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事故現場

作者: 風祭 風利

みなさんこんにちは


今年もやって参りました「夏のホラー小説」の季節です


今回のテーマは「帰り道」ということで、自分が思う帰り道での恐怖体験を書かせて頂きました。


それではここから始まります。

 ある日私の帰り道で事故があったと報道があった。 駅から大通りにかけての畦道ではあるものの、街灯も少なく当然ガードレールのようなものはない。 そしてなにより車一台が通るのがやっとな場所で事故が起きたのだ。


 具体的には事件は夜中に起きて、交差点にて真っ直ぐ進んでいた車に左から突っ込んできた車がぶつかり、ぶつけられた車は道路に2回転半。 ぶつかった車は田んぼへと頭から突っ込んだ。 この事故でぶつけられた方の運転手とぶつかった車の運転手の男は死亡。 ぶつかった車の助手席に乗っていた女は重症で病院に入院中とのこと。


 そんな感じで1週間程その畦道周辺は通行止めになり、私の住んでいるアパートへと抜けることが出来なくなったので、私は最寄り駅から更に向こうの駅で降りてから帰る事になっていた。 それがようやく今日解放されて、仕事を終えてその畦道を通ることになった。


「何だかんだでこの道が一番落ち着くのよねぇ。 1駅向こうに行くと100円高くなるから、あんまり使いたくないのよね。 そこしかいい物件が無かったとはいえ、駅と駅の間の場所を選んだ私も私だけど。」


 自分の過ちを反省しつつも歩き慣れた畦道を歩く。 少しでも残業をすると辺りは暗くなり、畦道だと月明かりしか頼りにならない。 雨の日は流石に使わないけど。


 そうして歩いていると、例の事故現場までやってくる。 道路の両端には献花が添えられており、その場所で起きたことの物々しさを感じさせる。


「・・・はぁ。 やだやだ。 家の近くで事故に遭ったところを通るって、本当に嫌になる。 とっとと通り越しちゃお。」


 そう思いながら私はその場所を通りすぎようとした。 その時に夏の時期だと言うのに背筋が凍るような感覚が私を襲った。 後ろを振り返っても私以外誰もいない。 気のせいかと私はその日はそのまま真っ直ぐ帰った。


 それだけで終わるのならば良かったし、あの時気のせいだと思わないで最寄り駅を帰ることをしていれば、あの帰り道で怖い思いをすることなど無かったと、今を振り返れば後悔していた。


 そこから同じ様に畦道を帰り道に通った。 残業や上司の付き添いで遅れはするものの、同じ場所から帰ることには変わらなかった。 だけどそう感じた日からだんだんその道を通る度に、誰かに見られているような視線を感じるようになった。 でも振り返ると人一人としていない。 車通りも元々悪いせいで尚不気味に思った。


 休日にも同じ道を通ったのだけれど、昼間だったからかその視線を感じることはなかった。 やっぱりあの時間帯のみに感じるのだと改めて思ったし、そう言った視線を避けるために敢えてもう一つ向こうの駅から帰った時も無かった。


 いくら日が高いとはいえ、残業になってしまえば帰りも遅くなる。 ただでさえ距離がある会社へと出社しているので、家と会社を行き来するだけで1時間はかかる。 なので早く帰りたい時はあの畦道を使うしかない。


 だけど畦道を通る度に、日に日に視線が強くなっていくのが感じられる。 そんなことが2週間程続いた頃、事態が悪化し始める。


 ある日いつもよりも仕事が難航して、すぐに帰ろうといつもの畦道を通った時の事だ。 当然のように事故現場の横を通る。 するといきなりなにかが乗ったかのように重たくなった。 急に来たので転びそうになったけれど、なんとか踏みとどまる事は出来たものの、いきなりのことで怖くなってきた。 私は重たい身体を引きずりながら大通りまで歩いた。 すると急に身体が軽くなったのだ。 疑問に思いつつも、そのまま家に帰った。


 そんな事が起きた次の日も同じ道を歩いたら、また重たい感覚があった。 しかも視線が別のところから感じられた。 振り返ると暗闇の中とはいえ人影が見えた。


「もしかして今まで感じていた視線って・・・?」


 そうだとしても誰も通らない場所で私に視線を向けられるのもおかしいと思い、声はかけずにその場を去った。


 そして私が最も恐怖した日。 それは私が友人達と久々に会っていて遅くなった日だった。


 完全に日が暮れてお酒も飲んで気分が良くなって。 終電まではいかなかったけれど、それても大分遅くなってたと思う。


 流石に次の日が仕事じゃなかったとは言え、少し酔っている自分を見られるのが嫌でいつもの畦道を通って帰ろうとした。


 何時もよりも暗く感じたその畦道が、本当にその日だけ怖く感じた。 今日だけは本当に早く帰ろうと走った。 そんな時に限って転んでしまった。 よりによって事故現場の所でだ。


