41:悪魔と共同戦線
悪魔と共に脱出を試みるサバト。
だが、そう簡単にはうまくはいかないだろう。
地下に落とされはしたがマリスを見つけることができた。だけど、どうしてこいつの容姿がグレイスみたいになっているんだ? 単純に一緒にいた時間の長さと魔力が関係しているのか? いや、いまはそんなことよりもここから脱出することを考えないと......。
『なぜ貴様がここにいる。グレイスはどうした』
こいつ、グレイスがどうなったのか知らないのか? ノマドとかいう人間に切り離された後何していたんだ?
「こっちが聞きたいんだよ。グレイスと君が分かれた途端、グレイスは倒れて意識不明のままだし、君はこんなところにいるし」
『そうか、まあ自由になった私にとってはどうでもいいことだ。さっさと帰れ』
「そういうわけに行くか! 僕はグレイスを助けたいんだ。君が行きたくなくても殴ってでも連れていくぞ」
話しているとマリスの体がたびたび透けていくように見える。そのたび彼は自分の体を見つめていた。
もしかして彼はグレイスがいないと実体を保てないのか?
「君、実体が保ててないじゃないか......。それじゃ自由なんてなにもないだろ。どうしてやせ我慢するんだ」
『関係ないだろ。私は私の復讐のために......。クソッ、ここで悪魔を吸収していれば動けると思ったがだめか。やはりまだあの体が必要なのか......』
彼に近づこうとした瞬間、ぴしゃっと水たまりを踏んだような音がした。
床から水があふれているのか? 床に耳を近づけるとゴボッゴボッと水が沸く音が聞こえる。
「まだ、グレイスには君が必要だ。それに君もグレイスが必要なんだろ! ここを抜け出すために協力してくれ!」
『今はそれしかあるまい。しかし水が迫っているようだが、脱出の手立てはあるんだろうな?』
「唯一の入り口は外から塞がれてる。爆発を起こして正面突破しても捕まる可能性が高い。隠し通路とか穴とかなんかないか?」
そういいながらマリスとともに足を水浸しにしながら歩き回る。小さな檻を取り除いて壁という壁を触って見つめる。水はくるぶしくらいに水位があがってきている。
『サバト、ここに穴が開いているぞ!』
マリスが指したのは小さな穴だった。だけど手のひらを当てたときかすかに風が通っていた。これなら突破できるかもしれない!
「よし、槍で貫通させるから離れてろ!!」
槍の方向に合わせて木属性の魔法で固い根やいばらを繰り出して回転させる。小さな穴はどんどん広がっていき、小さいものが入れる程度になった。
「ガラゴ、君が向こうに行ってこの壁を腐らせてくれ。これならもっと簡単に壁が壊れるはずだ。毒沼の主ならそれくらい容易い事だろ?」
ガラゴを押し詰めると彼は聞き取れないながらも小言を言いながらグイグイと進んでいってくれた。正直彼の承認を得る時間はない。水位は異常に早くなって腰あたりまで来ている。服も濡れて寒くなってきた、早くしないとマリスはともかく僕が死んでしまう。そんなのはいやだ! グレイスを助けるまでは絶対に生き抜くと決めたからには生きる手段を考え続けろ......!!
奥からなにかが溶け出す蒸気音が聞こえる。
ジュー、ジュー......。
もくもくと作業してくれる悪魔で助かった。しばらくすると、ガラゴの声が聞こえ始めた。
『一度これで壊してみろ! 俺様の最強猛毒で腐らせたからばっちりのはずだぜ』
それなら遠慮なくと槍を振り上げて一気に振り下ろした。水で勢いが消えないように、こちらも槍の先端から水流を一気に噴出させて力を加速させる。壁は見事に崩れ去り、人一人が横歩きすれば通れるくらいには向こうにつながった。水が穴の方に流れていかないのを見るとおそらく上にいた誰かが魔法を使って水攻めをしているんだろう。ゆっくり穴の方を通り抜けるとその先には地上につながるはしごがあった。上を見上げるとどうやら古井戸のようで石造りの壁と空が見える。
「誰かが前にここから脱出したということか。なんにせよありがたい」
はしごを昇り、地上を見渡す。周りには誰もいない、よし......。
町の大通りにはちらほらと白い服を着た住民が徘徊している。裏通りを通って屋根の上を登ったりして相手との戦闘を避けながらエルフの村のある山あいを目指す。
家屋を抜けて目の前にある森に逃げ込めば身を隠せられるはずだ!
「悪魔たち、そうやすやすと逃げ切れると思っているのですか! ヘルメウスの天啓を受け取った私があなた達を聖水によって清めて差し上げます!!」
修道女はすでに翼を生やして一振りでこちらにたどり着いて着地した。彼女が天啓を受けた印なのか天使の輪が後頭部で光っている。 しかたない、こいつをさっさと倒してグレイスの元にいかないと!
サバトの行く手を阻む、五属聖の天啓を受けた修道女。
彼女との対決はいかに!?




