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66:ゴーゴンとテイマー覚醒のきざし

武器庫を守るように一人たたずむ悪魔、ゴーゴンがグレイスたちの前に立ちはだかる。

面倒ごとは起こしたくはなかったが、武器庫を奪い取るためには力ずくでも彼女を倒す必要がありそうだ。

「ゴーゴンなら、目を合わせた途端石になるんじゃなかったっけ」


彼女の目や蛇の目を普通に見つめていても、特に何も起こらない。サバトは目を見開いて槍を何度もゴーゴンに突きつけるも、ひらりひらりとよけられて行っている。私も銃を何発か打っているものの、全く当たる気配がない。


「あんたたち、ほんと単純な動きしかしないわね。ちょっとがっかりだわ......石にするほどの価値もないわね」


「早すぎる......。こいつ、本当にめんどくさいな」


「くっ......。私にもう少し魔力があれば......」


サバトも私もヘトヘトになりながらゴーゴンを追いかけていたが彼女の動きが早すぎてまったくとらえることもできなかった。

地面に座り込む私たちを横切り、アリスが凛とした態度でゴーゴンに立ち向かう。


「ところで、あなたはどうしてここを守っているのかしら? 悪魔にはなんの利益のない武器のはず」


そういうと、ゴーゴンはぷるんとした唇を大きくゆっくりと広げていく。不気味な笑顔だ……


「イケてるお方に頼まれたのよぉ……。 そう、そこにいる悪魔さんみたいな? あなた、とてもタイプだわぁ」


ゴーゴンはマリスに色目を使ってくる。

前に夢で見た、ノマドの素顔......動物の頭と短いツノの雰囲気がマリスと似ていた。 彼らは何者なのかは知らない。今分かるのは、悪魔の趣味が悪いってこととノマド自身も悪魔だということ......。


「マリス、お前やはり裏切り」


「サバト! 違うから……。彼は私たちを裏切らない。あの人は似ていると言っているだけで、彼自身ではないことくらいわかるでしょ?」


サバトのマリスへの疑念の声を遮ってまでマリスを擁護したかったわけじゃないけど、彼を信じてやれるのは私くらいだと思う。マリスは依然として相手を見下しているような目つきでサバトを見つめる。こいつ本当にムカつくけど、絶対に私たちを裏切るようなことはしない。私に不利益になることはしないってわかってるから。


「そうかもしれないが、こいつは彼女と同じ悪魔だ。何を考えているかわからない」


『私が言えることはただ一つだ』


そういうと、マリスは拳をサバトに向ける。えっ、いや待って......。だが、私が考えていた方向とは違う方へと腕が伸びていく。その先はサバトではなくその後ろにいるゴーゴンの髪、つまりはヘビを掴み取った。


『このムカつくヘビ頭は、私とは関係ない。関わる気にもならん。それに、こういう風にすで勝った気でいるような顔を見ると無性に潰したくなる』


そういうとすぐにつかんだヘビを振り下ろして、自分の膝に相手の顔をぶつけた。 とてつもない速さのせいで鼻が潰れたゴーゴンはよろけて地面に座り込む。


「れ、レディになんてことするのよ! アンタたちただじゃおかないから!」


「マリスさん、今はあなたを信用します。エレメント:フレアソード 炎よ、剣にやどれ」


レイアさんは基礎魔法の炎を剣にエンチャントして炎を纏う剣にした。そうすると今までの冷静で礼儀正しい彼女とは思えない荒々しい戦い方でゴーゴンを攻める。


「おらぁああああああ! 燃えろ! 全部、燃やし尽くせ!」


剣を振るうだけでも危ないのに協力するにはあまりにも粗暴な戦い方に私たちは離れて戦うしかない。


「ここじゃフェニックスは大きすぎる......。ケルベロス! レイアさんを後援するのよ!」


今の私ができるとすれば、モンスターを召喚して指示することくらい。もし、彼らの力を私自身が使えたら......。? そういえば、基礎魔法を装備品に付与できるなら、契約したモンスターの力を例えば銃とか、剣とかに宿らせることとかできるのかな。今まで考えてきてこなかったけど、もしそれができるなら私自身も戦力としてみんなの役に立てるんじゃ......。



「やだ! この子なに? さっきと雰囲気違うんですけど!? それに、地獄の番人ケルベロスまでいるの? でも、アタシ負けない!」


ヘビを自由自在に操り、レイアさんの手を縛った後剣を持っていた右手の方をひねる。レイアさんの手から剣が滑り落ちる。


「ケルベロス! その剣を掴んでヘビを切れ!」


できるかどうかはわからないけど、やってみる価値はある! ケルベロスは落ちゆく剣を口で見事にキャッチしたものの、剣をこちらに返すことしかできなかった。


「やっぱ、武器を使うのは難しかったか。なら、私がやる!」


レイアさんの剣を握りしめ、レイアさんを締め付けるゴーゴンの元へと駆け寄る。剣なんて使ったこともない。重くて切り上げることなんてできるんだろうか。筋肉がぴくぴくしながら剣を振り上げるも力が入らず空振り。ゴーゴンはレイアさんを盾にしながら後ろの方へと下がっていく。


「卑怯だぞ!」


「かわいらしい剣さばきじゃ、ゴーゴンの女王であるこのアタシ、魅惑の悪魔ルージュには勝てないわよ?」


「あんたが誰だとか、そんなのは知らないしどうでもいい! 私は、自由になるため悪魔も天使もない世界にこの世界を作り変えてやる! 全部壊してやる!」


体に力を籠めると、ケルベロスがこちらに向かってきた。ケルベロスに戻ってこいと指示していないのに彼の姿が消えていく。すると、急に自分の体が軽くなった。 自分の体の周りにケルベロスと同じように電気が走っていく。


「あなた、私に力を貸してくれるのね!? おっしゃあ! ぶった切れろぉおおおおおおおお!」


後ろへ下がるゴーゴンへと一瞬に近づいた私は片手でそのゴーゴンのヘビを切り上げる。人質になっていたレイアさんはようやく地面に足がつき、膝から崩れ落ちてせき込んでいた。こいつだけは許してはいけない。だけど、誰の指示で守っていたのか知らなくちゃいけない。

だから私は、彼女が身動き取れないように腹部に剣を刺した。致命傷ではあるけど、話せるはずだ。


「吐いてもらうぞ! 誰の指示で動いていたのか! まずはここを明け渡してもらおうか?」


ゴーゴンは口から吐血したものの息はしていた。彼女のまなざしはもう風前の灯だ。



ケルベロスの力を借りることで自称魅惑の悪魔ルージュを迎撃することができたグレイス。

彼女にはいろいろと聞く必要がある。武器を確保しつつ、グレイスたちは彼女の言葉に耳を傾ける。

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