「いたた・・・はぁ情けない・・・」


 そう言いながら立ち上がろうとしたのに、何故か足が上がらない。 というよりも何かに押さえられているような感触があったから、まさかと思って振り返ったら


『・・・オイデ・・・イグナァァ・・・イッジョニゴイヨォォ・・・オデダヂハ・・・イヅデモイッジョダッダダロォォ・・・』

「ひぃ!?」


 そこにいたのは頭からドロドロの男の姿だった。 声はドス黒く、なにかを訴えかけるような叫びで私に声をかけていた。


「なに!? ・・・なに!?」


 眠気も酔いも一気に醒めて、目の前の事に混乱していた私は、身体を引きずられるような感じがした。


「た、助けて・・・! 誰か・・・!」

『オデダッデ・・・コンナコトヲジダイ・・・ワゲジャナインダゾ・・・デモ・・・オマエガイナイガラ・・・オデハ・・・オデハ・・・』


 その言葉で私はハッとした。 この幽霊は畦道に突っ込んだ方の運転手だ。 彼女は重体ながらもまだ生きているから、先に死んだ彼だけが、このしがらみに取り憑かれているんだと。


「待って・・・でも待って・・・私は貴方と一緒に乗っていた人じゃない・・・貴方とは一緒に行けないの・・・」

『ゾンナコドイワナイデグレヨ・・・ムコウニイッデモ・・・オマエガイナイナンデザミジイヨ・・・ダガラ』


「だからと言って、見ず知らずの女性に手を出すのは良くないな。」


 今度は何事かと思ったら、数珠を持った人が、その幽霊にお経を唱えて退散させてくれた。 身体から重たいものが取り外されて、一気に軽くなった。


「夜分遅くにすまなんだ。 まさかあやつがあそこまで執着強いとは思っても見なくてな。」

「あの・・・」

「明日この近くの神社に来てくれ。 そこで話をしよう。」


 そう言ってその人と別れて、私は家に戻ることにした。


 翌朝言われた場所の神社に行くと昨日の人、その神社でお坊さんをやってる人が神社の中に入れてくれた。


「1ヶ月ほど前にあの場所で事故が起きたのはご存じですね?」

「それは家が近いから当然。」

「あの霊魂は最初こそ普通にさ迷うだけだった。 それも本来ならば異常ではあるが、貴女があの道を利用し始めた頃に暴れ始めたんです。」

「私が、通ったから?」

「正確には女性だったら誰でもよかったのでしょう。 とにかく不慮の事故もこれ以上は増えないでしょう。」


 あの霊魂は昨日の時点で去ったとの事。 女性の方も目を覚ますか分からない、もしかしたら時間の問題かも知れないと行っていた。 そして帰り際に


「恐らくはもう現れないでしょう。 ですが貴女は一度霊魂を惹かれてしまった。 同じ様な場所を通る際にはお気をつけなさい。」


 そう言われて私は家に帰った。 そしてその人の言う通り、それから一切変な視線を感じることは無かった。


 ――――――――――


「って言うのが私の実体験の怖い話。 どう?」

「うわぁ・・・そう言うのって本当にあるんですね。 鳥肌立っちゃいました。」


 それから1年が経って、後輩との飲みでそんな話をした。 後輩の娘が「先輩の怖かった話を聞きたい」って言うものだから、話したんだけど、お酒もちょっと入ってるから青ざめてるように見えた。


「ほーら、あんまり飲ませるのは私の趣味じゃないから。 気持ち悪かったら帰っていいわ。 まだ遅くはないし。」

「すみません先輩。 折角お話をしてもらったのに。」

「別にいいのよ。 過ぎ去ったことだから。 明日は休みだから、疲れを癒しなさいな。」

「はい。 それでは先輩。 また来週です。」

「うん。 また来週。」


 そう言って後輩の娘を見送って、私は追加注文をする。 その間に店に設置されているテレビでニュースを見ていた。


『速報が入りました。 ○○市△△町の交差点にて部活帰りの高校生が、車に轢き逃げをされたとの情報が入りました。 高校生は現在救急搬送をされていて、頭を強く打つ重体だと言うことです。 また轢いた車は現在逃走中との事です。 現場から中継です。』


 その画面に映った交差点には見覚えがあった。


「・・・あれ、あの娘の家の帰り道じゃなかったっけ? ・・・いや、まだ被害者は重体だから大丈夫・・・よね?」


 自分から話しておいて怖くなってきたけれど。 まあまだ被害者の子は死んでる訳じゃないし、まさか私みたいにはならないよね。


 そう思っていたのだが、次の出勤でその憑いているのが見えるようになってしまったのは・・・また別の話。

いかがだったでしょうか?


身近にあることだけに、現実味を帯びていると自分では思っています。


近年でも多く取り上げられているニュースではあると思います。


皆さんも危ないと思ったら、帰り道を変えるのも1つの手だと思います。


それではまた連載小説でお会いしましょう

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