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8:ベルーゼブと少女

なんでもすると言ってしまい、厄災を撒く悪魔ベルーゼブとの勝負を始めるグレイス。

彼女と悪魔、マリスはこの状況をどう振り切るか。

ベルーゼブは黒い箱を持ち上げると大量の虫がこちらを攻撃し始めた。虫は大きな塊となってひょうやあられが降ってきたような痛みが襲う。


『悪魔使いか......。面白い、この厄災のベルーゼブを殺してみろ!』


虫の塊は形をなし、ひとつの虫に似た容姿のモンスターに変身した。モンスターとなったベルーゼブは俺をさらにいたぶる。さすがにやられてばっかりじゃいられない。


「ジョン、頼む!」


ジョンに微量の回復魔法と筋力強化の魔法を唱えるとジョンはいつもよりも素早くベル―ゼブの足に噛みつく。ベル―ゼブは足の部分だけをまた小さな虫に戻してジョンを撃退していく。どうやらあいつの魂はあの虫のどれかだけど、移動し続けているから噛みつくのが難しいらしい。なら、俺も援護する!


「虫は火に弱いはずだ。エレメンタル:フレア!」


俺は散々父親に教え込まれた炎の呪文を解き放った。あのときとは違う。そう信じて......。

炎は指から小さくゆらゆらと輝いている。まるでベルーゼブに届きやしない。ああ、やっぱり基礎魔法の才能なんてなかったんだ。それを見たマリスはまたも笑う。


『貴様の魔法が、あのガラゴより手ごわそうなあれに勝てるわけがないと分かっているだろう!』


初めから分かっていた。それでも、ジョンの負担を少しでも減らしたかった。俺は、あがくこともゆるされないのか!


「そんなこというならお前も戦えよ! 俺がこいつに殺されたらお前も困るだろ! 何とかしろ!」


笑っていたマリスはその言葉に笑うのをすぐにやめてこちらをにらみつけてきた。


「な、なんだよ」


『「お願いします。」それが相手に対する頼み方では?』


ケンカしていてもベルーゼブの攻撃はやまない。大量の虫が俺を中心にして台風のように周りを回って柔らかい肌を傷つける。


「わかったよ! お願いします!!」


『頼み方としては0点だな。だが、この状況は厄介だ。仕方がない』


そういうとマリスはジョンの中に入り込んだ。その瞬間、静電気のようなものがびりびりとジョンの体内から放電され、筋肉や牙が大きくなっていった。それと同時に自分の魔力がどんどん吸われて行っているような感覚にも陥っていた。貧血のような立ち眩みが襲い、その場で座り込んでしまった。


俺のことを弱点だと思ったベルーゼブは一気にこちらに乗り込んできたが、背後から強化されたジョンがベルーゼブの真ん中を食い破っていた。今度は再生しない。ジョンが口を開けると少し青い炎が漏れ出してきた。


『本物の地獄というものを見せてやろう。厄災よ』


再生できなくなったベルーゼブは精神的に追いやられていた。一瞬、ジョンの口角が上がったような感じがした。嫌な展開だ。そう思っているとジョンの口から一気に炎が吐き出された。


ベル―ゼブ及びその本体であるアブラムシは灼熱の炎によって焼き尽くされたのだ。勝利の雄たけびをマリスは満足げに上げると地下室の壁のひとつがヒラリと変わってフロストとガラゴが見つめていた。マジックミラーなの? あれ。


「素晴らしいよ、君。そういえば名前は?」


「グレイス、グレイス・アルマン......」


そういうと上がっていた階段が下ろされた。フロストは俺とジョンを順々に運んでベッドに寝かしつけた。


「いやあ、素晴らしかった。そういえば、悪魔を切り離す方法だっけ。教えないといけないね」


「そうですよ。早く教えてくんない?」


髪の毛をなびかせてヤンキー女子みたいな口調で俺がせかすとフロストは唐突に眼鏡を付け始めた。


「悪魔を切り離す方法は一つ。君とその悪魔とを器の契約魔法で縛った張本人を捜して、脅して解除させるか殺すしかないね」


とてもシンプルなものだった。それと同時に、現状ではこいつと離れることができない絶望が押し寄せてきた。


「張本人って、そんな曖昧な」


「悪魔のようなものと契約させられるのはこの世の理を越えた天使だけだ」


天使、そうなのか......。それなら探しにいくしかない。俺たちをここまで連れてきた天使を!

悪魔マリスの手によって戦闘不能になったジョン。彼に自責の念を感じながらも

自分たちを切り離すための旅に出ていくのであった。

次回「少女と旅立ち」



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