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魔法の鏡~やられっぱなしの気弱令嬢が我慢をやめたとき。反撃を開始します  作者: 別所 燈
エピローグ

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『魔法の鏡 やれっぱなしの気弱令嬢』12月10日発売記念SSです! レッツ 卒業パーティ!

12月10日に発売『魔法の鏡 やられっぱなしの気弱令嬢が我慢をやめたとき、反撃を開始します。』カドカワBOOKSより

 アリシアの波乱万丈だった学園生活もそろそろ終わる。


 学園では盛大な卒業パーティーが催されたが、華やかな主役となるのは普通科の生徒の貴族たちだ。


 シャンデリアで飾られたホールでダンスをしているのは貴族ばかりで、魔法科の生徒は隅のテーブル席でぼそぼそと喋っているか、顔だけ出して早々に帰る者たちまでいた。



 ミランダ「アリシア、本来なら、あなたあっち組じゃない?」

 

 ミランダが、明るいホールを指さす。

 そこでは色とりどりのドレスを着た淑女や正装姿の紳士が踊っている。


「行っても好奇の目にさらされるけだからやめておくわ。みんな楽しそうだし。水を差してしまうかも」

「でも、ブライアンもサミュエルもあっちできらきらしてるよ。アリシアも制服じゃなくて、ドレスを着てくればよかったのに」

 

「そういうミランダだって制服姿じゃない」

「ドレスって着るの面倒だし、私はホールの真ん中より、この少し照明が落とされた隅のテーブルの方が落ち着くのよ。お料理もおいしいし」

「本当においしいわね」

 

 二人はホールが食事を楽しみながら、ホールの中央に目を向けると、引っ張り出されたサミュエルとブライアンがいる。

 

 ブライアンもサミュエルも女生徒たちに人気があった。

 もっともサミュエルの方はお家騒動でいろいろと取りざたされてはいるが……。

 二人ともホール中央で、制服姿だから目立つ。貴族たちは男子生徒も含めて皆正装だ。


 それに比べてアリシアの周りは静かである。なぜなら、彼女の家と関わった者たちは没落や降爵の憂き目にあっている。


 前半は普通科で侮られ、後半は寮生活で不幸を呼ぶ人物としておそれられ腫物扱いを受けてきた。

 ある意味問題児だったのかもしれないとアリシアは過去を振り返る。


「ドレスなんて、これからいつでも着られるし、制服は今日で最後じゃない。私、この制服には思い入れがあるのよね」

 アリシアがしみじみと答える。

「わかる。私は二回目だけど、前回と違って今回は制服に未練がある。楽しかったなあ! 学園生活」

「私も! 普通科の時は退屈だったし、カフェテリアでの食事は苦行かと思っていたけれど、魔法科に移ってからは違ったわ。いろいろあったけれど本当に毎日が楽しかった」

「確かにアリシアにはハラハラさせられたわ。まさに波乱万丈の学園生活だったよね」

 二人でおしゃべりを楽しみながら果実水を飲み、テリーヌを食べる。


 ビュッフェ形式のパーティになっているので、ミランダと食べて飲んで、のんびりと思い出話を語る。


 入学当初はこんな平和な時間を過ごせると思っていなかった。

 途中からは無事に卒業できるとは考えていなかった。

 今想像もしていなかった未来へと進んでいる。


 かなりの痛みを伴ったが、アリシアが生き残りをかけた戦いに勝てた。

 負けていたら、アリシアにはきっと死が待っていたことだろう。


 ただ静かに生きているだけでも、知らないうちに人から殺される邪魔に思われることもあると知った。


「でもさあ、アリシアの女子寮生活結構大変だったと思うんだけど、どうして実家に帰らなかったの? その方が気楽だったんじゃない?」

「いろいろ思い出がしみついていて踏ん切りがつかなかったのよ」

 二人が深刻そうに顔を寄せあったその時明るい声が響いた。


「アリシア、一緒に踊ろう」

 振り返ると、サミュエルだった。


「え? どうしたのサミュエル。さっきまでホールの中央にいなかった?」

「俺のうち評判悪いのに妙に男爵家とか子爵家の令嬢がくるんだよねえ」

 サミュエルが眉根を寄せる。


 その横でブライアンが気軽な口調でミランダに話しかける。

「僕は普通にモテちゃってさあ。ミランダ、風によけになってよ。一緒に踊ろう」

 ミランダはブライアンの言葉にあきれた様子で言い返す。

「ブラアイン、風よけって何よ。失礼過ぎない? それに私もアリシアも制服だよ」

「そうそう、制服で踊っている人なんていないわよ」

 アリシアもミランダに加勢する。


 最後の最後で、正装姿の貴族の紳士淑女に混じって制服で踊って伝説を作るなんて嫌だ。


 しかし、その前にサミュエルがさっと跪く。


「アリシア・ウェルストン嬢、俺と踊っていただけませんか」

 アリシアは頭痛がしてきて額を抑えた。

 でも最後の最後に馬鹿な真似をするのも一興かもしれない。

(ここの所は好き放題やっていた気がするけれど、思えばがまんするほうが多かったわ)

