは目に焼き付いたサージの散っていく瞬間を思い出して背筋が冷たくなったのを感じた。


「それに、あの声…。何ていうか…こう、訴えかけるような。」

レオは手に持ったカップを握りしめた。



その時、奥井が小さな声で呻き、目を開けた。


「おい、大丈夫か?言葉、わかるか?」レオが優しく声をかける。


奥井はゆっくりと身体を起こし、周囲を見渡した。

「ん、ああ。ここは…どこや…。あんたら、さっきの…?」


「言葉はわかるようだな、よかった。落ち着いてくれ。ここはヤマタの森にある村だ。俺はアーヴィン、こっちはレオ。」アーヴィンはレオを指さした。


「ア、アービン?レオ…?海外のお方…?お、俺、奥井…。どうなってんや…?」奥井は混乱しながらも、自分の名前を伝える。


「昨夜、この近くで大きな災厄…えっと、でっかい爆発があったんだ。その大きな爆発があった所で倒れていたんだ。俺達があんたを見つけた後、見た事もない魔物が現れて、とにかく逃げなきゃって、あんたを担いでここまで来たんだ。ちょっとくらい覚えてないか?」

レオはゆっくりと奥井に伝わるように言葉を選んだ。


「ん…爆発……。そうなんか…。俺、バイクで事故って。光に包まれたような、それで…気が付いたら、知らんとこにいて。でも化け物も見たのは覚えてる…ありえん怖さやった…」

奥井は少しづつ脳が覚醒していくの感じ、自分の状況を説明し始めた。


「バ、バイク?」アーヴィンとレオは顔を見合わせた。


「それから、あの化け物…喋ってたんや。何か、呻き声と同時にようわからん、『憎イ…ハルレイ…』とか言うてた。」奥井が続ける。


「ハルレイ…?」レオが訝しげに繰り返す。


家事をしていたリセルの手が止まった。

「今、『ハルレイ』と言った…?それって…」


「師匠、その言葉、何か意味があるのか?」

アーヴィンが振り返り、リセルに尋ねた。


リセルはしばらく考え込んだ後、思い出したように答えた。

「もしかしたら『ハルレイン』…それは、かつての勇者の名前じゃないかしら…。」


「勇者…!」アーヴィンとレオは驚きの表情を浮かべる。


「わからないけどね、ハルレインはこの地を救った英雄って話ね。でももう千年も前の話よ…?私ですら父上から聞いたおとぎ話だもの。」リセルが続けた。


「つまり、もしかしたら昔の勇者と関係あって、あの魔物は何か特別な存在ってことか?」レオが問いかける。


「そうかもな…。というか、奥井…あの魔物の言葉わかるのか?」

リセルの話が落ち着いたところでアーヴィンは自身の疑問を投げかける。


「いやそれはそう!!サラッとやべー事言ってるぞコイツ!!ぁあ!やっぱ魔物なんじゃねぇか!俺は騙されねぇぞ!!!」

ガタガタと立ち上がるレオ。


慌てて奥井は弁護する。

「待て待て!なんでそうなんねん!今普通にアンタらと会話してましたやん!普通、魔物は言葉喋らんのでしょ!?今この場で誰よりも喋ってますけども…!」


「落ち着け、レオ。」

アーヴィンが制する。


「あのバケモンの言葉がわかるってのも、なんつーか、直接頭にぶち込まれてるみたいな、そんな感覚やった。向こうは俺の言葉なんて聞こえてへんみたいやったし…。」


奥井は続ける。

「それとな、ア、アービン…さん?」


「アーヴィンでいい。」

リセルが用意したレジャーカの煮込みスープを口にしながら答える。


「話変わってごめんな?気になってたんやけど、その服どこで買ったん?それ忍者服やんね…?」


「服…?これは買ったんじゃない、ギフトとして拾った物だ。」


「ギフト…って…なんや?」




―――リセルが振舞ったレジャーカ料理を各自食べながら、アーヴィン達はギフトついて説明をした。




奥井は何の肉かもよくわからない料理を出され戸惑ったが、皆が美味しそうに食べてるのを見て例に倣った。日本食とは違った味だったが奥井も美味しく頂いたのだった。


奥井は話を聴きながら、時に相槌を打ち、わからない事は都度聞くように心がけた。

「ふーん……って事は日本の物が爆発と一緒にここに来てるってこと!?」


先に食べ終わったアーヴィンは立ち上がり、食器を片付けようとする。

「奥井の話と俺たちの知っている現象を合わせるとそう言うことになりそうだな。」


奥井はアーヴィンの腰に付けられている装備に目が行く。

「あー、ちなみにその腰のやつ…それ十手やんね…?」


「これか。これもギフトだ。弓を使うからな。敵に近寄られた時用に使い勝手が良くてな。そうか、ジッテ、と言うのか。」


「本物なら日本じゃ歴史的価値のあるものになるんやけど…ちゃんと使い方までそのまんまなんやね…。」


奥井は用意された食べ物を噛み締めながら、この人達が悪人ではないとうっすらと感じはじめた。

現実離れした周囲のなにもかもが奥井の脳を混乱から離そうとはしなかった―――

今回もお読みいただき、ありがとうございます!


異世界に転移したタビー(奥井)がついに目を覚まし、アーヴィンたちとの会話が始まりました。

彼が「魔物の言葉を理解できる」という衝撃の事実、そして「勇者」という名が登場しました。

今後どういった展開で勇者が絡んでくるのかもう暫くお付き合いください。


また、「ギフト」という異世界に影響を与える現象についても少しずつ明らかになってきました。

奥井がギフトとしての「十手」や「忍者服」に気づくシーンも、彼が異世界のことわりに順応しつつあることを示しています。


次回、タビーはこの世界の「ギフト」と「災厄」についてさらに知ることになり、

彼の存在が何を意味するのかがも少しづつ書いていけたらと思います。


もし、この話が面白いと感じていただけたら、感想や評価をいただけるととても励みになります!

引き続き、アーヴィンたちの旅を見守っていただければ嬉しいです。


では、次回もお楽しみに!


あと散っていったサージさんの事は忘れないであげてください。(深い意味無し)

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