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54:火の天使と命の引金

グレイスの前に立ちはだかる五属聖の一人、マルレウス。

紅蓮の炎を操る彼を倒す策略はあるのか......?

ヘルメウスは動かなくなった。あるのはマリスの周りの水たまりだけだ。


「あいつ、本当に自由を手に入れたの?」


『いや本来の容姿を手に入れたに過ぎない。残念ながら、まだ貴様とのつながりを感じる。相当強い契約で私たちを縛り付けるとは……。私たちが探しているのは五属聖以上かもしれんな』


マリスは自分の体の感覚を確認するように手首を動かし、それを見つめる。彼の伸びた影はそのまま私の方に伸びている。私とマリスの影が混ざり合って一つの生命体であるかのようにつながりをはっきりと見せていたとこから彼の言っていることに間違いはない。だからと言って、あの力は、天使の力を“食った”のなら危険すぎる!


「何をゴチャゴチャ言ってんだクソが。ヘルメウスの野郎......。だから俺は戦うなって、足を引っ張るなっていったんだよ! 滅多にヒトを食わねえからあんな単純な魔力で肉体が崩れるんだよ......。 クソがッ、てめえらみたいな悪魔は業火に焼かれて死ね!」


そうだった、まだマルレウスがいたんだった......!!

こちらに大きな足取りで火球を連発するマルレウス、私は銃を使ってその火球を相殺することしかできなかった。サバトが走ってきて銃撃戦の中に入っていき、目の前に立ったと思うと背中を見せて火球を槍を回転させて火球を吹き飛ばす。


「グレイス、そっちの天使は倒したみたいだね! よかった、残りはこいつ一人だ。僕が気を引いているうちに弾丸n......」


突如としてマルレウスの腕から炎が縄のように伸びていき、サバトの首を締め上げる。


「させるわけねえだろ、てめえに何一つ守らせねえ。そもそも悪魔に守るものも価値もないだろ!」


彼の燃え盛るほどの悪魔への嫌悪感が、体中にごうごうと揺れる炎と彼の繰り出した縄から露骨に見てとれる。どうしてそこまで悪魔を嫌う必要があるんだ。それにしても、サバトが捕らえられた今子供がはじめて補助なし自転車に乗っているくらいの銃撃スキルであの縄だけを打てるか? いや、無理だ......。そうなったら


「ある、私たちは自分の自由を守る! その価値も自分自身で決める、あなたに決める権利はない! ケルベロス、あいつの腕を噛みきってしまえ!」


次元鏡から三つ首のケルベロスが雷鳴と共に姿を現す。瞬間、稲妻が地面を這うように走り出し、マルレウスの腕をその頑丈な三つの顎で捕らえる。


「こいつ、地獄の門番ケルベロスじゃねえか!? どうしてこんなところにいるんだよ! お前、どれだけの悪魔を従えているんだ!? 契約は一人一つではないのか?」


やっぱり契約テイム能力は一人一つなのか? 次元鏡で増やすことはできても1体が限界。今はフェニックスとケルベロスの二体分。マリスと私で二人分契約できていることになる。ということは、私が出会わなければならない天使はたった一人ということになる。


「さあね。もっとも、天使のあんたになんて教えてやんないんだから!」


「グワァアア! 放せ、このイヌッコロ! ウァアアアア!?」


ケルベロスの牙から電気がほとばしる。炎の縄はマルレウスの意志によって自在に操っていたのか、だんだんと緩んでいき、サバトを地上に下ろす。ケルベロスと共に戻ったサバトは私と並び立ち、首をひた隠し、笑顔になる。


「ありがとう、グレイス。さあ、あの天使を殺して先に進もう! 自由のためにこの世界の罪で自分たちを穢した僕たちに残された選択はそれしかない」


「自由? 家畜が塀を越えて野生で生きられると思っているのか、このブタどもがぁ!」


「私たちはあなた達に搾取されるだけの家畜じゃない! サバト、マリス、行くわよ!」


銃弾を数発解き放ったのを合図に、サバトが冷気をまとわせた槍の先端をマルレウスに向けて走り出す。

マリスも自分の足で走り出し、その拳でとびかかる。マルレウスは火球で応戦するもサバトの槍さばきの敵ではなさそうだ。


「こいつの炎に物おじせずとびかかかってくる勇敢さは敵ながらに恐ろしい。だが、長物は相手が体力自慢だと、こうやって、掴まれて投げ飛ばされるのがオチなんだよぉ!」


マルレウスはいともたやすくサバトをひょいと持ち上げる。一瞬の出来事に固まってしまったが彼の目には諦めたような心は映っていない。


「うっ、驚いている暇はない。そんなことは分かっているからね。捕まれることが分かっているなら、掴ませればいい! 氷の魔法で凍らせるだけだ!」


「な!? 腕が凍っていく......。だがこんなもので俺を倒せると思っているのか?」


『少なくとも、貴様の注意をそらすことはできたようだがな』


マリスが上を向くマルレウスに悟られないように姿勢を低くして懐に入っていた。それに気づいたときには、すでに背中に乗っていた私のポシェットから託しておいた瘴気の悪魔ガラゴがとびかかっていた。


『ひさかたぶりのガラゴ様の登場だぜ! 食らえ、瘴気の風!』


毒霧がマルレウスを襲う。マリスは当然悪魔なので毒には耐性があるが、天使はどうだろう。それにサバトも気になる。


「マリス、サバトをお願い! 助けなかったら私、ここで首を掻ききって死んでやるからね!」


『まったくうるさいご主人様だ。この男も私には利用価値がある。当然、命は残しておいてやるさ』


そういって、マリスは毒が蔓延する中からサバトを引っ張り出してきて私の元へ戻ってきた。ガラゴがまだ見当たらない。


「サバト、瘴気に当てられてない? 大丈夫?」


「あ、ああ......。なんとかね。それよりもガラゴがマルレウスに引っ付いたまま離れようとしないんだ」


『おい、グレイス! この俺様がじきじきに指示を出してやるぜ。だからグレイス、お前が引金を引け!この瘴気は魔石イオと同じ成分が含まれてる。魔力が拡散され、大爆発を起こす。それでこの天使を殺せ!』


「このチビクソ野郎何ほざいているんだ、離れやがれ!」


霧の中でマルレウスとガラゴがもめているのが影でわかる。勝手に死なれても困るわけじゃないけど、私に一言言ってくれてもいいじゃない!


「いきなりなによ!? 勝手にしゃしゃり出てきて味方面して......。マリス、別の方法を」


『撃て、それしかない。勝利はときに残酷な手段を取らなければならない。そして、自由とは多くの犠牲を払って築いた。それが我々のいた地球の歴史というものではなかったか? なんの犠牲もなしに自由を勝ち取るなんて戯言、理想、空想、妄想も甚だしい。今のお前の力でできることはそれしかない』


「......。わかった。引き金も弾丸も自分自身、ならやるしかないってことね。少し魔力を分けて頂戴、マリス」


マリスは何も言わず私の震える手をそっと抑えるように銃を一緒に構えてくれる。ガラゴの目がうっすらと霧を通して光っている。狙うはガラゴ自身。力を込めてゆっくりと二人で引金を引く。


弾道はまっすぐに光に吸い込まれていく。一閃が光を殺して、連発する破裂音と共に天使の残酷な悲鳴が悶えて消えた。



犠牲なしに自由はなし。

そうやって道を切り開くしかない。


だが、本当にそれでいいのだろうか

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