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96:戦いの流れが変わる時

キックスのおかげで一命をとりとめていたグレイスたちだが、恩を仇で返すような真似をマルファスたちはしてしまう。

「ジーン、迎えに来た。 って、お前らかなりボロボロだな」


「マルファス、あんたは元気そうね」


「今は君と争うつもりはない、グレイス。とにかく天使の全貌がわかった今、話し合いの余地はないと判断した。一度、戻り態勢を立て直すぞ」


腕組みをしながら呆れたため息をつくマルファスに対して、ニーデルベングは少し安堵の表情を浮かべていた。


「しかし、ウラノス達の猛攻を振り切ったとは薄々感じていたが運のいい奴らだ」


「それについては私も、そこの竜人と同感だ。というか、天使の従者である竜人がなぜ革命軍にいるんだ」


「それをいうなら、うちのリーダーは俺と同じ竜人だぞ。なにか文句でも?」


ニーデンベルグは、自分の顔をキックスの顔スレスレまで近づけてガンを飛ばすと、キックスは顔をそらして私たちを追い出そうとする。


「とにかく! ここにはもう用はないのだろう? さっさと帰ってくれ! これ以上、君たちを擁護することはできない」


「そういうわけにはいかない。私たちはただジーンたちを連れ戻すためだけに出向いたのではない」


マルファスが家の玄関を蹴り飛ばすと、ニーデンベルグはキックスの首を後ろから絞めて玄関の方へ歩み寄る。


「全員でここを出るためだ。悪く思うなよ?騎士隊長さんよぉ」


「行くぞ、お前ら」


「なにやってんのよ、あんたたち! さっき一瞬で出てきた技を使えばいいじゃない」


「黒魔術:転送は2人が限界だ。ここから拠点に戻るには自分の足しかない」


そう言ってマルファスは私たちを引き連れて城を横目に走り抜ける。だが、キックスはただ捕まっているだけではなかった。彼は抵抗し、ニーデルベングに刃を向けた。


「私はすでに警団に連絡を入れている! すぐに私の部下がやって君たちを捕らえるぞ!」


「ハッタリはよせ。貴様があの短時間でそのような芸当ができるか」


ニーデルベングが姿勢を低くして戦闘態勢を取っていると、すぐにキックスは走り去ろうとする。だが、それを察してか、マルファスは先に影を伝って回り込んでいた。


「お前、なぜ逃げる。戦えば我々など圧倒できるはずだろう」


「うるさい! 私はもう巻き込まれたくないだけだ!」


「巻き込まれたくない? どういうこと?」


「どういうことだと? グレイス・アルマン、この現状を見ろ! 私たちがこんな城下の真ん中で戦っているのにも関わらず天使は私を助けない。私の部下さえも誰も来ないのだ! 戦いが怖いのではない。戦う人間がいない? 違う。ただ、もう私という人間が必要ないのだ!」



確かに、周りを見渡しても静けさだけがこの城下町を包んでいた。これなら普通に戻っていっても誰にも気づかれないだろう。


「キックス、あなた......」


「憂いの眼を向けるな。グレイス・アルマン! こうなれば、貴様と決闘を申し込む! 貴様が負ければお前たちをセイネプトス様の前にその首を晒してくれる!」


「あんたが負けたら?」


「私を殺してどこへでも行くがいい」


キックスが姿勢を低くしながら剣を背に回して構える。私も私自身の力を試したい。


『私の力は借りないというのか、グレイス』


「マリス、あんたの出番はないよ」


レイアさんから借りた剣を取りだして、構えるとキックスが消えた。すると、後ろに気配を感じた。

気配を頼りに剣を構えていると、そこからキックスが突然現れて私をなぎ倒そうとする。だが、瞬間で自分の剣がキックスの一撃から私を守ってくれた。


「あれは、竜人族の剣......。どこから習った」


「竜人の族長、ヨルムガだ! 王国の騎士たるもの、すべての剣の流派を習得せねばならない。だからこそ、最強の部隊だったのだ!」


すると、急にキックスの動きが止まる。立ち上がったと同時に剣で円を描くようにした後、こちらを向いた。


「だが、その栄華も天使の従者天界警団になり果てた時から堕ちていたのかもしれない。だが、そんなことはどうでもいい。今が守られるのであれば私は今を壊すお前たちと戦うまで! 食らえ、基礎魔法:アースバウンドウェーブ!」


剣の刺さったところから地割れが始まり、私の元へと向かっていく。私は大きく飛び立ち、次元鏡からフェニックスを一瞬呼び出し、空を駆ける。その後、フェニックスから飛び降りてキックスの元へ向かう。私だって、基礎魔法くらい!


「基礎魔法:フレイムカッター!! ぶった切れろ!!」


防御されていたキックスの剣は折れて吹っ飛んでいく。すると、キックスは吹っ切れたかのように両手を広げた。私は彼に首元に刃を向ける。


「あんたの負けよ」


「そうだな、私の負けだ。遠慮するな。殺すがいい」


「本当にそれでいいの? 本当に町のことを思ってるなら、いろんな世界を見ても損しないんじゃない? 未練がないというのなら、私はすぐにでもあなたを殺すけど」


「......天使の部下である以上、君たちに負けては死も同然だ。だが、もし私の願いが叶うというのなら、もう少しだけレイヴン王国再建の糸口を探りたい」


「じゃあ、うちに来る?」


手を差し伸べると、キックスは手を取った。彼が立ち上がるのを見て私たちは拠点を帰る準備を始める。みんなが荷作りする準備を見届けた私は次元鏡からケルベロスを出して、キックスを加えたみんなを乗せて拠点のあるソル街へ足を進める。

キックスを加えて、革命軍本拠地へと戻すグレイスたち。

戦いは現状、天使が圧倒的に有利な状況だ。この状況を打破することができるのか......。

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