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48:火の国とデーモンテイマー

仮面の男、ノマドに言われるがままに「火の国」へとたどり着いたグレイスとサバト。

彼らを待っていたのは異国の洗礼だった。

人のにぎやかさと自然の豊かさは過ぎ去って、だんだんと大地は乾燥し、熱気もこみあげてきた。


「隣にある国だっていうのにガラッと雰囲気が変わってきたわね」


「火の国は火山地帯で動植物はあまり生えないんだ。それにしても暑いな」


ヘルメウス討伐のため、ノマドに言われた通り火の国と言われるレイブン王国の隣にある国へ行くことになってしまった私たちはその風土の激変ぶりと長い間旅をしてきた疲れで体は弱っていた。


「にしてもあのちっさいおじさんたちは元気に動いてるなぁ、よくこんな暑いとこであんなふうに鉄を打てるよね」


「ああ、ドワーフたちのことかい? そりゃ彼らはここの住人だし、なんたって鉄製品なら右にでるものはいないってくらいの職人一族だ。こんなのは日常の一幕でしかないんだよ」


対照的に小さな家に住むドワーフたちは小さくもたくましい筋肉に汗を輝かせて血気盛んに働いている。煉瓦のように赤くて固い石でできた鉄溶鉱炉と水場を行き来して鉄を育てていく上半身裸の漢たち。裸の男なんて見慣れていたはずなのになぜか本能的に視線を避けてしまう。


呆然と彼らの仕事ぶりを拝見していると、一人の自分の胸くらいには立派に蓄えたひげが特徴的なドワーフがこちらにすたすたと歩いてきた。


「旅のもんかね? えらい珍しかぁ。こげんなあっつくてなんもない国になんか用ね」


な、なんか方言きつい一族だな......。私にはそう聞こえてるけど、どうやらサバトにはなにを言っているのかさっぱりわからないみたいだ。彼は小声で私に耳打ちする。


「ごめん、グレイス......。今の彼の言語わかった?」


「え? ええ。『こんな暑くてなにもない国に用があるのか?』って」


彼のキリッとした目鼻立ちがグッと近づく。困り顔は少し可愛げもありながら情けなさもちらっと見える。っていうか何を考えてるんだ......。サバトと見つめあった後、ふと我に返ってドワーフの方に視線を戻すと彼は不思議そうな目で私たちを見つめていた。


「あ、あのえっと......。私たち、武器を探してて」


「武器なら王国の方に納めとるやろ。ちゃんとした商人から買ったらええじゃろ」


「いや、多分売ってない。だって、天使を倒すほどの力があるんだもの」


「天使を!? そげんなもん作ったらマルレウス殿に殺されるわい!!」


ドワーフは聞きなれない者の名前を取り出して怒り始めた。マルレウス......。天使の名前だろうか?


「マルレウス? 天使の名前ですか?」


『気安く俺の名を口にすんじゃねえよ、白銀のデーモンテイマー』


ドワーフの後ろから私たち人間の頭二つ分くらい大きい身長とたくましい図体の男がこちらをにらみつけていた。彼の歩いた足跡を見ると地面が足形に溶けて燃え盛っている。見るからに炎を司る天使と言ったところだ。


「あなたが五属聖の1柱、火天使マルレウスなのか......。思ったより粗暴なやつだな」


サバトがマルレウスに平然と悪口を言うとマルレウスは背中の炎をより強く燃やし始める。


『そういうテメェは確か悪魔の手下になった元銀級だったか? 馬鹿っていうのはケンカを売る相手もわかんねえみたいだな!』


サバトの頭を片手でガシッと捉えて軽々しく持ち上げる。なんて馬鹿力なんだ……! 恐怖と驚きで立ち止まってしまいそうだ。 動け、動け‼︎


「ケルベロス、あいつからサバトを取り戻して!」


ケルベロスを次元鏡から呼び起こしてマルレウス相手に牙を向けさせる。正直、無駄かもしれない。それでも、彼に死なれては困る!


『やめろ、グレイス・アルマン! お前が死ぬことになるぞ!』


マリスの助言を聞く間もなくマルレウスはサバトを粗雑に落として、とびかかろうとするケルベロスを裏拳で弾き飛ばしこちらに向かう。そして今度は私の首を天使が狙う。


「う、うぅ......」


苦しいなんて甘い言葉では足らない痛み、熱......。そこから彼の執念や怒りが流れ出ているようにも感じる。マルレウスは意識が遠のかない程度に私を苦しませながらサバトを顎で使う。


『バカな悪魔なことだ。すぐにでも殺して楽にしてやりたいところだが、殺すよりもっと楽しいことを思いついた。来い! そこの元銀級』


「なに?」


『言う通りにしねえとこいつ、殺しちゃうかもな。さっさと歩け』


マルレウスに首を掴まれたまま、私たちは緑のない山肌に人工的に穴をあけた炭鉱のような場所へ運び込まれた。


『さあさあ、ここは地獄の入り口......。とは言ってもホントの地獄じゃなくてただの労働環境劣悪な魔石鉱山さ。ドワーフたちの働き口は職人になるかここで奴隷のように働くか。お前たちもここでじゃんじゃん魔石を取ってせいぜい俺の肥やしになるんだな! ハハハハハ!』


そう言ってマルレウスはサバトも持ち抱え初めて、二人を鉱山の入り口に投げ入れた。

そこは薄暗く、狭く、蒸し暑いいままで来たどんな場所よりも最悪なところだと実感する。

こんなところで天使を殺す道具なんて見つかるのだろうか。先行きはこの鉱山のように暗闇でどこまで続いているかわからない。










火天使マルレウスによって魔石「イオ」の採掘を余儀なくされた二人。

鉱山から抜け出すため、魔石を利用して脱出を試みるのであった。

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