第四十六話 指名依頼
◇指名依頼【しめい-いらい】
組織/探索者組合/制度
ギルドが探索者を直接指名し、仕事を依頼する制度。
通常、探索者が請け負う仕事は、
ギルドが仲介・斡旋する第三者の依頼か、
大規模な魔物掃討などギルドが広く募るものだが、
指名依頼は特定の個人に直接出されるものである。
それはギルドからの一定の信任の兆しでもあり、
探索者の階段を順調に昇っている証でもある。
◆◆◆◆◆
◆自由都市グアド・レアルム、東七番管理口、ヨア
今日のレアルムの天気は、ここ最近続いた雨がようやく上がり、雲一つない快晴である。
暖かい日差しが惜しみなく降り注ぎ、団を出る前に干してきた洗濯物を最高の状態に仕上げてくれること請け合いだろう。
ああ、それならいっそ仕事を忘れて、特殊任務小隊の皆と〝外域〟の浅い所でお茶をするのもいいな。ウェンブリーが美味しいお店をよく知っていて、「なんで私がこんな事……」と言いながら色んなお菓子を持ってきてくれるのが楽しみになった。ただ、俺としては偶にでいいから狩った獣の肉に香草をまぶし焚火で焼いた野性味溢れる食事が恋しくなってきたなあ……。
――そんなことを想像し焦がれながら、今から俺は臭くて暗くて汚い地下水路に入ろうとしていた。
「はあ……」
「溜息を止めてください。全体の士気が落ちます」
俺の隣で、眼鏡をかけた堅物そうな女が睨んでくる。
「クソ、やっぱりヤル気がしねえ……面倒臭ぇ依頼押し付けやがって」
猛獣のような空気を纏った短髪の男が恨み言を呟いている。
「あ、あのぅ、グランドリオくん、あんまりギルドの悪口になる事は言わない方が……」
その傍らで、背の低い少年が宥めようとしているが、声が小さいようで存在に気づいてもらえない。
「これで全員揃いましたね」
……そんな俺を含めた諸々に対し、満足気に頷く一番年長の女。
この五人で、俺たちは自由都市レアルムの地下に張り巡らされた下水路へ入っていく。
「空気……悪いなぁ……」
物理的に、ではなく、雰囲気という意味で。
数日前、彼らと始めた相対した時のことを思い出す。
全てはナナセと名乗った女性と出会った時から始まった。
◆◆◆◆◆
◆二日前――自由都市グアド・レアルム、探索者組合、ナナセ・ボードウィン
「お待ちしていました。どうぞこちらへ」
ギルドが送付した指名依頼の通知書を携えて現れた少年を出迎えた私は、今回の依頼内容を説明する場である談話室へと案内する。
「あっ、申し遅れました。私はギルドの斡旋課に勤めていますナナセ・ボードウィンです」
「俺はヨアっていいます。……えっと、不束者ですがよろしくお願いします」
そう言うと目の前の少年は不慣れさを感じさせる仕草でペコリと頭を下げる。
「はい、よろしくお願いします。ヨアさんはとても礼儀正しいのですね。普通の探索者は〝おう〟とか〝はあ〟とか気のない返事なんで驚きです」
「……探索者相手には別として、ギルドの人には敬意をもって接するように教官から叩き込まれてて」
「あらまあ」
私が感心したような風に反応すると、ヨアさんは照れくさそうに笑みをこぼします。
……きっと件の教官であるメリジュナさんなら、「それをギルド職員に正直に言うバカがいますか」と叱るのでしょう。
先ほどの挨拶も、異性へ末永い付き合いを誓う場面で使うような台詞なので、根本的に世慣れしていないことが窺えます。
合って間もない短いやり取りと、広報課を通じて事前に収集していた情報を基に、会話を続けながら私はヨアさんの性格を観察していきます。
最近になって現れた目を引く新人の一人――巷間に流れる人物評は概ねそんなところで纏まっています。というより、情報が少なすぎて曖昧な評価しかできないといったところです。
