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6:帰郷と天使

依頼を達成し、フロストに会いに行く途中、実家が近い所にあるので様子を見に行くことに......。


そこにいるのは天使なのか。

「くそっ......。生け捕りにできなかったじゃないか」


『あの悪魔が気持ちよく泣き叫ぶから悪いのだ。ん? あの骨、ひとりでに動いていないか?』


動いている骨を掴んでみると甲高い声で話し始めた。


『いやー、危なかったぁ。魂ごと食われるフェンリルにやられなくてよかったぜ。お? おお! 嬢ちゃん、あんたの使い魔すごいな!』


ガラゴの本体が話し始めた。あっけらかんとした言動に目を丸くしているとガラゴは続けて話し始めた。


『あんたたち、オレ様が必要なんだろ? 協力してやるから針と布あるか?』


針と布くらいならポシェットの中にある。なんで入れたかはあんまり覚えてない。

家を追い出されたのが突然のことだったからな......。

針と布を取り出してガラゴに渡すと、彼はいばるような口調で言う。


『後は、契約者の血だけだ。お前の血をよこしな』


そういうとガラゴは俺がだした人差し指を針で傷つけた。その後、布と一緒に骨、つまり自分自身を縫い付けていく。パッチワークが完成されていき、ひとつのクマのぬいぐるみになった。


『これって、契約魔法なの?』


『見た感じお前、テイマーなんだろ? こんなんも知らねえとは変わったやつだな......。ま、いいけどよ。改めてよろしくな! グレイス』


俺は変な悪魔を寄せ付ける体質なのか?

もうめんどくさ......。はやく、受付嬢の元へ行こう。

ジョンを手当てして頭をなでてあげた。すると、彼は目を閉じて喜んでいるようだ。なんだ、案外可愛いやつじゃないか......。ジョンも俺のことを気遣ってくれたのか、顔をぺろぺろと舐めてきた。ほんとに前世の実家で昔飼ってた犬みたいだな。


沼地を抜けて、急ぎ足でギルドへと到着した。

ギルドの外側にジョンを留守番させてまた酒臭いギルドの中に入っていく。

受付に直行し、受付嬢に依頼品でもあるぬいぐるみを見せた。


「これ、頼まれていたものです。ガラゴの確保ってこれでいいんですかね?」


「ええっ!? あの残虐の悪魔、ガラゴの魂の生け捕りをしたんですかぁ!!? 信じられない。こんな小さな子供が......」


受付嬢はオーバーリアクションでぬいぐるみを見てきた。酒場にいた冒険服に身を包んだ人達や飲んだくれも息をひそめて見守っていた。ギルドの受付嬢はぬいぐるみと本を俺に押し付けてきた。


「は、早くこれをもってこの街から出て行ってください! とてもおそろしくて、これ以上関わりたくありません! ああ、天使よ。私を戒め下さい......」


そういいながら両手を強く握って天使に祈りをささげていた。とても敬虔な町なんだろう。その場にいた誰もが受付嬢とともに祈りをささげていた。


「天使ってそんなに偉いのか? よくわからん」


首をかしげながら私たちはギルドを後にした。受付嬢から頂いたフロストに関する本を見つめながら歩いていると、降魔郷への道は俺の家を通ることがわかった。


「ごめん、ちょっと寄り道していい?」


『何を言っている。フロストとやらのところに行くのが先決だろう?』


「通り道に俺ん家があるっぽいから様子見たいんだって。ちなみに言うこと聞かないと、オレ今すぐ死んでやるからな」


『はぁ......。勝手にしろ』


「やった!」


あの町から随分と離れた山辺に俺の実家はある。久しぶりに見ても大きな豪邸だな......。

そのせいで街にも友人、知人は少なかった。今はそれでよかったとも思える。


「にしても静かだな。迎えがくるか、石を投げられるか賭けようかと思ってたのに」


『中に入るなら、さっさとしろ』


「はーい」


 玄関のドアノブを捻ると、すぐに開いた。鍵が開いてる?

