30:悪魔と私の悪魔
※丸二日休んで申し訳ないです。
「グレイス、こんなところにいたのか。心配したよ」
ハリがなくてロボットが話しているような抑揚のない声。サバトの顔をした別物ととらえていいの?
彼の腕の力が強くて離れられない。彼の瞳には生気はなく、ただ、ひたすらに虚空が私を見つめていた。
「あなた、誰?」
「いやだな、サバトだよ」
「違う、あなたはサバトじゃない。フェニックスと一緒じゃないもの」
「なるほどね。じゃあボクは誰だろうね?」
そういうと男はサバトの姿で私を引き寄せる。黒く、よどんだ眼差しが私を惹きつける。死を思わせるような黒、そして死霊のようなものがぐるぐると渦のように瞳の中を泳いでいる。彼からあふれる笑みは邪悪さそのもので、どうも受け付けがたい。でも、離れられない。見つめることしかできない。
『こいつ、なんだかわかんねえけどやべえよ! グレイス、おいしっかりしろグレイス!!』
ガラゴの必死になって呼びかける声が聞こえる。思考が鈍ってどうすればいいかわからないや。
でもこのひとどこかで出会った気もする。
『やめろ!!』
私はなんの脈絡もなく吹き飛ばされた。いつの間にか地面に尻もちをついていた。見上げるとそこにはマリスが怒りの感情を持っているかのように激しく影を逆立てていた。
「そっか、キミには悪魔が憑いていたんだっけ。あんた、どうして人間を殺さないの?」
『私は私の思うままに行動している。それだけだ』
マリスは怒りを抑えたような口ぶりで高圧的に語る。いつもの調子にも見えるし、少し焦りのようなものも感じる。
「ふーん、意外とツマラナイね」
サバトの姿から仮面のような無機質な顔へと変貌していった。仮面の男は持っていた槍を長いライフルのようなものに変えて私めがけて銃口が向けられていた。銃を持った仮面の男というとソルエルを撃った人物像にそっくりだ。
「あなた、もしかしてソルエルを!?」
「ソルエル? 誰かはわからないけど天使を殺したことは覚えているなぁ。もしかしてそれのこと? あれみられてたのかぁ。じゃあ殺さないとね」
引金を引く音が聞こえた瞬間、マリスが前に出てきて撃ち出てきた弾丸を口の中で受け止めていた。
『私がこいつを殺すまでは誰も手出しはさせない。死ぬことも許さない。それが私が彼女に課せた契約だ』
「気持ち悪いよ。悪魔のくせに!!」
『お前のおかげで今一つ感情を覚えたよ。それは......怒りだ』
マリスが大きくなった瞬間、私にも彼の怒りが伝わった。自分の獲物を奪われた獣、おもちゃを奪われた子供のような激しい怒り。私もこんな気味の悪いやつに殺されたくない! 殺されるならいっそのこと......。
「あなたにマリスをどうこう言う資格なんてない!」
マリスに同調してしまい、彼をまとって戦おうとしたその瞬間、遠くから炎が放たれた。炎の火種はフェニックスだ。ということはと近くを見渡すと本物のサバトがこちらに気づいて参戦していた。
「サバト! この人がソルエルの敵よ!!」
「こいつが!? とにかく君を援護するよ」
「おねがい!」
そういうとサバトは槍を取り出してフェニックスとともに仮面の男の背後から攻め入る。
仮面の男は雲のように私たちの攻撃をよけていく。
「さすがに大人数になってくると面倒だな。じゃあまたね」
不穏な言葉を残して仮面の男はフワッと去っていった。
面倒なやつが現れたと少し肩を落としつつもまずはサバトの合流を喜んだ。
「逃がしたか...... グレイス、心配したじゃないか! 見つけたと思ったら戦ってるし」
「ごめんね。でも、合流できてよかった。ヘグルナはこっちで手に入れたし帰りましょ」
今回の目標は達成できたので一旦エルフたちの村に戻ることにした。
戻ろうとした時、もう離れないようにとサバトが手を握ってきた。少しびっくりしたけど、久しぶりに人の温かみに触れてうれしい。こういうのが続くのなら生きててもいいのかな。
引き続きよろしくおねがいします。




