取材
「じゃあ、どこだよ、職種は?
業種は?給料は?会社の名前は...??」
「それが...」
「んだよ、言えねぇのかよ、、!」
「まだ分かんないんです。
でも、一応、決まりそうではあるっていうか...」
「フン...!嘘クセェ。たとえ、決まってたとしても、どーせ、大した会社じゃねぇだろ。
三流のど底辺企業だろ...!無能人間の引き取り先なんざ、たかが知れてるぜ...」
そんな捨て台詞を吐き、藤島さんは
俺の前からいなくなった。
このあと。
俺は額に汗して大量のタスクを片し、社長室にて、
「お世話になりました」
と社長に対して頭を下げた。
取り敢えず、かたちだけの挨拶だった。
「どこで働くか分からんが、
務まるのかねぇ?」
「それは、分かりません...」
俺は唇を噛みしめ、
帰路に就いたのだった。
帰宅後。
俺が風呂に入ったのが23時過ぎ。
勤務中の携帯は禁止されてたから21:00頃
着信があったが出れなかった。
知らない番号だった。
多分だけど、
マヒロのパパの会社の人事担当者からだと
思った。
「もう夜遅いし...」
明日、8:30過ぎにこちらからかけ直すか...」
あと。
留守番電話が来ていた。
それは、マヒロからだった。
「おっ、、、」
「明日もいつもと同じ電車で。
私のこと守ってよ山吹さん、
スーツ着て来てね。
なんか、パパがね、面接通り越して即採用だって。即戦力だとか言ってたわ。あ、明日の
電車の中で私が会社の場所とか教えるね!」
「可愛い声だな。
電話で聞いても...」
なんだか、明日が楽しみになってきた。
翌朝。
いつもの電車に乗り、
制服姿のマヒロとくっつくことになった。
「あのね、これから行ってもらう会社の場所だけど、
私が降りるとこで降りて、それで、、
これ、パパの会社の人の人事担当者の名刺...」
「え、、」
ビビった。
社名にビビった。
「ま、マジか...!?ゲーム業界きってのトップ企業。
給与とかの条件が良過ぎて。
倍率が高過ぎて入れたくても、入れない会社...!!だぞ!」
「仕事の内容はゲームディレクターとかなんとか
言ってたな...」
「私は何をする仕事なのかよくわかんないけど...」
「ま、マジでか...」
願ってもないポジションだった。
「頑張れそうかな、、、?
仕事続かなきゃ、私と一緒の電車乗れないよ...?」
「いや、もう、滅茶苦茶がんばるさ...!」
俺はそう宣言し、
マヒロと共に電車から降りた。
「なんか、駅の改札までだけど、毎日、
一緒に行けるとか、嬉しいな...!手を繋ごう、
山吹さん!」
「え」
「はぐれたら嫌だから、ね?」
「こ、恋人繋ぎかよ!?」
「うん!なんか、問題でも?」
「あ、いや...」
歩幅の大きい俺。
彼女のペースに合わせて
ゆっくり歩くのがちょい大変だった。
「私はこっちだから!ここで、お別れ。本当はもっと一緒にいたいけど、
それは無理だし...!また明日」
俺はマヒロと別れたあと、約1キロメートルの道のりを歩き、初出勤となる
会社の前に立った。
「デカ過ぎる...」
50階を超える高層ビル...
「はは...なんか、夢みたいだな」
数多のゲームクリエイターが、
入りたくて入りたくて、仕方がないだろう、
そのビルの中へ足を踏み入れることになってしまった俺。
入社して、半年くらい経ったある日のことだ。
俺はデカい仕事を任され、
成功を収めることとなる。
俺の部屋に、マヒロの奴がお祝いしようなどと上がり込み、
興奮した様子でテレビを見てた。
「すっごいなぁ!山吹さん!!
テレビに出てる...!!」
ワイドショーが
大々的に報じてた。
「うちの会社と
世界的人気アニメのキャラクター
のグッズ販売やゲーム開発を手掛ける会社がタッグを組み、合同で手掛けたスマートフォン向け位置情報ゲームアプリ
『モンスターズGO』は、
スマホの位置情報を活用することにより、現実世界そのものを舞台としてプレイするゲーム。
人気アニメに出てくる、
ふしぎな生き物「モンスター」を実際の道路で捕まえたり、バトルさせたりすることができ、また、安全にも特化して一定速度以上ではモンスターが現れない仕組みも加えました」
リリースしてから5年で、ダウンロード数は
約7億5000万。
世界的大ヒットだった。
俺はゲームディレクターとして
新聞やTVの取材に応じていた。
「今、世界的大ヒットを記録したモンスターズgoですが、苦難の道のりだったとお聞きしました」