レアルムに数多存在する探索団の中において、ほぼ女性ばかりの大規模探索団である『終の黄昏』に入団した少年。
都市外から来た流れ者のようで、詳しい素性は不明。
専ら、団内で組成した小隊で〝外域〟へ潜っているせいで、他の探索者との交流もない。
見習い生訓練課程を修める中で、あのメリジュナ・レイン教官の指導を受けて実力を認められるだけに終わらず、その後も教官が何かと目をかけていると噂されています。
最近では人外の狩りに成功し、忌避されることですが〝殺し屋〟とも遭遇、あまつさえ、真偽は確かではありませんが〝神器〟を手に入れたと言われるなど、瞬く間に探索者としての経験を積み上げていっている。
これだけ聞けば、目を引く新人と噂されるのも成る程と納得ですね。
それにしてはあまりにも情報が少ない。昔から『終の黄昏』は若干閉鎖的な雰囲気があると評されていますので、その空気感にヨアさんが影響されているのかもしれません。
まあ閉鎖的とはいっても、探索団の〝会合〟に理由なく欠席はしないですし、仕事の機会で大隊長と呼ばれる実力者の方と話した際は、彼女たちが普通の人であることは分かります。個性的な方もいますが、探索者という枠組みの中でなら常識の範囲内です。
ただ……大隊長のさらに上に君臨する三人に関しては、ギルドとしても掴みどころがない人物として時に手を焼かされていることは否めません。
一人は〝千貌〟と呼び畏れられる謎多き人物、一人は戦闘能力の高さだけが知れ渡る〝雷塵〟。
どちらも肝心の為人については何を考えているか分からず推し量れない。
彼女らを纏め上げる団長に至っては、レアルムに滞在する時間の方が短いほど、何かのために頻繁に出奔している有様らしいです。
それらの前評判を伴った、女の園に隠された謎多き探索団。
そこに突如出現した、謎多き少年――
「気にならないわけがありませんよね!」
「え?」
「いえ、ギルドの同僚たちがヨアさんに興味津々でして。今日もこの役を替わってくれってうるさかったんですよ?」
「そ、そうなんですね。……何だろう、俺また何かやらかして……」
適当に誤魔化しながら、顔を憂鬱そうにした少年の様子に、私は意外な感情を覚えます。
一連の会話だけでも、彼の心根の素直さが感じ取れます。それどころか少し無防備なところも。名を売るような人物は、大勢に埋没しないに相応しい尖った性格であることも珍しくありませんが、彼の雰囲気にそのような棘は見当たりません。
そうこうしているうちに目的の談話室が見えてきました。
「さあ、皆さんお揃いですよ」
「皆さん?」
「ええ。今回、合同で依頼を受けていただく徒党の探索者の方たちです」
扉を開いた先には、四人の男女が思い思いに寛いでいた。
「チッ、ようやくか。遅ェんだよ」
舌打ちとあからさまに不機嫌な態度で出迎えたのは、一人用のフカフカの椅子を占領し、まるで部屋の主のように振る舞っている男性。グランドリオ・ジルガさん。年齢は十九。探索団『鉄血一座』からの参加です。物理的に実害を生んでいるわけではありませんが、抜身の刃のようにギラついた印象が付き纏う方です。上半身は筋骨逞しい引き締まった裸の上から、魔物の分厚い革で創られた上着を羽織るのみと、むくつけき男らしさ全開です。
「グランドリオくん、そういう言い方は……その……」
その近くで恐る恐ると言う風にグランドリオさんを窘めようとしているのは、同じく『鉄血一座』から参加のメル・ドリーさん。年齢は十四。同じ仲間のグランドリオさんとは対照的に背が低く、まるで小動物のような可愛くて愛らしい面立ちをされています。
「彼は通知の刻限までに来ていますから、遅刻と咎めるのは理不尽でしょう」