疑問に思いつつ中に入るもやはりもぬけの殻だ。しかも天井のシャンデリアも落ちてガラスが散らばってるし、靴箱の上に置かれていた花瓶と綺麗な花束もめちゃくちゃになっている。

なったもんは仕方ないしとりあえず、家に来たし必要になりそうなものがあれば持っていくか。

一階の部屋を巡っていき、金目のものや魔法の道具を探すも何もなかった。


「何もないな。てことは、強盗か? まさかぁ......?」


うつむいて考えながらまた玄関の方へ戻ると、勝手に肩の上に乗っていたガラゴが上の方を指さした。


『おい、あの光ってんのなんだ?』


あそこは、オレの部屋? 確かに光ってるけど、あんなのあったけ?

広間の階段を上って俺の部屋へと急ぐ。すると部屋の前の床に、光る羽のようなものが落ちていた。


「白い羽? てか、よくこんなの見つけたな。ガラゴ」


『おうよ。これでも探し物の悪魔、ガラゴ様と言われたもんよ!』


むかついたので自慢げに語る彼の額にデコピンした。でも、なんでこんなものが部屋に落ちてあったんだ? もしかして、親の失踪や名門家の失墜となにか関係がある?


『この強盗事件、まさか天使の仕業なのか......? この世界では天使も強盗をするのか? ふん、人間に信仰されている割には小さい奴だな』


「強盗かはわかんないよ? でも、本当に天使がいる証拠になりうるわね。これは」


この世界に悪魔がいるなら、もしかすると対で天使もいるかもしれない。

じゃあ、家が荒らされているのは天使の仕業だとすればここにいない両親も......?


「両親のこと、フロストに聞けばわかるかな?」


『あいつは悪魔のことにしか興味ない変人だぜ? 時事に詳しいかどうか......』


「情報源は活用してみるに限るって。行くっきゃないっしょ」


 意味がないとたしなめるガラゴをよそに俺は、すぐに決めた。悪魔と天使は対を成す存在。それがこの世界でも通じているのなら聞いてみる価値はある。わからなかったとしても悪魔こいつと切り離す方法もしれるんだからそれまでは死ぬわけにはいかないな。


『まあ、グレイスが言うならしゃあねえ。オレ様もついていくぜ!』


『すべてが分かるといいのだがな......』


例の白い羽を自分のポケットに入れて、おれが階段を降りようと玄関をぼんやり見るとそこに人が立っていた。


『詮索はよくありませんよ。グレイス・アルマンさん』


顔は逆光で見えなかったが幼い感じの声だ。少年のような明るく、無邪気な、それでいて心地のいい声が屋敷中に広がる。教会の鐘や聖歌を聞いているようだ。

詮索っていうけど、やっぱりここで何かあったのか? 探されては困るなにかがあるのか?


『逃げろ、グレイス! あいつ、天使警団かもしれねえ!』


「なにそれ?」


『天使の名を借りて、人間も悪魔も見境なく殺しちまうようなやばいやつらさ! 要はオレ様たちの敵だ! 今戦うのはまずいんだって! いいから逃げるぞ!!』


ガラゴがそういうと肩からジャンプして、下にいる少年にとびかかり瘴気をまき散らす。


『俺様の出番だぜ! ヒャッハー!!』


私たちもガラゴの瘴気で視界が悪くなったタイミングで階段を一気に駆け降りる。


「今のうちにさっさとずらかるぞ!」


彼の瘴気を吸わないように口に手を当てながら玄関を飛び出していく

口笛でジョンを呼び出すと、ジョンは颯爽と現れておれたちを背中に乗せてそのまま走りにくけていく。初めて口笛使ったけど、言うこと聞いてくれて助かった。

ガラゴはふわふわと空を飛んでこちらに向かってきた。と思ったらすとんと俺のヨレヨレになったシャツの中にダイブイン。そのまま小さい谷間の上に乗って自慢げにふんぞり返っていた。


『100点満点の着地だな!!』


「おまえ、飛べんのかよ......。ていうか、そこ入んな変態」


『まあいいじゃねえか! さ、フロストの旦那んところへ行こうぜ!』


平気でセクハラしてくるぬいぐるみ悪魔に死に執着する悪魔、そして忠犬フェンリルのイカれたメンバーで送る俺の不思議な旅はもう少し続きそうだ。



天使を退けて降魔郷へと目指す。

次回「降魔郷とフロスト」

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