34:エルフとワタシたち
エルフたちの立ち上がる姿は痛々しくも勇敢だった。
彼らの姿を見ながら彼らのため、自分のために動き出そうとするグレイス。
一歩、一歩、希望を紡ぎあげる。
キオナと合流するともうすでに村の鎮火作業が終わっていた。
「ひどい......」
多くのエルフは家を失い、ケガを負っているものもいた。悪魔がエルフに興味がなかったのか、私たちが悪魔を退けたおかげかわからないけど悪魔による死亡者はゼロだった。キオナは肩を落とす私に手を置いてくれた。
「全員が無事だったんだ。まずはそれを喜ぼうじゃないか」
「そうだけど、生き残った悪魔が他の街を襲っているかも」
そういうと、一緒になって戦ってくれたサバトと同じ銀級勇士団のターニャがアリスを連れて足を引きずってやってきた。彼女の短い髪の毛が痛々しい包帯姿を余計に目立たせていて心苦しい。
「そうだな。はやく行動しねえと......。天使も王国も当てにできない。だからグレイス、お前が街を取り戻してほしい」
「私が!? でも......。いや、やるわ。それが私が今できることだと思う」
『私もそれに賛成しよう。天使が悪魔と共闘しようとしている限り、君たちのいた街にもいる可能性が高い。ならば、こちらで攻め込むことが吉。少し面白くなってきたではないか』
マリスが私たちの会話に参加したのは初めてに近かった。みんなにはマリスという悪魔がいることは知ってもらっているがここでちゃんと見るの初めてかもしれない。みんな彼の大きさや容姿に驚いていた。だけどアリスだけは目を輝かせていた。
「かっこいい! おうまさんみたい」
アリスがマリスの手を握ったとき身震いして止めようかとおもったが、マリスは彼女を受け入れ、少し温かな表情を浮かべているように見えた。意外だ、というより本当に人間というものに興味を持っているように接している。彼の行動が変わるたびに私の中にある彼への考えが変わっていく。悪い奴じゃない。でも一緒にはいられない異質な存在。どうしてもうけいれられない存在......。アリスにはそんなことはどうでもよくてただの好奇心の塊のような存在なんだろう。
アリスの介入で少し場がほっこりしたところで話を戻すために私は咳払いをして街へと繰り出すことを提案した。
「私も、自分の街を取り戻したい。エルフたちが参加してくれないとは思うから私とサバト、ターニャの3人でいいかしら」
そういうとキオナと立ち聞きしていたエリエが口をはさむ。
「ボクは別に構わないよ。オッカレ村再建より新天地に移動する戦線だと思えば大したことじゃない」
「私もキオナ様に賛成よ。グレイスは逆に私たちをもっと頼って欲しいわ。井戸が破壊されたのはあなたが悪いからじゃないってことくらい分かってるから。参加しないなんて恩をあだで返す真似はしないわ」
そうなるとアリスは誰に預けた方がいいんだろうか。
「ありすは?」
考えていたところに彼女自身から目を輝かせて訴えかけている。正直、一緒には行かせられない。答えに迷っているとエリエの夫のロンドがアリスの手をつないだ。
「アリスちゃんは僕とお留守番だね」
「ええ~」
アリスはふくれていたが残ることにまんざらでもなく顔を赤く染めてろんどとならいいよと言っていた。いつの間に彼女たちが仲良くなったのかはわからないけど、エルフたちにはたくさん助けられている。だからこそ今回だけは彼らの新天地を見つけるためにも私の故郷を取り戻すためにも歩き出す。
これまでは二人だった。いつのまにか3人、そして今はガラゴを入れると6人まで仲間と呼べる人たちがいる。不思議な心地だ。これまでに生きてきたことに悲観的だった私は仲間を作れるまできた。
誰かのために生きているわけでもない、私だけの生きる道。だからこそ、今とんでもなく死ぬのが怖いと思っている。だからこそ、この魑魅魍魎を踏みしめて変わり果てたソルの町、そしてカマルの町を見つめる。人気もなく、寂し気に凪いでいる海。ガランと抜け出した後のあるギルド、避難所と化した教会や宿屋に出入りする住民。
誰もが地面に目を伏せて祈りをささげていた。誰になにを祈っているのか私にはわからない。
新たな仲間の出会い、そして古き仲間の出会い、それは福音だろうか。
目指すは二つの町を監視する塔




