おれの部屋は別室らしい
更新おそくなりました! エピローグ投稿して満足しててすみませんm(__)m
年ごろの女の子はお父さまとは距離をおきたいらしい。
誰がお父さまだっ!!!! というツッコミはいったん無しでお願いします。ここが踏ん張りどころである気がしてきたから。
というわけでおれは別室(一人部屋とも言う)へ案内されている。しかしおれからしたら一人部屋なのはありがたい。ドアに夫婦の部屋とかかれていたのが見えたがするが。気付かれないように。そっとプレートをつまみゴミ箱に捨てた。
ベットを見るとイエスNO枕が見えた。そんなベタな。もっとひねりを加えて欲しい。
いや待てよ・・・。
んでこっちはと説明してくれている自称おれの娘に相づちをうちながらクローゼットの中からおれがこの部屋をカスタマイズしたときに揃えた枕を取り出し、例の枕と取替え奥へと突っ込んだ。
なるべく見えないところへ隠せたのに満足しておれはニコニコ笑いながら自称おれの娘のあたまをポンポンとする。
「いろいろ教えてくれてありがとな。」
「そ、そんな。私はもうそんなに子どもじゃないんですから。お父さまのバカ!」
そう言いながら自称おれの娘は顔を真っ赤にして走って言ってしまった。
おれは先ほどまでの彼女のことを自称娘呼ばわりしていたことを心底悔いていた。顔が美少女だけではなく中身まで美少女だったというのに。
おれなんかの娘になってくれて誠にありがとうございます。なんですか。あのそこはかとなく可愛らしい天使は!? あんな天使が実在していてもよろしいのでしょうか?
おれ今日から父さんはじめます!
閉じかけのクローゼットにそう誓った。気になったのできちんと閉めなおす。
おれの本能とでもいうのか。そのなにかがこのゲームを拒絶していて。なんでおれ課金もしてたのにこんな良いゲームを嫌っていたのだろうか。
なんと酷い食わず嫌いであろうか。こんなに可愛いキャラもいるのに。
タイトルというかなにかが嫌で、このゲームを毛嫌いしてたのだろうか。代行業者にイベントをクリアしてもらっていたのが申し訳なくなってきた。
ごめんよ・・・。近藤。おれちゃんとゲームやってれば良かったよ。
ちなみに近藤とはおれの幼馴染である。遠くの夜空の下退社帰りの近藤は急な寒気を感じ大きなくしゃみを吹きこぼしてしまった。
部屋に一人になったので、まずは頭と気持の整理をしてみようと思う。
昔・・・。そう今から10年前といえば異世界なんてものは夢のまた夢だった。そこには空想と期待、とにかくそこに人々は夢を見ていたらしい。
だがこんなヴァーチャル空間に依存した現世から転移してきたおれはそう・・・。なんというか近所へ引っ越してきたという感じが強い気がする。
これから住むことになりそうなこの家もおれがATTストアで買ってカスタマイズしたものだ。基本【GIM】の世界ではここがホーム画面となっており、この家も部屋もおれのお気に入りの空間である。
キャラとはかは分からないのでおれのゴーストプレイヤー(ゴーストライターのようなもの)がいろいろ育成などを担当していたようである。
彼、彼女かは知らないが大変お世話になったな。おかげでおれの所属していたギルドのギルマスからの信頼も厚かった。
おれの本当にビジネスパートナーとも言うべきひとだったのだ。
もしかしたらBotだった可能性もあるのだが・・・。そんなことをいっていてはなんか自分が可哀想なやつに思えてくるからこの先を考えるのはよそう。
各世界に集まるゲームを愛する人たちにとっておれのような人間などクズのようなものだろう。
だからこそ、思う。なぜおれが異世界転移をすることになってしまったのか。おれなんかよりもっとふさわしい人がいたのではないかと。
コンコンっとノックがされた。このぶっきらぼうな感じはおれの知っているあの子ではない。
「よう・・・。入るぞ。親父。」
イケメンな傭兵みたいなお方がおれを親父呼びしてきた。
なにが。親父だよ。おれ君に貫禄も体格も負けているのでなんだか情けなくなってきた。
「なにか必要なものあるか? 良かったらおれ買って来るよ。」
いい子! 強面かと思って身構えたけどこの子もいい子!!
