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5将来の夢

 放課後、おれはひとり教室に残っていた。提出期限付きの将来の夢という作文をおれだけやっていなかったからだ。

 高校生にもなってこんな作文書かされるのか……変わった高校だな。

「将来の夢……」

 うーん、ぼくの将来の夢は――なんだっけ? 英雄になる? 違うな、宇宙飛行士? それも違う。昔の自分も思い出せないんじゃあ作文なんて書けやしないな。


ここはテキトーに夢はでっかく望みはちっちゃいとでも書いて提出するか。


 えぇ、わたくしめ典正の夢はでっかくもちっちゃくもなりません。股間はおっきくなりますけど、それは人間の生理現象でして大きくも小さくもない普通のことです。その普通故に人間は繁栄してきました。大きくも小さくもない、ノーマルなわたくしの息子は大きい夢を抱いていること間違いありません。それは夢と共に吐き出されてしまい、朝起きたらパンツが汚れているのに気が付くはずです。考えてみてください、それが普通の夢です。夢の国の小さな夢はこどもの時に卒業しています、なのでわたくしは夢のような時間を過ごすのでしょう。右の手も恋人、左の手も恋人、つまるところわたくしの息子は幸せいっぱいの手に、真っ白な夢を描くこと間違いありません。今こそ現実へ戻り、真っ白な夢を共に描きましょう。さあみなさん一緒に――プルス・ウルトラ!


 ――いや、これ書いたら絶対に呼び出しくらう。昔国語のノートに男女の裸体を書いて提出したことあるけど、呼び出しくらったの憶えている。その時国語教師に「こんなこと書く生徒はあなたが初めてです!」って怒られた。女の先生だったけど、少し笑っていたの憶えている。


「はぁ」人間の将来の夢ってなんだろう。


「なになに? 将来の夢で悩んでいるわけ?」

 そこに登場したのは幼馴染の天子だった。

 あ、可愛い、と思っただけのこと。決して口には出していない――いや、そういう口に出すって意味じゃないからね、下ネタはもう将来の夢で語り尽くしたからもう下ネタは言わないよ。


「悩まない人間なんていないだろ」

 将来の夢だぞ。将来自分がなりたいものってなんだよ。超絶難しいじゃないか、正直逆玉の輿が一番なりたい夢だ。

「いつも悩んでいないくせに」


「おう、悩まないのがおれだ」

 おれの代わりに悩んでくれない? 悩んでも悩んでもなりたい自分って見つからないんだよね。

「嘘嘘、悩むがいい少年!」

「お前は何にしたんだよ、将来の夢」

「あ、わたし? わたしは大戦が終わりますようにって感じのこと夢にした」

 

 流石天子、その頭の中身もぐるぐるしてそうだ。

「英雄にでもなる気か? 英雄になっても大戦は終わらねぇよ」

「どうしてそんなこと言うの?」

「え、あ、ごめん」

「なんで謝るの?」


 あ、ヤバいな。なんか怒らせた? 将来の夢を汚されたみたいで嫌だったよな。分かるよ、その気持ち。おれも将来の夢を汚されてムカついたことあるから。でも相手が正論過ぎて泣き寝入りしたわ。

「えーと、大戦は終わらない。なぜならおれが死ぬから」

 こう言ったらどういう反応する?

「『大戦はおれが終わらせる』とでも言うの? 典正は何回転生したの?」


「六回だが何か?」

 お前も転生者なのか。

「六回か、凄いね。そんなに世界に愛されているのに、夢が無いなんておかしいよ」

「世界に愛されている? おれが? 逆だろ」

「逆?」


「おれは世界に嫌われているってことだ。好かれていたらさっさと死んで、転生なんて馬鹿げた遊びに付き合っていない」

 世界はおれを敵と認定した。そうじゃなきゃ転生を繰り返す意味はない。

「うーんよく分らないね」と天子。

 分からないよな、おれもよく分らないから。


 と、時間だけは経過していく。内容の無い作文を書くこと一時間、おれは自分の夢に誇りを持っていた。誰かを助けるのが夢だった――誰かを笑わせるのが夢だった。

 なのにみんな笑ってくれない。おれの道はそういう平坦な道なんだ、誰も彼もが人間の欲望を解放して、おれなんかを嘲笑う。結局無意味だ。


 そしておれは将来の夢の作文を書き終わった。

 みんなを笑わせる――それがおれの将来の夢だ。

「へーみんなを笑わせる」

「おいおい、勝手にヒトの作文見るなよ」

「別に良いでしょ、幼馴染で超絶美女のわたしなら」

 いいね、いいね。どんどん見ちゃってください、そしてもしよければそのスカートの中も見せてくれませんかね? 冗談だ冗談。そんなことしたら捕まってしまう。


「幼馴染の超絶美女か、どこにいるんだ?」やっべ、記憶吹っ飛んでるから何も話せねぇ。

「目の前にいるでしょ」

「お前部活やってないの?」

「当たり前じゃない、転生者なんだから」

 転生者だったな。あー、たぶんこの女とはチーム組んどいたほうがいいな。


「おれとチームでも組むか?」

「え? わたしと組みたいの? あはははっ」

 と、なぜかおれは笑われた。なぜ笑われるのか分からない


「わたしこう見えても五階級制覇している人間だよ」

「ならおれと組めば楽勝だろ」

「そんなにわたしと組みたいんだ」

「まぁ、仲間は多い方が生き残る確率上がるし」


「でも残念、あなたは今回も一匹狼役だよ」

 ほう、本当にそれでいいのか? おれをハブして楽しいのか? あ、でもセイヤがいるからハブられないか。でもちょっと傷ついたよ。


「羊と羊飼いを雇うよりおれを雇えよ。全部食っていやるから」

「はいサイコパス! そういうの禁止。だからわたしは典正と組まない。もし組むことあるなら他校との競い合い――学園バトルの時くらいだよ」


「おれを一匹にしておくと大変だぞ。良いのか? 拗ねるぞ、良いのか?」

「勝手に拗ねればいい」

 なんて酷い女だ。やっぱり暴力系ヒロインじゃないか……いいや、ここに精神汚染系ヒロインという言葉を誕生させておこう。おれの幼馴染の天子は精神汚染系ヒロインだと宣言しておこう。


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