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31:エルフと魔法使い

地獄へと戻ってきたグレイス。

おつかいついでにエルフの魔法使いに話をすることにした。

地獄の入り口である井戸を抜けると、日が差していてまぶしかった。

村に戻るとエリエさんとアリス、そしてターニャが出迎えてきてくれた。アリスは私に向かって走って抱き着いてくる。


「ぐれいす、おかえり!!」


グレイスという名前にまだ慣れていないのか、少したどたどしい幼な声が私をホッとさせた。


「ただいま! アリス」


彼女の頭をなでているときが一番私にとって優しくなれる場所だ。抱き着くアリスをあやしているとエリエがほがらかな笑みを浮かべながら私たちの無事を祝ってくれた。


「ほんと、帰ってこれてよかったわぁ。ちょっと心配しちゃったわよ。ヘグルナは一応持って帰ってこれたのね。優秀な弟子で私も鼻が高いわ」


少し自慢げに鼻を触ってエリエは青空を見上げた後、何かを思い出したかのように慌ててこちらを向きなおした。


「あっ、そうだ。おつかいついでにその木の実を魔法使いエルフのキオナのところに届けに行ってくれないかしら。私、ちょっと用事があるから案内はアリスちゃんにお願いするね。キオナの場所わかるよね?」


「うん、えりえさんからいっぱいおしえてもらったからわかるよ。ぐれいす、いこう?」


そういうとアリスは私の服を引っ張る。引っ張って私のために貢献しようと一生懸命なアリスをなだめながらサバトとともにその魔法使いの元へと行くことにした。

アリスが指をさしたのは小さな小屋のようだった。アリスは大きな声を出して魔法使いを呼ぶ。


「きおなちゃーん。 ありすだよー」


そういうと小屋の方からぶかぶかの魔法使いがかぶりそうな帽子をかぶった小さな子が現れた。

キオナと呼ばれたエルフは帽子の広いつばをあげて私たちを見つめた。たしか、エルフはスカートっぽいのを履いてるのが男の子でショートパンツをはいてるのが女の子ってややこしいな。この子はスカートだから男の子か。



「アリスちゃん、この人たちは?」


明らかに魔法使いっぽそうな恰好した男の子のエルフは、私たちを指さす。

それに対してアリスは笑みを浮かべて私たちの紹介をする。


「おともだち! えりえさんからのおつかいだよ」


アリスがそういうと、エルフの魔法使いは少し不安そうな顔で私たち二人を見つめた。


「エリエさんのつかいか......。ということは本当にあの地獄の木の実を取ってきたってことかい? こんなに早く? 信じられないな......」


「これで信じてもらえるかしら?」


そういって私はキオナにヘグルナを渡した。


「ほう、これは中々......。これでようやくボクの毒消し薬が完成するよ。ていうか手伝ってほしいんだけどいいかな? 英雄殿」


嫌な言い方だな......。それでも今は少しこの人達がどんな生活をしているのか知りたい。こんな自由な生活があるなら少しでも参考にしたい。


「いいけど、何をすればいいの?」


「じゃあ、ここに水にいれて」


「水瓶は?」


「いやいや、エリエに教えてもらっていたのなら魔法くらい使えるだろう?」


そういうと私の腹を彼の持っていた杖で小突いてきた。ちょっと小生意気な目線にいらだったけど水魔法で魔女が使いそうな黒い丸鍋に注ぎ込んだ。


「なかなか丁寧に魔力を引き出しているね。いい生まれのようだ」


「そう? そういわれるとアルマン家の娘としてはうれしいけど」 


「なるほど、国では基礎魔法最強の魔法使いと呼ばれた家の生まれか。それで魔法の才能が」


才能が私にもあるなんて思わなかった。家での扱いは悪魔の子だったし、力もなかった。逆に、ここのみんなは優しくしてくれた。

だからこそ私は私でいられたんだと思う。少しは強くなれただろうか......。


「才能なんてないと思ってた。でも、ここに来ていっぱい学んだから生まれたものがあると思う。だからこの気持ちも守りたい。この村にも恩返しがしたい」


胸に手を当てて気持ちを噛み締めていると外から叫び声が聞こえ始めた。

一人のエルフが私を探し求めてここまで慌ててやってくる。


「英雄様、大変です! 天使が、村を襲ってきています!!」


幸せなんてものはきっと人生という不幸の中の一瞬の出来事なのかもしれない。どうしても私には天使という厄介な邪魔者が付いてくる。

外に出るとそこは日の無味のようだった。木造の家が点々と焼き尽くされ、エルフたちは逃げ惑い叫びあげる。阿鼻叫喚、それがこの場所にふさわしい言葉と分かっていても受け入れることはできない。猫背な天使はこちらに気づくと無機質な顔を向けた。


「おやおや、反逆者はここにいたのですか。探す手間が省けましたよ。さあ、地獄の門の場所を教えなさい!! まさか、神と同質である天使の言葉聞けぬというのですか!?」


表情は読み取れないがこの天使が怒りを表していることは明らかだった。

だが同時に私自身も怒りが静かに燃えていた。





地獄の門を探すためエルフたちの家を焼き払う天使。

彼は天使なのか、それとも......。

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