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いろいろな短編

モノクロモノローグ:失敗した人生を打ち上げ花火に

作者: ださいやさい

ぎやかな大都会の都心部で、作業着を着ながらうろうろ歩き回る俺は、今日も疎外感まみれて生きている。

最近、家の周りに高い超高層ビルーー林X(ハヤシエックス)タワーができた。開業したとき、打ち上げ花火で注目を集めたけど、俺は気に入らない。

周辺の地価が上昇しているが、そのビルから徒歩10分の俺の居場所と関係ない話だ。

ビルから徒歩10分で、外国大使館に行けたり、ナイトクラブに行けたり、大型商業施設に行けたりするが、俺っちが半世紀以上も忘れられたところだ。


借り家ではないから家賃も水道代も電気代もゼロ。日当たりはなし。防災倉庫から盗んだ懐中電灯と、何とかこなしている。お風呂は地下用水路で。夏は涼しく過ごし、冬は使われた磁気のあるきっぷを引火して、勤務日誌のA4紙とダンボールを燃やして何とか暖をとる。地上へ出てコンビニのゴミ箱で収穫を得なければ、ネズミとゴキブリも貴重なタンパク質だ。おかけでこの数十年一度もお医者さんにかかっていない。住民登録していないから、実家がばれたら、インタビューされて取り上げられると困る。たまに自販機で100円ハンターするが、主に株主優待券を換金して生計費を得ている。そう、俺は地下鉄の廃駅のあとに生きているけど、複数の上場企業の大株主だ。この作業着も一つの会社のもの。この国を恨みながらこの国で既得権益を得ている自分を哂いたい。


この都市で一番高いオフィス&レジスタンスビルの林Xタワーに住めるけど気に入らない。

冷戦の時のマスコミの日々から大げさな宣伝を軽々しく信じてしまって、核戦争を怯えて、身分も家族も捨てた俺の末路は、所詮このくらいだ。

ある訳あり空き事務所のメールボックスを借りてなんとか生きてきた。けど、空き事務所とはいえ、たまに人が現れて荷物を受け取ったりする。今はやっているシェアリングエコノミーか。俺がこの用語を分け合い経済と漢字をふっている。


明るいレンガを持つ何人とすれ違っていた。打ち上げ花火があった時以外の夜のこの街は、スーツ姿と作業着姿の奴でしか歩かない。だからパトカーのお巡りさんに止められないように作業着を着ている。とはいえ、周りの人を見たら、今の人は明るい薄っぺらレンガを持ち歩いていて、本を読まなくなるんだと嘆きたくなる。いえ、さすがに昔でもディスコをしに行く人間は本を持ち歩きはしかかったのだろう。

徒歩数分のスリムなマンションの前のゴミ置き場から新聞を拾った。今日のではない。もう日付は俺と関係がないんだ。見出しは…爆破予告の犯人逮捕?今の子供はねぇ…でもいい考えを示してくれた。爆破予告を送信する薄っぺらのやり方と違って、構造力学のチカラであのビルをぶっ壊したい。

どうしても林Xタワーを気に入らない。目標があれば、日々精進とチカラを蓄えるだけの話。必ずぶっ壊し…新聞打ち上げ花火との一緒に撮った写真が落ちてきた。どうやらこのマンションの住人のものらしい。俺の両親が健在したら、もう80を過ぎたのだろう…


林Xタワーを気に入らない!林Xタワーを気に入らない!林Xタワーを気に入らない!

一瞬で、体内の血が頭に湧き上がる感じがした。(みやこ)タワーのライトアップに照らされた林Xタワーに中指をたてる。そして、林Xタワーに何も手をだせない自分を恨む。

「我に砂糖と硝酸カリウムを与えよ、されば地球も消さん!」

拳を握って心に誓ったら、ビールの空き缶を踏んだ。マンションの上層階から犬が鳴いた。そして頭を冷ました。木の伐採を自分でできるが、ビルを消すにはどうしても仲間が必要だ。

最後の人生を一度打ち上げ花火にする。この逆転勝てない俺の新たな生きる意義だ。

地図を変える仕事。それは俺のチームの目指す目標だ。

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