固い口調で反論したのは、お洒落さを排し実用性で固めたかのような、年頃の娘が興味を抱くようなものと無縁な服装の女性。十八歳、探索団『紅蓮の戦旗』から参加のキャリカ・ポップヴァーンさん。髪型は後ろで一つ結び。真面目が服を着ているのかと錯覚するほど素行が良い方です。
「…………」
言葉を発さず静かにお茶を嗜んでいるのは、この中で最年長の女性。ネメ・カシアさん。二十七歳、所属探索団は無し。鉱山都市レジノスから探索者になるために来たというありふれた経歴の持ち主。向こうにもギルドの支部はあるのに、なぜか皆さんレアルムに来たがるんですよねー。
ネメさん自身は、レアルムに来てからは単独で〝外域〟に潜り実績を積んできたようで、素人としては全く褒められた行いではありませんが、こうして生還しているあたり優秀なのでしょう。
さて、これで役者は全員揃いましたね。
私はヨアさんに空いている席に掛けるよう促してから、指名依頼の内容について説明を始めます。
「今回、皆さんに依頼するのは、都市の地下水路の点検になります」
「……はア? ふざけてんのか」
開口間も無く反論したのはグランドリオさんです。近くでメルさんが真っ青な顔で口を震わせています。
「わざわざ大仰に呼び出したかと思えば、溝攫いでもさせるつもりか? くだらねえ」
「ええ? そうでしょうか? この依頼も立派な仕事だと思いますが」
「探索者は〝外域〟に出てナンボだろうが。都市の中で雑用させる意味なんざねえよ」
正直、彼のこの反応は予想の範囲内でした。
だから私は淡々と言って聞かせます。
「下水道設備がしっかり整えられているからこそ疫病などが予防されているのです。――グランドリオさんもあまり子供のように我儘を言わず、レアルムで催している以上は無関係ではありませんよ。そんな事も分からないから、いつまでたっても団で前衛を任せてもらえないんじゃないですか~?」
わざと小バカにしたように言うと、彼から解き放たれた殺気が部屋に充満します。
「ハッ、ただの窓口係風情が言うじゃねえか……!」
「ダメだよグランドリオくん! あの人の言う事は全部事実だけど落ち着いて!」
メルさんが腰にしがみ付いて制止しようとするのを引きずったまま、額に青筋を浮かべて歩み来るグランドリオさん。
その進路に一本の足が突き出されます。
「チッ、テメエなんのつもりだ……キャリカ!」
キャリカ・ポップヴァーンさんは椅子に腰かけたまま、グランドリオさんの威圧にも動じず冷静な態度を崩しません。
「邪魔をしていると勘違いするのは結構ですが、同業の誼みで忠告するだけです。私もまさか地下水路の点検がギルドから依頼されるとは思いませんでしたが、話を最後まで聞いてから判断するのも遅くはないでしょう。それでも意に沿わないのなら、止めませんのでどうぞ退出してください」
それに――、とキャリカさんは一瞬だけ私に意味ありげな一瞥をくれてから、
「こういう依頼は受けておいた方が身のためになるのでしょう?」
キャリカさんの視線に、私は曖昧な微笑みで応えます。
「……あの」
するする、と静かに挙手したのはヨアさんでした。
「なんで地下水路を点検するんですか?」
「お答えしましょう!」話題転換の好機を逃さないよう私はあえて威勢よく切り出します。「先に述べたとおり、レアルムの衛生環境を保つため、都市の地下には下水路が張り巡らされていますが、これは地下からの湧水を一方向に流れ出るよう幾つも設置された魔道具によって調整されたものになります。皆さんにはこの魔道具の定期点検と、魔道具の動力源である魔石の補充をお願いしたいのです」
