57:革命軍と王国
混乱を招く新たな存在としてパンドラがグレイスたちの前に立ちはだかる。
そして物語は大きく動かす革命軍と王国軍の自由を掛けた戦いが始まる。
突如として現れたパンドラという悪魔のような風貌の男は私たちに自己紹介を始める。
「改めましてどうも、みなさん。ごきげんよう! 私は悪魔と人間の間に生まれし罪深き存在、混沌の魔人パンドラにございます。以後、お見知りおきを......。それではみなさまにご紹介いたしましょう! 銀翼革命軍の皆様です!」
テレビの司会者のように仰々しく挨拶をすると同時に謁見室の扉が乱暴に開かれる。そしてそこには、澄み切った水色を基調にした布地に白の翼が描かれた旗を持ったエルフや獣人たちが立っていた。
「どうやらこいつの情報は正しかったようだな。姐さん」
狼のような顔つきの男が自分よりも大きく角の生えた女性を見上げる。あの、狼くんどこかで見た気がする......。それにあの真ん中に立ってる角の生えた女性も......。
「そう、みたいね。改めて国王陛下に告ぐ。我々は天使にも王国にも与しない自由を勝ち取るための戦士です。コボルト、エルフ、そして私と同じ、竜人族が集う革命軍は、自由の戦士グレイス・アルマンの奪還のため馳せ参じました。私の名は、アリス。竜人族であり、グレイスに命を助けられ自由を抱く革命軍のリーダーです!」
えええええええ!?
アリスって、もしかして一番初めの方に焼き払った施設にいたちっちゃい竜人族のアリス!?
たった数ヶ月くらいであんなに大きくなるもんなの? ていうか、胸でか......。
「やっと探したぞ、グレイス。裏ギルド連中とか結託させるのは苦労したわ。俺のこと、覚えてるか? コボルトのバベルだ。後、お前が助けたアリスもいるし、エルフも集まってる。みんな、お前の味方だ」
「みんな......」
やっぱり、コボルトはあの裏ギルドで天使のことを教えてくれたバベルだったのね。エルフたちのみんなもキオナやエリエさんがいる。みんなのこと、鮮明に思い出してきた。これまで散々で大変な思いばかりで忘れていたけど、私にはこんなにも想ってくれている人達がいたんだ。
すると、パンドラは私たちに拍手を送る。だけど、その顔はなんだか悪意に満ちていた。
「素晴らしい、まさに感動の再会というべきでしょう! ですが、あなた方はいわば国賊! 天使に仇なす悪魔の化身! ここで今、王自らの手で処されるべくして呼ばれたのです!」
「そんなの、あんただって悪魔じゃないのか!?」
「いい質問ですね、グレイス・アルマンさん。だけど傷つくなぁ......。私は魔人であるものの、改心した身。そしてウィナス様の元で修行しているのです。だから今ここにいられる。あなたたちのような危険で野蛮な人達とは違うのですよ!!」
パンドラの言葉から端を発したかのようにまわりから衛兵がぞろぞろと現れ、私たちと革命軍の人たちもろとも銃口を向ける。ここで反逆するものたちを全員根絶やしにするつもりなのね......。
銃口を向ける兵たちに手をあげて制止させる王。兵たちは銃を下ろし隊列をなして理路整然と銃を右肩に添えた。
「私の思う通りにならないものはすべて潰してきた。繁栄を拒絶したものを根絶やしにしてここまで国を大きくした。国を統治するためには気高く、冷酷な判断ができる統治者と市民を誘導できる宗教が必要なのだ。それをわからん醜い愚民は悪魔だ。すべて灰にしてやる。お前たちの『時間』は私が有効に使わせてもらう!」
大きな影がブワッと広がっていき私たちを包もうとした。あの影に触ってしまっては私たちみたいに老化が始まってしまう......! だが、アリスはそんなこともお構いなしに影に突っ込んでいく。
影を通り過ぎても彼女の容姿は変わることがなかった。そして、彼女の拳は王の顔へと到達した。
「どうして......。アリスはあの王の魔法の効果は?老化はまったく進んでいないわ!」
「反転魔法陣......。解明するのに時間がかかったよ。基本魔法の五つは互いに影響を及ぼしている。どれかの力が強ければそれを打ち消すものが強くなりバランスは保たれる。だからこそ、契約魔法もそれを打ち消す魔法があるはずだと踏んだんだ!」
「すごい! それじゃあ契約も無効に......!」
「残念ながら今は契約魔法による力の無効化しか解明できていない。しかし、ボクは希望はあると断定する!」
これで、天使と戦わなくてもこの悪魔とおさらばできる! でも、いざそういう話が出てくると寂しいと感じてしまったのはなぜだろう。いや、今はこんなこと考えている暇なんてない。国王は殴ってきたアリスの腕を掴む。
「貴様......。私の大願、不老魔法をかわすとは万死に値する! 稀少ゆえ活かして捕らえようと思ったがどうやらそうはいかぬようになったな」
「今一度、国王陛下に問う! 天使を廃絶して自由で開けた世界にしたいと思わないのか?」
「誰の恩恵で食物も水も繁栄も与えられていると思っている! 無理な話である!」
国王がアリスを投げ捨てる。私はすぐさまマリスを使って彼女を拾い上げて助ける。あなたを巻き込みたくないからお別れも言わず立ち去ったのに、結果として彼女に助けられてしまっている。彼女の顔を撫でてあげると、ウィナスが声を張り上げる。
「そうそう。美しいものはみんな、僕たち天使の加護があるから栄えている。だからみんなが僕たちを崇める。美しいものに手を合わせるのは当然の摂理さ。でも、今の状況は混沌が大きくなって醜い。争いは他の子に任せるとしよっと。じゃあね」
「待てっ!!」
忽然と姿を消したウィナスに勝ち誇っていた王国の兵士たちも少し動揺する。無敵の契約魔法を誇っていた国王の力が破られた瞬間を見た彼らに私たちの首を取る勇気はなさそうだ。
「グレイス、今は君のために集まった仲間と合流しよう。どうにせよ僕たちは国王を殴ったこの子の責任を問われるように国賊になる。戦いは避けられない」
サバトはアリスを抱く私に肩を置く。確かに、反転魔法があったとしても今ここにいる革命軍の人数が圧倒的に少なすぎる。戦いがおきたとしても不利になるのはわかる。
「兵士たちは混乱しているうちに戻ろう。ボクたちが拠点としているソル町まで......。君たちも知らない町ではないはずだ」
サバトと初めて出会った町、ソル町。そこでまた始めよう。私の、いや私たちの自由を勝ち取る戦いを......。
次回から第6部「革命軍とワタシ」編が始まります。
その前に少しキャラ紹介をはさみます。
まだまだ続きますのでこれからもよろしくお願いします。