「ああ。大丈夫だ。問題ない。それより晩飯は食ったのか?」
「これからだ。」
「よしっ。分かった夕飯はおれが作ってやろう!」
おれ今日から親父になったる!
「ほんとか!? 楽しみにまってっぞ!!」
トゥンク♡ これが不整脈という奴なのかもしれない。
イケメンはドアを閉じて部屋を出ていった。
おれは部屋をまんべんなく見渡し、なぜおれがこの世界に来たのかその理由を探した。
窓ガラスが薄いのか鳥の声が多少耳ざわりである。外を見ようとしたその視線の先に一冊ノートが目に入った。
表紙におれのビジネスパートナーの【黒猫】という名前とこの世界の今からちょうど2年前の日付がかかれている。
中を出来心でのぞいてみた。ここにおれをとめる者なんていないのだから。
そんな軽率な行動をするものが、ホラー映画やミステリーだとまっさきに餌食になる。もしもこの時自分のことを客観視できていれば、自分のいらぬ好奇心をおさえることができていれば・・・。
今でもそう思わずにはいられない。
ノートの後半のページはにはただ同じ文字がつづられていた。
タスケテ。たすkて・・・。まるでなにかに怯えるような。
突然おれは命の危険を感じた気がして、この家から逃げ出した方が良い気がしてきた。
まあそれはおいておいて。
郷に入っては郷に従えって言葉もある。
おれは黒猫さんの身と精神状態が心配にならざるを得なかったが、実際にあったことすらないひとなのでそこまで感情移入が出来ずそんなに焦らなかった。
まあ気を取り直して夕飯を作りにいってみんなと食事をともにすることにした。
キッチンにあったサラダチキンとシャキシャキとした食感のレタス、トマトとチースをさらに盛り付け、さっぱりとした味付けのスープだ。
おれの隣は美男美女となにかがいた。
おそらくおれの【GIM】ゲームアカウントの保有キャラクターだったはず。
みんな何かしら見覚えがある気がする。(ちなみに主人公ゲームのプレイを代行業者に依頼していた情けないやつです)
確か名前が右から、Amerigo、ヨロッピー、エイシアだったな。あとは先ほどのイケメンと美少女の、アレックスとゼルダ。
【GIM】のグラフィックはとてもリアルだったがはやりその(・・)世界に入ってしまうと思わずにはいられない。
どんなに最先端の技術であろうと・・・。現実世界の黄金比やその他のリアルには及んでいなかったのだといことを。
「お父さんさん、胡椒とって。」
顎をクイっとしながらお願いしてきたのがエイシアである。
注)*エイシア:良くいるゲームの美人なエルフのお姉さんって感じのキャラである。耳は可愛らしくとがっており、緑の澄んだ目はお父さんをときどきゴミのように見てくる。
「かけすぎるなよ。」
「ありがと。」
「いつも・・・。本当にいつも同じメニューだよな。これ。でもこれが美味しいんだよなあ。」
注)*ヨロッピー:良くゲームの釣り絵(イケメン枠)にいるようなキャラ。濡れ髪のような艶のある髪と、猫のような鋭い眼光と長身から放たれる圧倒的なスター感。父親のことをときどき紙くずのように軽くあつかってくる。
「・・・。」
注)*Amerigo。彼は無口で食事始まってから10分たって誰とも会話がない。先ほどおれが落としたはしを拾ってくれたので根はいいやつだおそらくは。ピエロの仮面を被った恐らく人狼であり、野性的なイケメン。ときどき父親であるおれをいないように扱う。
「どうだ? 今日のごはんは?」
「・・・。」
お父さんは悲しいです。でもAmerigo食事は満足そうに食べてるのでなんかそこは嬉しいです。すっかり周りの状況に合わせて急に父性に目覚めてしまったおれはこっそり心の中で泣いた。
サラダチキンとたっぷりの生野菜サラダ、ベーコンの小間切れが入っている食事を彼らに振る舞いながら、おれは思った。
