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37:人間と天使

「俺は、強く正しい人間になったんだ!」


異形のクオーツは杖を捨て、手から直接魔法を打ちだす。火炎弾や空気砲のようなものをよけきり、私はケルベロスにクオーツをあてつける。


「ターニャ、そっちはまかせた!」


「元からそのつもりだっての!」


フェニックスをポシェットの中から繰り出してファムエルにバーンブレスを食らわせる。サバトとキオナが合流し始めた。ガラゴが檻を破ってくれたんだ。


「エレメンタル:エアロスクリュー!!」


キオナの風魔法がファムエルを彼女が書いていたイーゼルの方へ吹き飛ばす。白いキャンバスとイーゼルはボロボロに砕け散った。サバトが私の隣に立ち、声を掛けてくる。


「遅くなった。大丈夫か、グレイス」


「ええ、でもターニャも」


「今はキオナとターニャに任せておくんだ! 君は天使との決着をつけないといけないんだろう?」


そうなんだけど、なんだか胸騒ぎがする。ファムエルはにこやかにこちらを眺めている。


『人間というのはすばらしいほどに愚かですね。彼の執念が愚かさと醜さを生んだとしたなら契約して正解でした』


「じゃあ、あなたさえ殺せばターニャもクオーツも苦しまなくて済むってことだよね!!」


人間と天使が契約できるってことは悪魔と人間を契約させることもできるはずだ。それなら、天使に聞いて行くしかない。必要なら殺すまで......。簡単なことだ。ソルエルは非合理だというけど結局、これしか方法がないじゃないか!!


『あなたも相当愚かな天使に運命を湾曲させられているようですね。面白い人間だ! 私の作品にしてあげましょう!!』


ファムエルが熱光線をだす小さな球体をいくつも取り出してくる。フェニックスで焼き尽くすも追いつかない。こうなったらマリス同化してでもこいつを殺すしかない!!


『天使の好きにはさせない。グレイス・アルマンを好きにしていいのはこの私、マリスだけだ!』


マリスとの絆が力に変わる。歪んだ絆、奇妙な関係が私たちを包み込む。二人だけの世界がどんどんと大きくなっていく。大きくなるほどに喪失が大きい。


ファムエルのいくつもある小さな球体を踏み台にして彼女の頭に蹴りを入れる。初めて彼女の体に触れる。硬い。それでも、蹴りを止めない。天使の顔がつぶれる音が聞こえる。それでも天使の腕は私を捕らえようとする。右足が砕けても左足が腕を切り裂いてやる。


左足の骨も折れたような感覚、だけど痛くはない。マリスが支えになって守ってくれている。後でフェニックスに治してもらえばいい。 天使が動かなくなってほっとしてしまい、ふらっと視界がゆがんだ瞬間、いくつもの腕が私の首元を襲う。


「い、いつのまに!」


クオーツが私の方へ瞬間移動してきたのか!? 私自身を悪だと決めつける執念の瞳は確実に私の顔を捕らえている。


「よくもファムエル様を! この反逆者め!! 悪魔には制裁を!」


振り降ろされた拳をマリスとともに防いではいるけど、これじゃどうにもならない。強すぎる!!


「お前はウチが相手だって言ってるでしょうが!!」


クオーツの背後からターニャがとびかかって後退りしていく。ターニャががっしりとクオーツを捕まえて私の方に床に落ちた剣を蹴って渡し始める。


「その剣を使ってこいつを楽にさせてやってくれ! ファムエルが死んでいる今でも契約が持続している! こいつはもう人間にはもどれない! だからさっさとやれ!」


私が、人間を殺す......!? いや、相手は天使だ。いやでも元々人間で......。どうしても殺さなきゃダメなの!?


『グレイス、目の前にあるのはただの障壁だ。人間でも天使でもない。お前と私の行く手を阻むものだ。殺しておけ』


頭の中でマリスの言葉が聞こえる。剣はまっすぐターニャに抑えられた偽の天使を捕らえている。このままマリスの力で刺したらターニャごと刺し殺してしまう。そんなこと、私もターニャも分かっている。


「グレイス、迷うな。おまえはウチの分までアリスを守ってやってくれ」


クオーツも自分だけが死なないように4つの腕でターニャを縛り上げて二やついている。それを逆手にターニャは私の持っていた剣を掴んで腹部に差し込んだ。マリスの力もあってか刃は二人の体を貫いた。



 身近な誰かを殺したというより、人を殺したということに体の震えが止まらない。クオーツという存在を倒さない限りきっと私は一生彼に付きまとわれてたと思う。それこそマリスのいう障壁になる。


「僕たちはどうすることもできなかった。それでも彼女は決死の覚悟を決めたんだ。ここを制圧するということは、そういう冷酷な判断をする必要があったんだ」


「これは勝ちではない。前へと進むための......っ!?」


キオナが何かを察知した。ファムエルがこちらに近づいている。まだ生きていたのか!?

私はクオーツとターニャから剣を抜き、ゆっくりと彼らの死体を置いてファムエルに近づいた。


「二人の死を無駄にしないために、私は絶対に生きなきゃいけない! 誰であろうと殺されたりしない!」


剣は黒く輝く。マリスのおかげで体は動かせる。走るたび、足の神経がすり減る。


「ここが私たちの聖地、誰にも侵させはしない!!」


刃はファムエルの体を真っ二つにする。天使の体が塵のように舞っていく。クオーツの体も元に戻っていく。でも二人はもう戻ってこない。それでも前に進まなくちゃいけない。この世界から天使を断ち切るため、自分と悪魔との因縁を断ち切るため私は立ち続ける。



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