2青春
おれは目を覚ました。いつもとは違う天上、知らない匂い、知らない目覚まし時計の音。
学生か、青春だねぇ。
「おにぃ、起きないと遅刻するよ!」
おにぃ? まさか今度のおれはおにぃとか言う変な名前なのか? いやまて、おにぃ、つまりはお兄ちゃん。おれに妹がいるのか。お父さんお母さん、おれの夢を叶えてくれてありがとう。ずっと欲しかったんだよね妹という存在が。
「ほら起きなさい! 典正!」
とドアが開く。おれを起こしに来たのは誰だか分からない誰かだ。誰だこの女は……。
「ほら、起きろって言ってるでしょ!」
男の子の朝を邪魔するのはいけないな。おかげでおれのアレが大きくなっているのをパジャマ越しに見られてしまうだろう。
「バカ典正! 朝から何変なこと考えてんのよ!」
「男の朝はこんなもんだ、十六だし普通だろ。こちとらこんなことで驚くほど転生繰り返してない」
おれは引っ叩かれた。朝一のビンタは良く効く。おかげで目は覚めたし、おれのあそこもしぼんだ。
こいつはたぶんおれの幼馴染だろう。記憶を辿れば、確か前の世界でも同じような女がおれの幼馴染だった。ん? あんまり憶えてないな。
まあ、幼馴染が暴力系なのはどの世界線でも変わらないと思う。
おれは急いで学生服を着た。立派な制服だ、転生を五階級制覇した時のおれなんか受験に失敗して学校に通わない十六歳だったぞ、いわゆるニートだった。今回は制服も汚れていないし、良い家族に恵まれた人生なのだろう。
高校二年生か……懐かしいねぇ。
おれは階段を駆け下り、朝飯を食わずに外へ出る。外には幼馴染らしき人物と、その隣には同級生らしき女が立っていた。
「よう、おはよう」とおれ。
たぶんこんな感じの挨拶でいいと思う。馴れ馴れしく、そしてナルシストっぽく。
「おはよう」と幼馴染の隣の女。
「おはようじゃないわよ! 早く行かないと学校遅刻しちゃうでしょ!」
「なら待ってなくてよかったのに」
「待っていなかったらあんた学校行かないじゃない」
ははーん、この幼馴染の女はツンデレという属性を持っているに違いない。本当はおれとイチャイチャしたくてたまらないが、照れてしまってこういう態度をとっているに違いない。
と、おれが予想を立てていると、
「天子、おはよう」おれの幼馴染の友達らしき人物が自転車で通り過ぎていった。
天子、それがおれの幼馴染の名前らしい。
「天子、わたしたちヤバいよ! 学校遅刻になるよ!」
「走らなくちゃ!」
おれは天子に背中を押された。
青春だねぇ。おれはこころの中で思った。