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45:マトハルと美少女

お待たせしました。

第五部です。

 サバトにつれられて私は山奥の先のきらびやかな王国城下町、マトハルへとたどり着いた。サバトのおかげでなんとか意識のなくなったところから復活できたわけだけど、正直自分の正体を彼にさらしたのは正解だったのだろうか。


「ねえ、サバト......」


「なんだい、グレイス。足でも痛むかい?」


 彼の屈託のない笑顔と、手を差し伸べる優しさが痛々しくも温かい。『君は君だ』......この言葉はきっと彼の思いそのものなんだろう。今、後悔してても未来はやってこないんだ。彼の言葉を信じよう。


「いえ、大丈夫。ありがとう......。それにしてもこれまで見た場所よりきれいな街並みね」


奥に控えるカラスの紋章が彫られたエンブレムを輝かせている大きく白い城。同じように奇麗に白で統一された家屋の壁がカラスとは対照的な白のイメージ驚きながらも、これまでの統一感のない街並みに比べると美しいと感じてしまう。


「キレイ? なのかなぁ......。 僕はこの風景は今となっては少し気味が悪いと思うけどね。それにいろいろあったし......」


『世話になったとは言わんからな』


 自分と似た声質と容姿でヌルっと話し始めるマリスにまだ慣れない。私から離れた途端、こんなことになって......。一体どうなってるんだ?


「にしてもマリスを見てるとどうしても鏡見てるみたいで居心地悪いんだよな」


『私も、お前のようなバカ丸出しの顔つきになって辟易としているところだ。お互い様だ』


 なにが『お互い様』だ。他人から言われるくらいには可愛い美少女のはずなのにこの言いようだ。私は言葉で言い返すのも面倒になって顔を膨らませていた。


 3人で会話をしながら町を散策していると、村人の視線がやけによそよそしく感じる。村人はこの街にある家のように白い服を着てニコニコしている。


「......確かに、サバトの言う通り気味悪いかも」


「この人たちはみんな、天使の中でも原初であるルシエルっていう天使を崇拝しているらしい。あまり、関わらない方が身のためだよ」


 天使をかたどったような像が町の広場に噴水として配置されていた。それを見ると、どう見ても自分にいや......マリスのような女性の顔立ちに見える。


「これ、私というかマリスに似てるような」


「そんなに似てるかな? こんなの言ってしまえば彫刻家の理想図とも言えると思うけど」


 それはそうかもしれないがこの世界は天使が実在する世界だ。容姿がそのまま投影されててもおかしくない。そうなるとますますマリスがこの容姿なのが不可解だ。


「ただの妄想ではない。ルシエル様は存在するのです! よそ者の分際で我々の崇高なる天使の容姿を悪魔と一緒にするな!」


 サバトと二人で話していると急に白い服装を着た胸元に金色に十字と鳥の紋章をつけた大女が私たちをにらみつけていた。女は頭に天使の輪を輝かせて近づいてくる。サバトが彼女を見るなり、苦笑いを浮かべて警戒を促してくれる。


「グレイス、気を付けて! こいつ、天使から天啓を受けた金級勇士の修道女だ! 僕とマリスで追い払うのが精いっぱいだ。だから......」


 それでも、私たちの進路を塞ぐものなら全力で潰すだけだ。私は、地獄の番犬ケルベロスと不死鳥フェニックスを次元鏡から出現させて相手を威嚇する。


「大丈夫、サバト。今度は私もついてるから」


「女ひとり加わったところで状況は変わりません。天使から天啓ギフトを受けたものは天使と同等の力を手に入れられるのです。私は超回復により、体を再生することも増殖させることもできる!」


そういうと彼女が力むと脇からもう二本腕が生えてきた。彼女は異形の怪物のような見た目となり、背中から見える羽も黒く染まっている。うおおおおおという雄たけび声というか叫び声に近い。



「知らないわよ、そんなこと! 腕が生えようが、何度も再生されようが、私はあなたを倒す」


ケルベロスが修道女に噛みつく。腕を引きちぎっても相手は何度も超回復で生やしていく。それに負けじと何度も腕を引きちぎる。


「いくらやっても無駄よ! あなたのような悪魔には天使に愛された私は殺すことはできない。そこのよそ者の男同様、絶望に打ちひしがれるがいい!」



 絶望なんてものは何度も経験してきた。前世の世界では会社には書類で落とされる、彼女もいない、趣味もない絶望の二文字が頭によぎっていたことがほとんどだった。この世界でも父親から突き放されて、仲良くなった友達が死んで......。それでも、前を向いて進んだ。進むしかなかった。



「絶望なんてもの、とっくに味わってきた! お前の言う絶望なんてすべて焼き払ってやる! フェニックス!」


 フェニックスが天高く飛び上がる。それだけで体感温度が上がってくるのが伝わってくる。熱風が押し寄せた後、炎のつぶてが相手に降り注ぐ。火傷をしても回復し続ける彼女だったとしても痛みはずっと蓄積しているはずだ。修道女は息を切らしながらこちらをにらみつけてきた。


「ハァ、ハァ......。いたい、いたい......。こんなにしてまで、血の涙もない悪魔が!」


悪魔と呼ばれるのは少し心外だが、自分が自由になるためなら誰かに悪魔と呼ばれても構わない。それが今の私なんだから。


「そうよ。だって私が白銀のデーモンテイマー、グレイス・アルマン。天使には容赦はしない!」


マリスの力を借りて自分を黒く染め上げる。天高く日が昇っているというのに自分の周りには暗闇がまとわりつき始める。ひさしぶりの感覚、マリス自身のイメージが膨れ上がる。彼は私に語り始める。


『グレイス・アルマン、これが私の、いや私たちの戦いだ。そうだろう?』


「あなたは復讐、そして私は自由のために手を組む戦いってことでしょ。もう戦いに迷いはしない!」


腕も足も頭もすべて引きちぎっていく。これ以上回復で増やされないようにちぎってはフェニックスの炎で燃やしていく。噴水のあたりにはもう何だったのかわからない細かい灰が散らばっていっていった。


しばらくは週末更新が続くと思います。

気軽に見てください。

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