2話
あれから一年が経った。エリアお姉ちゃんが頻繁に散財してくれるおかげで僕は、このお店no.1の稼ぎ頭になったらしい。この調子でいけば数年以内に自分を買い戻せるとオーナーさんが励ましたくれた。
ここまでで色んなお客さんの相手をした。僕の値段はとんでもなく高いらしく基本的に上流階級の人しか来ない。その中でも頻繁に来るのが公爵令嬢のエイミちゃんと、気に入った部下にご褒美として僕をあてがう王国騎士団長のおばあちゃんのアダさん。
エイミちゃんは僕より3つ上の14歳で、はじめはお母さんに連れられやってきた。公爵令嬢は男性の扱いに慣れておく必要があるらしく、その勉強の一環として僕に目を付けたらしい。今まで男性と話したことはなくって、僕が初めてだったみたい。前世で拗らせた童貞みたいな反応で面白かった。あんまり僕がからかうもんだから、すぐに襲われちゃった。商売男としてのプライドみたいなもんで、やられっぱなしは嫌だと思ってやり返すと、それがとっても良かったみたいで僕にメロメロ。本人は大金を持ってないから僕を身請けすることは出来ないらしく、迎えに来たお母さんにおねだりしているのをよく見る。
それからアダさんが連れてくる騎士のお姉さんたちも面白い。みんな最初は、騎士としてどうのこうの、って言ってくるのに、最後は我慢できなくっていつの間にか僕にまたがっている。それを見てアダさんは爆笑している。なんとも趣味の悪い人だ。まあこれが普段頑張ってくれている部下への労いなんだろうから、僕も頑張りますよ。
さて、今日もお客さんが来たみたいだ。
「レン君会いたかったよ~」
小走りで僕の方までやってくる少女。それがエイミちゃんだ。14歳で風俗狂いとか、将来が心配だよほんと。
「うん!僕もエイミちゃんに会いたかった~!」
そう言って僕も小走りでエイミちゃんの方へ行き、抱きしめあう。僕もエイミちゃんも身長は150㎝くらいでほぼ同じくらいだから、自然と見つめあう形になる。するとエイミちゃんから啄むようなキスの嵐。この子はエリアお姉ちゃんと違って濃厚なやつは行為の最中しかしてこないから楽だ。
「ふふ、お返しだ」
今度は僕からいっぱいキスし返す。色んな女性を見てきたけど僕の方から積極的にすると滅茶苦茶喜ぶんだよ。他のお客さんに聞いたら案の定僕以外の子は、みんな受け身だしマグロなんだって。今更プレイスタイル変えられないけど楽そうだしうらやましいな。
「わっ、くすぐったいよ~」
身をよじって逃れる振りしてるけど、全然離れないところも可愛い。年も近いし、もうこの子に身請けされるんだったらそうしよっかなとすら思えてくる。
多分、ミアちゃんとはもう会えないし。村のことについて調べたエリアお姉ちゃんが言ってたけど、ミアちゃんらしき人は村にいなかったんだって。もしかしたら野盗に殺されてたのかもしれない。うう、想像したら悲しくなってきた。泣きそうだ。
ミアちゃんの話を聞いてから、僕は不安定になった。たまに眠れなくなったり、一回だけ接客中にぷつんと糸が切れたように動けなくなって涙が止まらなくなったり。
「うん?どうしたの?顔色悪いよ」
ほら、エイミちゃんが心配してるよ僕。笑顔見せなきゃ。
「いや、元気だよ。何となく、いつかはエイミちゃんも来なくなる日が来るんじゃないか、って少し不安になっただけ」
「なんて可愛い生き物なんだ!!安心して!週1回は必ず通うし、お金も問題ないよ。この前、お母さんから大きな商会を一つ貰ったの。ちょうど軌道に乗ってきたところで、もう少し待ってもらったら身請けもできるから。そしたら一緒に暮らそ!元男娼ってことだから、その、・・・結婚とかはできないかもだけど、絶対大事にするし」
「・・・そうなんだ。嬉しいよ!」
心が不安定なときって、優しくしてくれる人に流れちゃいそうになるよね。まさか僕がこんなに女々しくなるなんて思わなかったよ。多分あれだ、Sっ気のあるお姉さんたちに乳首を責められ過ぎて、女性ホルモンが過剰分泌されたからかも。何言ってんだ僕は。
真面目な話、ずっとここにいるわけにもいかないし。自分を買い戻したって、どこかのお嬢さんと結婚して養ってもらうんだったら、お金持ちの方が良いよね。いつまでもミアちゃんを引きずるわけにもいかない。どこかで気持ちに区切りをつけるべきなんだ。だからもう、ミアちゃんのことは忘れよう、その方がいい。
「やった!もう身請けした後のプランは考えてあるんだよ。まずは公爵領を色々案内してあげるよ。それから私の商会は外国とも貿易しててね。海を渡ってるんだよ。さすがに外国にはいかせられないけど、船に乗せてあげる。それから、「ねえエイミちゃん」 、、どうしたの?」
エリアお姉ちゃんは独占欲強くてちょっと腹黒い部分がある。エイミちゃんも独占欲強いけど、それは若い子ならみんなそうだし大人になれば落ち着くだろう。僕も若いけど、前世の分も合わせたら30歳超えるしなぁ。あ、そうするとエリアお姉ちゃんは27歳だから一応年下になるわけか。うーむ。でもやっぱり身請けしてもらうとなるとエイミちゃんかな。
「今日は生でしよっか。特別だよ?」
「え、、、まじ、、、?」
素の喋り方ってこんな感じなんだ。僕の前では猫被ってたんだね。
「まじまじ。いいでしょどうせ身請けするんだから。ちょっと早くなってもどうってことないよ」
「そ、そうだね、、!そうと決まったら早くしよ!気が変わらないうちに!ほら、ベッドベッド!」
「はいはい落ち着いて、逃げないから」
背中を押されてベッドに倒れこむ。
ごめんね、ミアちゃん。