 そして、なぜか不思議とサミュエルからのダンスの誘いは断れない。

「喜んで」

 一転してアリシアは笑いながら、サミュエルの手を取ると、彼は夏の日差しのような明るい笑顔を見せた。


「ミランダ。サミュエルに後れを取ったじゃないか」

「ちょっと待ってよ! 私は貴族の出じゃないから、ダンスはあまり踊れないのだけれど」

 一方でミランダは焦っていた。

「ミランダ、それは薄情ってものじゃないか? これじゃあ、サミュエルとアリシアが目立ってしまう! 僕たちで援護しようではないか」

「物はいいようよね」

 あきれたように半笑いを浮かべミランダはブライアンの手を取った。


 サミュエルに手を引かれ、アリシアはホール中央に躍り出て、ダンスのステップを踏む。

 しばらくダンスはしていなかったが、リズムが体に染みついていた。

 次に、ミランダとブライアンが入ってきた。


 今まで踊っていた者たちが呆然としてダンスを止める。

 四人の周りから人か消え、皆が観衆になった。


「どう、アリシア注目の的になった気分は?」

「ダンスは楽しいけど気分は最悪だわ。複雑ね。皆あきれいてるんじゃないかしら」

「これで学園に爪痕を残せた。俺たちは語り継がれる。なあブライアン」

 サミュエルが隣で踊っているブライアンに笑いながら声をかける。

「僕、国に帰ったら怒られそうだよ」

「私は、新しい職場で怒られるわ。でもなんだか楽しくなってきた! 今まで、こんなバカなことしたことないから」

 アリシアはミランダの言葉を聞いて噴き出した。

 思えばこの四人で規則やぶりもしたし、結構馬鹿なこともやってきた。

 四人の中に不思議な連帯がわいてきて、みな最後は笑いながら踊っていた。



 ダンスが終わると、四人は普通科の貴族たちにホール中央を譲るように去っていった。

 戸惑っていた彼らも、やがて中央に戻り踊り始めた。


「最後に馬鹿な思い出を作ってしまったわ。制服姿で堂々と踊るなんて」

「アリシアのお陰で、俺に声をかけてくるご令嬢がいなくなってすっきした」

 アリシアはサミュエルを少し恨みがましい目で見る。

 でもなんだかんだで楽しかったのは確かで。

「サミュエルって、ほんとに目立つことにかけては天才的ね」

 その上、いろいろとあったが、人気があるところはかわらない。生来のひとたらしだ。


「でも、楽しかったでしょ?」

「うん、楽しかったわ。お陰様で笑い話が一つ増えたわよ」

 そこで、後ろから二人に声がかかる。


「アリシア、サミュエル、四人分の席確保したわよ! ここで食べましょう!」

 ミランダとブライアンが席を確保して、ビュッフェからチキンのソテーやパテ、チーズなどをせっせと確保している。

「さすがミランダ。手配が早いな」

 アリシアとサミュエルは早速彼らの元へ向かう。

 席に着いたアリシアは言った。

「今日で学園で四人で食事をするのも最後ね」

「じゃあ、これからはどこで食事しようかしら」

 ミランダの言葉に、ブライアンが答える。

「うちにおいでよ!」

「そうだね。食事はどこでもできる。誰と食べるかがたいじだよな」

 これから先もこの関係が続くかと思うとアリシアは嬉しかった。

 好きな人たちする食事は幸せで、とても楽しいものだとアリシアは学園生活で学んだ。


 思いのほか卒業パーティを楽しんだのだった。



 終わり


12月10日に発売『魔法の鏡 やられっぱなしの気弱令嬢が我慢をやめたとき、反撃を開始します。』カドカワBOOKSより。

素晴らしいイラストと、美形のサミュエルとブライアン必見です!! さらお手に取っていただけると2巻発売の可能性も出てくるので、ぜひぜひよろしくお願い致します!紙電子両方で発売です!

なお、キャラクターは同じですが、書籍版では後半以降展開が違います。WEB版と合わせてそちらの方もお楽しみいただければ思います。

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