10話
あの夜からしばらく。表向きは何事もなく暮らしていた。エリアお姉ちゃんに襲われ、裏ではミアちゃんに毎晩のように押し倒されていたけど、何とかばれてないようだ。
でもこんな日々が長く続くはずがないし、これからどうしようかと頭を悩ませていた僕は、ちょっと前に犯した過ちのことなんかすっかり忘れていた。今日この時までは。
「レン!!!一体どういうことだ!!!説明しろ!!!!!」
扉を蹴破る勢いで、僕とミアちゃんのいる私室にエリアお姉ちゃんが入ってきた。一瞬驚いたものの、遂にミアちゃんとの情事がばれたのかと思い、前々から考えていた言い訳を頭の中で整理する。
「あの公爵の糞ったれ娘が私のところに来たんだ。お腹に子を孕んだ状態でな!誰の子かと聞いたらレンのだと言うんだ!!!あれは本当にお前の子なのか?!あいつの妄言ではないのか?!!」
その言葉を聞き、過去の記憶が蘇る。
確か、、僕がちょっと自暴自棄になっていたとき、生でやったような、、、。まさかあの一回で?エリアお姉ちゃんとはあれだけしてまだなのに。ウソだろ、、、。
「・・・一回だけ、、、生でしたことある、、、」
「っ!!、、、お前!!!!このっ、!!裏切者!!!どれだけお前のことを愛していると思ってるんだ。仕事中退屈しないように娯楽も取りそろえたし、勉強してみたいというから教材一式も取りそろえた。他にも、レンが不自由しないように使用人たちにはレンの命令は最優先に遂行するように言っている!極めつけはそいつだレン!ミアの側にいたいというから、我慢して我慢して我慢して!レンのためを思ってミアを専属にしたのに。、、、うう、その仕打ちが、、、これか?」
始めて見た。あのエリアお姉ちゃんがぼろぼろと涙を落とすところ。
「いつも私よりミアだし、、、公爵令嬢には子供がいる、、、。なぁ、レン、、、お前は一体私に何をくれたんだ?」
・・・僕は、、、エリアお姉ちゃんに何をあげたんだろう。体?そんなの男娼時代に死ぬほどあげた。じゃあ、、、何だろう?
「、、、人生、、、かな」
無意識のうちに出た言葉。特に意味があるわけじゃない。何となく、ほんとに何となく出た。
「人、、、生、、、?どういうことだ?」
「僕は人生をあげたんだよ。エリアお姉ちゃんに」
考えてもないのに口からすらすらと出る。
「野盗に攫われて、奴隷になって、男娼になって、最後はエリアお姉ちゃんに身請けされて。僕が自由に生きてたのは最初の村にいたときだけ。それからは誰かに僕の時間を売る日々。最後は人生まで売っちゃった。エリアお姉ちゃんに」
絶対に決壊しないように、自分を偽ってたのに。
「僕が攫われたときに、エリアお姉ちゃんは助けてくれなかった。騎士団もよこさないし、警備隊も動かさない。違法な男性奴隷として売られたときも、奴隷商を捕えなかった。男娼として働いてるときも、黙認して、しかも定期的に通って。何もしてくれなかった。挙句にはミアちゃんを出しに使って僕を身請けするだって?あきれるよ。僕をお金で買って、愛せだって?頭がおかしいんじゃない?お金を払ってもらったから、結婚しただけで誰がお前みたいな年増と好き好んでするんだ。あくまで仕事だよこれは。ビ・ジ・ネ・ス。どうせならエイミちゃんが良かったね。だから生ハメしたんだ。その時は結婚もしてなかったし彼女もいなかった。なら問題ないよね?お店のルールにもそんなことなかったよ」
ふー、ふー。遂に言っちゃった。言ってやったぞ。もう後戻りはできない。ずっと隠してた思い。全部ぶつけてやった!!
「あ、、、あ、、、レ、、、、、レン?ウソだよな?私のこと愛してるよな?ちょっと頭に血が上って口走っただけだよな?」
急におどおどして。ほんとに女王なのか疑いたくなるね。
僕は何も言わない。
「、、、、、、、嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。レンは私のことが好きなんだ。、、、そうか、これは愛を試してるんだな?何を言われても私の愛が変わらないか見てるだけだよな?」
黙ってエリアお姉ちゃんを見つめる。
「うっ、、、。そ、そうだ。レンはお金で愛を確かめるのか?それだったらもっと払おう。な?いくらならレンから愛してもらえるんだ?教えてくれ?言い値で払おう」
何でエリアお姉ちゃんは僕のことを嫌わないんだ?
「公爵令嬢のこともちょっと気が動転しただけで、何とも思ってないぞ?何ならそこのミアだって孕ませてもいい。う、うちのメイドたちだって好きにするといい。どうだ?、、、あ、えっと、あれか。孕ませるのを手伝えばいいか?やってる間は少しでも気持ちよくなるように、乳首とか、お尻とか舐めるぞ?好きだよなレンは」
エリアお姉ちゃんはどうして僕を自由にしてくれないんだ?
「・・・ねぇ、エリアお姉ちゃん」
「!!!何だ?何でも言ってくれ。私はレンのためだったら命だってかけるぞ。女王をやめてもいい。フレアは嫌がるだろうけど何とかして即位してもらうから」
「愛されたいんだったらさ、自由にしてよ。エリアお姉ちゃんは束縛が強すぎるんだ」
「、、、分かった。善処する」
「うん、ありがと。僕もヒートアップしすぎてごめんね。ちゃんと愛してるよエリアお姉ちゃんのこと」
なんか本音を言ったらすっきりしちゃった。
「うん、うん、私の方こそごめん。私も愛してるぞ」
「とりあえずエイミちゃんのとこ行こっか。もしかしたら僕の子どもじゃない可能性だってあるし」
「そうだな」
僕とエリアお姉ちゃんが部屋を出て、ミアちゃんが遅れてついてくる。
「あ、エリアお姉ちゃん。さっき許してくれるって言ったから言うけど、僕ミアちゃんともやっちゃった」
「ああああああああああああああっ!!!脳が破壊されるぅぅぅぅぅ!!!!!!」