おれは今さっきこの世界に来たのだ。いつも彼らに食事を作っていた事実はない。
だが、彼らは噓を言っていないように思う。であるならば。ここが現実改変された世界である可能性。もしくはみんなでおれをかついでいる可能性。
まあ前者の方が確率が高いのではないか。なぜそういうことになっているのか。おれが異世界転移したことによる影響なのか。
壁にかかっていた家族写真はおれのとなり恐らく妻が写っているであろうスペースにはモザイクがかかっており見えなかったものの、この世界の10年前・・・。
おれはこの世界にたしかに存在していたのだ。だからこそこの状況はどうしてか頭では理解できていて受け入れることができていた。
顔採用と揶揄され、男ながらも美容に一定の知識のあるこのおれ。
こんな癖のある子どもたちだが・・・。まだ見ぬ君にあえるその日まで頑張って子育てしようと思う。(おれといつの間にか結婚している妻)
美男美女でいられるよう食事制限はくまなくさせて頂こうとしようか。もちろん嫌がられたら速攻止めるが、彼らは受け入れてくれているようだ。
だからこそあそこまでの美男美女に成長したのかもしれない。どうしてか種族が全然違うのだがまあゲームの世界だしいちいち突っ込むまでもないだろう。
みんな食事を満足そうに食べ終え、食器の後片付けをしていると、なにやら玄関先が騒がしい。
「おーーーーーーーーい! 今日もまたきたぜ! フォオオオオオオオオオオ! どやこれ見ろ!」
「フォオオオオオオオオオオ!!!!」
うるさい荒くれものたちがおれを出迎えズカズカと家へ入ってきた。
酒くっせえ。あとうるせえ。
目をキラキラさせおれに酒瓶を見せびらかす。
「また、今夜も飲むのか?」
「当ったり前よ! フォオオオオオオオオオオ!」×3
「やあ。悪いね。お邪魔するよ。」
「・・・。」
Amerigoお前返事頑張れ! おいこら!
「またあなた達ですか。ふう~。」
ため息ついて退室していったエイシア。
「あんまりおそくまで遊んでちゃダメなんですからね。」
ゼルダ・・・。しっかり者なのほんと助かる。
「おーーーーおーーーー。いつもすまんね。」
「良かったらこれも使ってください。」
アレックスはソーダ割用の炭酸水をペットボトルで持って来てくれた。
アレックスさすがは頼れる男である。恐らくこの世界にはないものの・・・。
おれの友人と思わしきこの3人組はかなりゆるかった。
「この家の炭酸水いつもうめえんだよな。ありがさん。アレックスよお。今度遠洋いくんだが日帰りできそうだ。一緒に来るか?」
「いいですか! おれ行きたいっす!」
ピカーとイケメンスマイルがまぶしい。
そう言えば序盤そうそうに姿が見えなくなっていたヨロッピーに続きAmerigoも姿を消していた。
「んじゃあ、そろそろ飲みますか!」
「カンパーイ!」
「フォオオオオオオオオオオ!」
いつものように振る舞って、お酒を友と交わした。
少し遅くまで飲んだのだろうか。
部屋は真っ暗になっており友はみんな帰っているようだ。あいつらもかみさんがうるさいとめちゃくちゃ愚痴をこぼしていたからな。
まあ理由はそんなとこだろう。
おれは目をまわした。なぜか床に横たわっていたようだ。
だが、ふと違和感に襲われてしまう。
なぜって。それは・・・。
>>事件番号.001
おれの視線の先におれは眠っているのだ。足から肩にかけて暗闇越しでもわりと鮮明に見える。
ゴトリっ。気付かなかったものの誰かがベットの枕もとから立ち上がった。手に持っているのは鮮血の飛び散った出刃包丁。
その後ろ姿と泣き声からゼルダだと分かる。
最後に意識が消え去る瞬間・・・。おれは悟った。
目を覚ます直前におれはどうやら首を根本から切り落とされていたようだ。
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