私の説明により、依頼の主旨は伝わったようですけど、反比例するようにグランドリオさんの興味が失せていくのが目に見えます。
「やっぱりくだらねえ依頼じゃねえか。〝外域〟に出て魔物でも狩る方が百倍マシだぜ」
「――こと昇級に関しては、そうとも限らないわよ」
ここで口を挟んだのは、これまで無言を貫いていたネメさんです。不出来な生徒を見る先生のように余裕を漂わせながら流し目で彼を見ています。
その一言は効果的だったようで、グランドリオさんは威圧的な態度は崩しませんが、「……どういう意味だ」と興味を引かれたようです。
「こういうギルドからの指名依頼を積極的に受けることは、ギルドに協力的であることの表明になるんじゃないかしら。信頼を早くして勝ち取る探索者なら、ギルドも安心して昇級査定を下せると、私は思うのだけれど」
言いながらネメさんは、今度は私に流し目を送ってきます。
キャリカさんといいネメさんといい、そんなに穴が開くほど見つめられても、私からは何も出てきませんとも。
まあ、ほとんど正解を言い当ててはいますが。
探索者に与えられる等級は、一般的にその探索者の強さを表していると思われていますが、その認識は完全ではなく、強さはあくまで付随的な評価です。
正確には、ギルド、ひいては人類社会への貢献度合いをもって等級の査定は行われるのです。
グランドリオさんがおそらく心中で思い描いているだろう、無軌道に魔物を狩り尽くすぐらいでは昇級の程度も知れています。どれだけ頑張ろうと五等級が精々でしょう。
それよりも、未知の魔物を発見する、古代王国の遺物を持ち帰る、失われた歴史の断片を復元する、新薬を開発するような偉業にこそ、ギルドは賞賛と名声をもって評価します。
探索者とは、ただ魔物と人外を狩る者にあらず。
未開の暗黒に光を投げかけんとする矜持こそ、探索者を探索者たらしめるのですよ。
……とまあ大仰な言い方をしてしまいましたが、キャリカさんが薄らと感じ、ネメさんが確信を得たように、今は単純に『普通に活動するより貢献度を大きく加点してくれる仕事』といった具合に指名依頼を捉えてもらえれば結構です。
――本当は、この指名依頼には探索者には伝えらることのないもう一つの目的もありますが。
普段接点のない、有望と見做されている若手同士を組ませることで交流を深める機会を作るとともに、依頼の遂行を通じて人柄や能力をギルドが把握する狙いもあるのです。
「ケッ、耳触りの良い事を言ってやがるが、要するに餌をぶら下げてテメエの都合の良いように扱き使ってるだけじゃねえかよ!」
勝ち誇ったようにグランドリオさんが言いますが、誰も言葉を返そうとしません。キャリカさんもメルさんも、その点に関しては少なからず同意しているからかもしれません。
ネメさんも無言を貫いていますが、彼女は単に地下水路の定期点検が今回初めてではありません。むしろ積極的に同じ依頼を何件もこなしています。昇級に良い仕事と割り切っているのか、実態として雑用を任されていることに心の中で既に折り合いをつけているのか……反論するのも今さらということでしょう。
それに……若手のうちほど華のある仕事を選びたくなる気持ちは分かります。
早く一人前の探索者になりたいという目標があるからこそ、いかにも探索者らしい依頼に目が惹かれるのです。
いやあ若いっていいですねえ。
「――やってみようよ、この依頼」
嫌な雰囲気に陥りかけたその時。
「この依頼が誰かのためになるなら、何を悩む理由もないと思うけれど。それに、地下水路に行って帰ってくるだけなんだろ? 簡単じゃないか」
唯一人、ヨアさんが賛同を呼びかけてくれました。
ああ、なんて良い子なんでしょう。私の中の彼に対する評価が滝を登る勢いでグングン上がっていきます!
