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73:天国への道筋とデコボコトリオ結成

活路への希望、それは竜人族のいる天国へとたどり着くことだと考えたグレイスたちはなんとかしてその方法を見つけ出していく。

 アリスの言葉はとても信じがたいことだった。竜人族はなんと、天国つまり天界への道すじに住んでいるらしい。それが本当ならこの戦いは不要になるし、天使を一網打尽にできるかもしれない......。


「え? 天国って、天界とこの世界をつなぐっていう?それってアリスは知ってたの?」


「ううん、レイちゃんから聞いて初めて知った!」


「そうなの⁉︎」


レイアの方を見ると、彼女は切り株に座る私にある本を渡してきた。なんだか古い本のように見えるけど......。


「キオナの読んでいた古文書です。ここに竜人族の方が書かれていました」


「もしかして、天国の行き方も?」



「書いてはあると思うんですけど、文字が古すぎて読めないです」


開くとそこには当たり前だが日本語でも英語でもない、記号のようなものが羅列されていた。私も当然読めないし。だけど、これさえ読めればなんとか......。


「キオナが読めるってことはエルフの人たちは読めるんじゃないの?」


「それは、難しいかもね......」


ロンドの膝枕で横になっているエリエがこちらに体だけを起こして話始める。


「無理しないでよ、エリエ!」


「わかってる。でも、もうそう長くはないだろうから......。私もキオナくんと同じように魔術の心得を持ってるけど、あの本の解読は一筋縄ではいかない。キオナだってすぐに読めたわけじゃない。たくさんの本を読んできたから少し早かっただけ。私も読んでみたけど、全然わからなかった」


「ほかに読める人がいたらいいんだけど」


そこにいる面々が顔を俯かせていた。だが、マルファスだけは違った。


「『アルマンのちにて天の道を見つけたり。天の道へと通ずる扉を開きし者、万物の法を知り、天をも穿つ』アルマンのちとはなんだ? 掠れていて読みにくいが」



表情を変えず、淡々と本の内容と思われることを語り出すマルファス。彼は一体何者なの? ていうか、これ読めるのかよ!


「え、読めるの?」


「王族の経典は古代文字ばかりだからな」


「え、王族? ごめん、話が読めないんだけど」


「私は、王の影だった。王に成り代わるための訓練で契約魔法の一つ、黒魔術を習得したり、王族の読む経典を学ぶのは当たり前だった……」


「へぇ……。でも、ここであなたが役に立つとはね! いままでイマイチ活躍できてなかったけど」


そう言うとマルファスはギロリとコチラを見つめた。だって、本当のことじゃん。監視役に徹してるのに報告もなしに敵が来ちゃうし、失敗が多い印象しかないもん。


「なんだと?」


「だって、あんたいっつも『すまない』って言ってるじゃん! 見張りなのに役に立たってないってことじゃん」


「貴様らの護衛をしているわけではない! 私はアリスの護衛をしているにすぎない。彼女に降りかかる火の粉であれば私は全力で阻止する。だが、それ以外はどうでもいいのだけだ!」


「結果的にアリスを危険な目に合わせてたら意味ないじゃん!」


「小娘が」


「んだとこ”ら”ぁ!?」



マルファスと私がにらみ合っているとアリスがものすごい力で引きはがしてきた。体も大きくなったけど、力も強くなっていて驚いてしまう。


「まぁまぁまぁ! 二人とも喧嘩しないの! ここはみんなで協力して戦っていかないと! そうだ、二人でさ竜人の国行って来たら?」


「アリス、どうしてそんなことになるの?」


「アリスの命令とはいえ、それは従えない......。こんなじゃじゃ馬、危なっかしいにもほどがある」


アリスはマルファスの頭を優しくたたいてたしなめる。


「危なっかしいって思うなら見張りが必要じゃない? そんなことができるのはあなたしかいない」


そういうと、焦ったような顔つきでサバトが割って入ってきた。


「いや、アリス。 僕とグレイスがいけば話が早いんじゃないの?」


なんだか変な空気になりつつもアリスは少しにやついた顔でサバトの肩に手を置く。


「サバトは甘やかさないの。 ていうかグレイスはキミだけのものじゃないけど?」


サバトは急にモジモジしはじめた後、顔を赤らめて私の顔を見ないようにそっぽを向いてしまった。ちょっとかわいい。


「わ、わかってるよ。僕はただ、効率の話をしようとしただけで......」


「ありがとう、サバト。でも私、こいつと行くわ」


「なに?」


マルファスがまた私に楯突こうとするも、少しお姉さん風を吹かせておこうかしら。


「私は大人だから、苦手な人間?ともやっていかないといけないってわかってるし? ちょうど、あなたの実力を知りたかったから。アリスの意見に賛同するわ。あなたはどう?」


すると、彼は嫌そうな顔をしながらアリスの方を向いて


「こいつの監視をします......。ですが、現実問題魔人の私と悪魔と一緒に行動している彼女では畏怖の対象になるのでは?」


「そこは大丈夫。レイちゃんには、文字の読み書きとか勉強してない私の代わりに『彼らは竜人の末裔である私の仲間ですよ』っていう手紙を書いてもらったから! それを渡しておくね。はい、グレイス」


そういうと、アリスは紙を渡してきた。そこには、奇妙な文字列が書かれていた。英語のような筆記体で書かれていて完全に読むことはできないが、なんとなく内容が伝わってくる不思議な文字だ。これが彼らの今の言語ってことなのか。ま、読めなくても話せるから興味ないけど。


「よし、じゃあここは任せた」


私が軽口でみんなに一旦の別れの挨拶をすると、みんなが手を振ってくれた。だけど、サバトだけは、少し戸惑いを見せていた。そして、彼は私の元に着て腕をつかんできた。


「魔人や悪魔だけで平気なのかい? 君は今まで以上に死に急いでいる気がする。悪魔になにかそそのかされているなら......」


これまでもサバトは何度も悪魔を敵視してきた。それは単なる嫉妬とかそういう可愛いものだと思っていた。でも、彼は天使のそばで仕えていたからこその偏見がまだ残っている。それも相まって気にかけてくれているんだろう。

それでも私は彼の手を払って強くその手を握りしめた。


「サバト、これは私のやりたいことだから。悪魔が信用ならないのはわかる。でも、私を信じてくれるなら、マリスを信じている私を信じてほしい。私もマルファスを信じているアリスを信じているからマルファスと行くと決めてるところもあるし」


「......。ははは、キミは本当に強いなグレイス。わかった、でも気を付けて君の身体もみんなと同じでボロボロなんだ。無茶はしないで、必ず帰ってきてくれ」


強く握りしめるサバトに重なってレイアが手を置き、私を見つめる。


「また、温かいご飯を作って待っています。お気をつけて」


アリスもまた手を上にのせる。


「出迎えてくれていないけど、エリエもロンドもバベルもきっと私たちと同じ気持ちよ。私たちもあなたたちが帰る場所を今度こそ守って見せる」


互いに目を合わせあい、手を放す。そして、私たちは彼女たちの元を離れていった。荒れた大地はそよ風を生み、木々をざわめかせる。そして、その風は私たちの肌を逆なでしていく。






竜人族は一筋縄ではいかない。

強大な力に急ごしらえの3人組はどう挑むのか。

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