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80:人助けと最悪の化身

自信を犠牲にしてニーデルベングを助け出したアリス。

それを見届けいたグレイスは彼らの元へ一度駆け寄る。

 「アリス!」


ニーデルベングの元に向かおうとしたが、それよりも先にアリスの腕が剣を受けていた。

彼女の身体が頑丈で屈強なのが功を奏しているのか、剣はその傷から離れようとしない。


「どうして、オレなんかを......。オレは君に失礼なことを......。君の願った最後の希望を踏みにじった竜人族をなぜ」


そういうと、アリスはニーデルベングに笑いかけて


「どうして、だろうね。でも、困っている人がいたら助けたくなっちゃうんだよね。誰かが私にしてくれたように私もそうでありたいから。ただ、それだけ」


ニーデルベングはハッとして立ち上がり、王国兵の剣を拳で叩き折った。そして折れた剣先を引き抜き、刃を向けた兵士に突き刺した。


ニーデルベングは、彼自身の来ていた服を少し破り患部にきつく巻き付けていた。


「竜人は治癒能力には長けている。そのままにしておけばしばらくすれば治る。君は、その私たちと違うから時間はかかるかもしれないが。いけるか」


「うん、こういうのなれっこだし。それより後ろ!」


ニーデルベングの背後に歩み寄るオークはこん棒を振り下ろそうとするも、それは私が許さない。フェニックスを利用して空から弾丸を打ち込んだ。弾痕から燃え広がっていき、オークは倒れていった。


「二人とも!」


「グレイス! ガイウスをやっつけたの?」


「ほとんどね。まだ、彼には残りの天使の居場所とか知りたいこと聞かなくちゃ」


二人と一緒にガイウスの倒れている元へ向かう。彼は虫の息だが、まだ生きていそうだ。


「殺される前に教えて。残りの天使の居場所を」


「......殺すつもりか。だが、残りのものたちは私以上に手ごわいぞ」


「それでも、私たちは......。天使が私たちを否定する限り、自由は訪れない」


その決意の固さに折れたのか、彼は口を開いた。


「木を司る天使の居場所は、城下町から北上した森にいるはずだ。だが、ウィナスはわからない。あやつがなにをしたいのか、何をしているのか......。残っている五属聖はそれくらいだろう。残りの天界十二使は天界でしか見たことがない。行くのはホネだろうな」


あっけなくも情報を与えるから何か裏があるんじゃないかとも思うけど、今はそれを信じるしかない。

そして、彼の胸に剣先を向ける。


「ありがとう、教えてくれて。そして、さようなら」


「最後に強き人間の心に敗れたこと、誇りに思う」


だが、その剣は一向にガイウスの胸に刺さらなかった。剣にはなにか黒い靄が引っかかっているように見えた。その先を追うと、そこには城で出会った魔人、パンドラがガイウスを見つめていた。


「いけませんよぉ、ガイウス殿~。悪魔に絆されるなど、天使として失格ですね!」


「黙れ、パンドラ。悪魔と共闘する道を選んだところで我らの魂はとうに穢れている。速くオレを殺せ! グレイス・アルマン!」


そんなこと言わなくてもと思いながらも私は剣をもう一度刺した。だが、またも黒い霧が覆われていき、その中で腕が掴まれる感覚に陥った。霧はどんどん形になっていき、腕となっていた。


「パンドラ、なんで邪魔するの」


「彼が実験に必要な材料だからですよ。あなたと同じようにね!」


私と同じ? どういうこと? 混乱していると、パンドラは自分の身体を一瞬霧状にしてその中から永細い箱状のものを取り出した。あれは、なんだ?


「いいことを教えてやろう、グレイス・アルマン。これは、冥界に潜むある悪魔が封印されている石棺だ。それを天使の力で改造してもらった」


そういうと、石棺が形を変え、注射針のようなものが下から出てきた。それをガイウスに打ち込むと、ガイウスの身体から異様なオーラが出始めてきた。すると、突然ガイウスが苦しみだすと同時に鐘の音が鳴った。あの鐘の音......。 この世界に来た時と同じ音?


ゴーン、ゴーン......。


「な、なんだ、この地響きのような音は!?」


ニーデンベルグは耳をふさぎ、地面に顔をうずめていく。他のみんなは少し首をかしげながらも地面の揺れを感じていた。


「じ、地振れ? グレイス、ガイウスが大きくなってきているぞ? 離れるんだ!!」


彼の鎧も、顔もただれて影形もなくなっていった。鐘の音は鳴りやまない。ガイウスは、声も発せず、ただうなり続ける。うなり声はあの鐘の音にも聞こえる。



「な、なんなのあれ」


「ペスート。最凶最悪と言われた悪魔は、その力を生み出したルシエルさえも震えさせ、彼自身が封印した。生まれることが罪だったのだよ。君に意思が生まれたように」



意思? さっきから何を言っているの? 話の見えないままガイウスはうなりをあげて足元をどんどん汚していく。草木も虫のような小さな生物も瞬間に黒ずんで灰になったようにその命を散らしていく。



「グレイス・アルマン、きみは今のガイウスや我々と同じ実験態なのだよ。君の身体は、マリスとの強制上級契約によって作られたルシエル復活のための器なのだよ!!」



私が、彼を復活させるための器?

私は何も考えられないまま、サバトに手を掴まれて引っ張られ続ける。

だが、パンドラは追いうちをかけるように私の視線から逃れない。


『耳を貸すな、グレイス。彼奴が真実を知っているとは限らない。貴様、何を知っている!』



「ルシエル様から聞いたことすべてだ。私はあの方の右腕としてグレイス・アルマン、お前の魂を天に還す。そうすれば、あの人は復活する! 美しい体と力と共に!! さぁ、暴れろ! ペスート! 世界を破壊し、儀式の下準備へと進めるのだ」


あれを止めなければ、私に幸せな未来は訪れない。でも、自分自身が、ルシエルになる未来しかないのならこの抗いも無意味なのだろうか......。

ガイウスは、パンドラの持っていた凶悪な悪魔「ペスート」との強制契約によって変貌していった。

グレイスは自身がルシウス復活の器と知った今、天使とどう向き合うのか......。

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