「何勝手に決めてんだテメエ」グランドリオさんの矛先はヨアさんへと向けられます。「話聞いてなかったのか。俺たち探索者は〝外域〟に潜るのが仕事なんだよ。昇級がちっとばかし早まるから何だってんだ。こんな誰にでもできるような雑用で時間を浪費してらんねえぜ」
「雑用だろうと何だろうと、誰かの為になる行為は無駄じゃないし、俺は善い事だと思う」
グランドリオさんの眼光に怯むことなくヨアさん。
このままでは平行線を辿るばかりだと思った私ですが――妙案を思いつきます。
「でしたら、勝負して決めましょう!」
「え?」「あア?」
ちょうどいい流れだと判断した私は、二人に指名依頼の受諾を懸けた模擬戦を提案します。
「勝負してグランドリオさんが勝ったなら、今回の依頼は請けないということでも構いません。それに対する罰則もないようにいたしましょう。こういう方が、『鉄血一座』の貴方には分かり易いと思いますが、いかがでしょう」
「――なるほどなァ。そりゃ単純明快で結構なことだぜ」
彼は先ほどまでの鋭い怒気を、燃えるような闘争心へ一瞬で変貌させ、歯を剥いて残酷な笑みを浮かべます。
「で、誰が相手してくれんだ? 言い出しっぺのアンタか?」
「いえいえ、私はか弱くて可憐な受付のお姉さんに過ぎませんから。代わりに頼れる方が勝負してくれます――ね、ヨアさん!」
「俺⁉」
腕に抱き着いた私にヨアさんが動揺するのにも構わず、ここは勢いで押し切ります!
「ここは一つ、賛成派のヨアさんと反対派のグランドリオさんの一騎打ちで勝った方の意見を採用するということにしましょう!」
「いやっ、そういう決め方は……」
「別にいいぜ。俺はよ。お前が勝負せずに降りるんなら、今回の話はナシだ」
グランドリオさん、メルさん、キャリカさん、ネメさん。
各々の抱く感情は別々ながらも、全員の視線がヨアさんを射抜きます。
「ええ~~…………」
「それじゃあ私は地下訓練室の鍵を借りてから行きますんで~皆さん先に降りていてくださーい!」
最後尾、しぶしぶ勝負を受けたものの得心いってなさそうなヨアさんの背中を押して談話室から退室させると、
「止められなかったってことは、問題なしと理解してよろしいんですよね?」
自分以外いないはずの部屋の暗がりへ問いを投げ掛けます。
じわりじわりと静寂が続き、このままでは私が誰もいない空間に一人で話しかける痛い人になりかけてしまうその時、
「――多少強引だが、戦闘能力を直接確認できる良い機会だ。問題ない」
染み出すように返答の声だけが部屋に響きます。
「ありがとうございます」
「君はあの二人が衝突すると見越して、模擬戦へと流れを持ち込んだのか? だとするならば、なかなかの誘導の手腕だ。窓口業務以外にも光る才能があるかもしれないな」
「いえいえ、買い被り過ぎですよ~。たまたま思いついただけです~」
などと言ったりして、そんなことはないと私は謙遜します。
こういう褒め方のお言葉を真正直に受け取ってしまうと、その流れで部署を異動させられてしまうかもしれません。私は今の仕事が性に合っていますので。
捜査課だとか、大っぴらには名前の言えない部署だとか、そんなところに行かされるのはごめんですよ。
そんな私の心中の駆け引きを見透かしたのか、苦笑する雰囲気が伝わってきました。
「ナナセ、心配せずとも、散々断られて今さら君を引き抜こうとは思っていないよ。賞賛の言葉ぐらい素直に受け取りたまえ」
「はい。そういう事にしておきます、ギルド長」
「模擬戦は適度なところで止めるように。七等級程度までの戦いなら、君の監督の下で万が一にも大事にはならないと信じているよ。では、子細な報告を楽しみにしている」
そうして、見かけ上の変化はありませんが、確かに部屋の中から気配が二つ消え失せます。
全幅の信頼を寄せられているように見えて、何か問題が起きた場合は只事では済まないっていう圧を感じながら、私は職員室へ鍵を取りに行くのでした。
◇地下水路【ちか-すいろ】
地名/都市/公共設備
自由都市グアド・レアルム、その地下に広がる下水道。
網目のように張り巡らされた公共設備。
居住環境の改善と維持には、雨水・汚水などを排除する
継続的な仕組みが必要であり、
レアルムの発展に併せ、地下水路は整備されてきた。
魔道具による水流制御方式の下水道は、
他の都市に手本とされるほど見事なものである。
……とはいえ、臭いものは臭く、
願わくば、入りたくはないものである。




